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【怪盗VS探偵】煌めく船上のマジックナイト

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【怪盗VS探偵】煌めく船上のマジックナイト

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―厨房は戦場―



 厨房では、パーティー会場に出した料理がすぐに無くなるので、どんどん作る為にかなりハードになっている。
 そして、タノベさんの運営ということで、今回の厨房の親方はあの豪華ホテル『タノベホテル空京』の親方が来ていた。


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「こっち、大根と水菜のサラダが上がった」
「持ってくね」
 弥十郎がそう声を上げると黒いスーツを着たウェイトレスのレイス・アデレイド(れいす・あでれいど)が大根と水菜のサラダを台車に載せ会場へと持って行ってくれようとする。
「こっちも鶏ハムロールが出来ましたので、お願いします」
「はーい」
 灰色のスーツの上からエプロンを付けている神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)も声を出し、持って行ってもらう。
 弥十郎と翡翠の額には汗が見える。
 弥十郎が作っている料理は『大根と水菜のサラダ』『ローストビーフ』『マッシュドポテト』『栗金団』『だし巻き卵(えびのすり身いり)』『お造り(クモいわし、イケイケ秋刀魚(オス))』『ぜんざい』『お餅のピザ』とかなりの量を作っている。
 翡翠は翡翠で、丁寧な調理と周りを見ながら、後片付けも率先してやっているので、かなり忙しく動いている。
 弥十郎はローストビーフに、翡翠は次の鶏ハムロールの調理へと取り掛かった。
 鶏胸肉を冷蔵庫から取り出し、塩、胡椒をすり込む。
 人参、牛蒡をコンソメで煮て、肉を開き、似た野菜とお倉を巻いて、縛って煮る。
 この煮ている間に品数の多い弥十郎の洗い物を引き受ける。
「ありがとう」
「いえいえ、忙しいですから効率よく動かないとですよね」
 2人の側に黒地に牡丹の花が咲いている着物の上から割烹着を付けた柊 美鈴(ひいらぎ・みすず)が近寄ってきた。
「マスター、味を見てもらって良いですか?」
 美鈴の手にあるのは黒豆抹茶のわらび餅だ。
 洗い物の手を止め、タオルで手を拭いてから、差し出された味見用の器を手に取り、翡翠は、料理を口に運ぶ。
「良い味に仕上がっていると思います」
「良かったです」
 味見が終わると、丁度レイスが空になった器を台車に載せ、戻ってきた。
「これを運んで下さい」
「了解」
 台車に載せると、今度は違う所から声が掛けられた。
「こっちも持って行ってください! 丁度、揚げたてが完成したところです」
 真名美が作ったのは春巻きの皮でペースト状の肉を巻き、揚げたものだ。
「お前ら、それを運んだら、一回休憩行って来い!」
 親方は暇なく働いていたこの5人にそう告げると、自分の料理へと戻って行った。
 みんなで台車に載せた料理を会場まで運び、セットする。
 台車はレイスが戻して来てくれ、休憩となった。


「あの2人には何を持って行きましょうか」
 美鈴はレイスと翡翠の為に飲み物を取ろうと動き、翡翠は何故か、せっかくの休憩なのにウェイターのような事をしてしまっている。
「これ、運びながら食べてみたいって思ってたんだよな」
 会場に戻ってきたレイスは全部で3人分のローストビーフとだし巻き卵、鶏ハムロールを皿に盛り、壁際に移動する。
 レイスが待っていると、美鈴が飲み物を持ち、翡翠を連れてやってきた。
 まだ働こうとしていた翡翠を無理矢理引っ張ってきたのだ。
「んじゃ、乾杯」
 レイスの言葉で3人は楽しいパーティーを開始した。


 弥十郎は料理をセットしながら、横をふと見ると、紫のバニー衣装に身を包み、アイマスクを被った見覚えのある体型を見て、声を掛けた。
「これからちょっとした余興があるんだけど、やってみない?」
「あら、余興? 楽しそうね!」
 簡単に乗ってきた。
「ちょっと待ってて下さい」
 そう言って、人混みの中に消えると次に現れたときには、誰かを連れて来ていた。
「余興ってなんです?」
 火焔を連れてきたのだ。
 どうやら、橙歌は付いてきていないらしい。
「はい、この揚げものの端っこを食べて」
 火焔の口に棒状の揚げものを突っ込む。
「で、あなたもこっちの端を」
「ああ、日本でこんなゲームがあるみたいよね。たしか、合コンとかでよくあるとか」
「それです」
 仮面の美女は端を食べようとしたのだが、火焔がやろうとしている事に気が付き、さくっと揚げものを食べて、逃げてしまった。
 その様子を見て、弥十郎のみならず、女性も残念そうな顔をしたのだった。