リアクション
―Show!― パーティー会場の大きなステージには何かのイベントの為の準備が着々と進められていた。 そして、会場からはいつの間にか、火焔と橙歌の姿が消えていた。 ある程度、人が集まったところで、ステージの幕が開いた。 「お待たせいたしましたですわ! これからドレスアップコンテストを開催致しますわ! 我は司会の狭山 珠樹(さやま・たまき)ですわ!」 メイド服を着た珠樹がマイクを持って現れると、観客から拍手が起こった。 「そして、こっちがもう1人の司会、みのるんこと新田 実(にった・みのる)ですわ!」 珠樹とは反対の方向から出てきたタキシードを着た実にスポットライトが当たる。 「ミーが司会やるからには盛り上がる事間違いなしだぜ!」 「続きまして、今回の審査員を紹介させていただきますわ!」 「名探偵・百日紅火焔と有能な助手・陽炎橙歌!」 ステージ上の横にスポットライトが当たると、そこには審査員席が設けられており、火焔と橙歌が座っていた。 「さあ、ではコンテストの説明をさせて頂きますわ。参加者は自分の次の順番の人のプロフィールとドレスの紹介をしますわ! これについては最初は我がさせて頂きます! そして、本人にはドレスのアピールと大切なものを紹介してもらいますわ! 以上で説明を終わります! では、コンテストスタートですわー!」 珠樹からの説明が終わると、また拍手が起こった。 「では、最初は……咲夜 由宇さん! 今回のパーティーには従業員としてお仕事されてますわ! ドレスではなくメイド服ですが……気にせず、前へどうぞー!」 「わ、私ですか!?」 料理の片付けをしていた由宇に突然、スポットライトが当たって、無理矢理ステージの上にあげられてしまった。 「えっと……その……メイド服は普段から着ているものなんですぅ……た、大切なもの……えっと……えっと……」 いきなり聞かれて、返答に困ってしまったようだ。 「大切なものはそうそう語れなかったりするもんな! それじゃあ、審査員の言葉を聞いてみるぜ! 火焔、どうだ?」 すかさず実がフォローを入れると、由宇はホッと、安心して、また緊張の顔をする。 「かわいらしいメイド服姿だと思います。美味しい紅茶を淹れてもらいたいですね」 「……スケベ……ですの」 「なんでですか!?」 火焔の言葉を何故か橙歌が一刀両断にしてしまった。 「よし、次の人を紹介してくれ!」 「じゃ、じゃあ……美羽さんです。ミニスカの素敵なドレスなんですぅ……ああいうの一度は着てみたいですぅ」 紹介された美羽はノリノリでステージの上に上がった。 「私より目立つ人は許さないから! ドレスのポイントはこの超ミニ! 大切なものは……秘密!」 美羽の自己紹介が終わった。 「それでは、審査を橙歌さん、お願いしますわ」 「……ミニ過ぎて中が見えそうではしたない……ですの。でも……似合っているいるからあり……ですの」 橙歌の評価は辛口だが、美羽は十分嬉しそうだ。 「あれ、信長さんどこに行ったんだろう?」 香奈は料理を食べながら、忍と2人でイベントについて話していたのだが、いつの間にかいなくなっていた信長を探してキョロキョロする。 「本当だ。どこほっつき歩いてるんだろうな……探しに行くか」 「うん」 (本当はこのまま、しーちゃんと2人で……) 香奈の心を知らず、忍は一所懸命に信長を探すが出てこない。 ステージの上から次の人の紹介が始まった。 「次の人の紹介だよね! えっとねぇ……信ちゃん! 黒いロングドレスにスリットが入ってるのって素敵だよね! 私は着たことないけど、いつか挑戦してみたいな!」 信長にスポットライトが当たると探していた忍と香奈が、あまりの驚きで口がふさがらなくなってしまっている。 意気揚々と信長はステージに上がる。 「私を選ぶとは良い判断じゃ! アピールするのは勿論、この深く入ったスリットじゃ! 今の大切なものは……そうじゃのぅ、この忍に買ってもらったドレスかのう」 「なるほど、なるほど! じゃ、判定してもらおうぜ! 火焔、宜しくな!」 この審査を火焔に投げた。 「ごほん……スリットは良いと思います」 ちょっと顔を赤くしながら、火焔が言うと、隣に座っている橙歌から、足を踏まれたが、なんとか、声を出さずに我慢した。 「うんうん、みんな素敵なドレスだな」 玉藻 前(たまもの・まえ)はイベントを見ながら、樹月 刀真(きづき・とうま)と漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)の腕を引っ張っている。 前は振袖に扇子を持ち、刀真はネクタイスーツ、月夜は青を基調としたパーティードレスを着て来ているが、前以外はどうにも乗り気ではないらしい。 「ほんと、素敵なドレスです! パーティーのお料理も美味しいし、イベントも楽しいし……来てよかったです」 若草色の振袖を着たラグナ アイン(らぐな・あいん)が前に同意した。 「振袖姿の姉上も素敵です……どのイベント参加者よりも輝いてます……はふぅ」 藍染の振袖を着て、アインの振袖を褒めたのはラグナ ツヴァイ(らぐな・つう゛ぁい)だ。 「アルマはその留袖似合ってる……」 「ありがとね。月夜ちゃんのドレスも素敵よ?」 月夜は同じ剣の花嫁であるアルマ・アレフ(あるま・あれふ)の黒の留袖を褒めた。 「……うん、ありがとう。留袖……私達剣の花嫁はある意味パートナーのお嫁さんだしね」 「んー、でもあたしはお嫁さんってガラじゃないのよねぇ」 アルマはにやっと笑う。 (やっぱり反応が悪い……こうなったら) 「暑いから脱ぐか」 扇子を仰ぎながら、前は襟を肌蹴させる。 「はぁ!? お前な〜こんな所で着物を脱ぐなよ! お前、下着つけてないんだから、裸になる気か!?」 「暑いんだ仕方なかろう? 我の裸を晒したくないならお前が隠せ」 完全に前は刀真をからかって遊んでいる。 「そこ! ちら見せは良いですけど、モロ出しはダメです! 違反です」 わざわざ注意しに飛んできたのは、セーラー服に秩序の腕章の判官正装したガートルードだ。 「警備員じゃけ、大人しくしとるかいと、船倉に放り込むけんのう」 その後ろにはスリットのきつい白いスーツを着たシルヴェスターが控えている。 まるで、学校の風紀委員のようだ。 「仕方ない、脱がないように気を付けるからそれでいいだろう?」 前が言うと、2人は大人しく引き下がってはくれた。 信用はされてないから、近くでじっとこちらを見つめているのはしょうがない。 ステージの上では信長が次の紹介をしようとしていた。 「紹介は月夜じゃ。綺麗な青が良く似合っておるからな」 信長からバトンタッチされたのは月夜だ。 刀真や前はびっくりしていたが、アイン達は驚きながらも拍手を送り、月夜をステージの上へと送りだした。 「アピールポイントは……胸元の黄色いコサージュ。大切なものは……」 月夜は黙って、刀真と前を見つめる。 そこにはいない誰かを思って、涙が一筋零れてしまった。 「その、なんだ……そこまで深く考えるなよ! なっ?」 「えーっと……さ、審査してもらいましょう! 橙歌さん、お願いします」 泣かれてしまい、困った実と珠樹はさくっと審査にうつらせてもらった。 「誰かの為に泣けるのは……悪い事じゃないと思う……ですの」 「橙歌くん、それはドレスの評価では……」 「黙れ……ですの」 火焔がツッコミを入れたが、黙らされてしまった。 「さ、さあ、次の人を紹介してもらおうか!」 実が促すと月夜は辺りを見回し、誰を指名しようか、考えている。 ーーーーーーーーーーーー 月夜が考えている間、ステージの上ではイリュージョンが行われることとなった。 ステージの上にはエプロンドレスを着て、ちぎのたくらみで子供になっている芦原 郁乃(あはら・いくの)、赤を基調としたドレスを着て羽付きヘッドピースと網タイツに長い手袋をした荀 灌(じゅん・かん)、灌とお揃いだが色は黒を基調としたものを着ているのは蒼天の書 マビノギオン(そうてんのしょ・まびのぎおん)の3人が出て来ており、まずは、灌のジャグリングが披露される。 ボールを10個使い、お手玉のように10個いっぺんに回していく。 披露している間、郁乃はステージ上からじっと観客の方へ視線を送っている。 何かを見つけたのか、うっすらと笑みを浮かべた。 カラフルなボール達が宙に舞、観客から拍手をもらった。 郁乃がマビノギオンにステッキを渡すと、マビノギオンはステッキから花を出し、その花を帽子に変え、その帽子から鳩を出し、観客から感歎の声を引きだした。 今度は郁乃が持つりんごが的になり、灌のナイフ投げが始まった。 左手、右手、最後は頭のりんごにナイフを全て命中させ成功。 最後は人体切断だ。 郁乃が用意した縦に長い木箱にマビノギオンが入ると、すぐに扉を閉める。 これで、脱出は出来ない。 灌は威力を増したソニックブレードとツインスラッシュで木箱を斬りつけていく。 観客からおびえる声が少し聞こえた。 あまりに素早い斬撃なので、箱が落ちたり、崩れたりすることはなく、しかし、斬ったところから真っ赤な血がにじみ出てくる。 最後に箱を3等分し、上2つを取り、一番したの箱を開けると……マビノギオンが無傷で出て来て、拍手喝さい。 実は中では、マビノギオンは急いで魔導書になっていたのだ。 にじみ出る血は血糊。 だが、それがばれる事なく、イリュージョンは成功のうちに幕を閉じた。 「早く! こっちの方にいたのを確認したから」 3人はステージ衣装を脱ぎ、群衆に紛れても目立たない格好をして、ステージから確認した美緒の居場所へと向かっていく。 近くまで行くと、じっと美緒の周りを確認、常に3〜4人は護衛しているのが見える。 トイレに行くのも、誰かが付き添い、料理や飲み物は大佐が持ってくる。 「隙がなさすぎるよ〜」 「今回の怪盗出し抜き作戦は難しいんじゃないですか?」 郁乃に灌が告げると、がくりと肩を落とした。 「次のチャンスがありますよ。また手伝いますから」 マビノギオンが言うと灌もコクコクと頷いた。 「ありがとう〜! そうだね! 今回はちょっとダメだったけど、次こそ!」 決意を固めたのだった。 ーーーーーーーーーーーー イリュージョンが終わった頃。 「あれ? 佑也さんの姿が見当たらないですよ?」 拍手をしていたアインが如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)がいないのを騒ぎだした。 |
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