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「そこまでですぅ!」
 エリザベートの声が響いた。

「ただちにその猫達を解放するのですぅ!」
「おや、エリザベート様、空京に来ているという話は本当でしたか」
 怒りの表情を浮かべているエリザベートとは対称的に、綾乃は落ち着き払っていた。
「聞こえませんでしたかぁ? イルミンスール校長、エリザベート・ワルプルギスの名において命じているのですぅ!」
「それで?」
 だが綾乃は表情一つ変えずにそう問い返す。
「だからぁ、この私が命じているのですぅ! おとなしく猫を解放するのですぅ!」
「却下」
「な……」
「これは、公務ですから、動物達の解放を求めるならば、しかるべき手続きを踏んだ上でお願いします」
 あくまで淡々と告げる綾乃。
「それと……」
 その瞬間、綾乃の姿が掻き消える。

「ここは空京であって、イルミンスールではありませんので……」
 そう言いながら一気に間合いを詰める、狙いはクロだ。
「エリザベート様の言うことをいちいち聞く義理もないのです、悪しからず」

 ――ぱちん。

 納刀音だけが響いた、彼女が抜刀した瞬間を見た者は、果たして一人でも居ただろうか……
「がはぁっ!」
 血を吹き出して、クロが倒れる。

「透乃、ここは私一人で十分です、行ってください」
「えぇー」
 不満の声を上げる透乃。
 しかしそれは獲物を全部綾乃に取られるということへの不満だ。
「これはお仕事なのですよ、税金泥棒にならないように、ちゃんと働いてください」
「はーい」

「行かせてはならないのですぅ! 止めるのですぅ!」
 車を出されてしまっては追いつくのは難しい。
 発車する前に止めるべく車に向かう生徒達だったが、綾乃の攻撃を受け、次々に吹き飛ばされていった。

「聞こえませんでしたか? 私一人で充分、そう言ったつもりですよ?」
 不敵な笑みを浮かべ、綾乃が立ちふさがる。
 どうやら彼女を倒さないことには一歩も進めないようだ。

「何もそんな強引にやらなくたっていいじゃないかよ……」
 アストレイア・ロストチャイルド(あすとれいあ・ろすとちゃいるど)を魔鎧化して身に纏う紫音。
『気をつけよ主! こやつ、かなりの手練じゃ!』
「わかってる!」
 相手の力量は見ていればわかる、自分と同程度か……それ以上……
 最初から全力でいくしかない。

「強引だろうが何だろうが、無責任な飼い主がなくならない以上、これは志方ない事なんです」
「だからってすぐ殺すってのは間違ってる!」
 2人の刀がぶつかり合った。


「一人くらいはこっちに漏らしてくれてもいーよー」
 余裕たっぷりの透乃が車上で手を振りながら叫ぶ。
「少しはまじめに働いてください」
「だってつまらないんだもん、あーあ、ワイバーンとか来ないかなー」
 そんな透乃の願いは、すぐに叶えられた。

「透乃ちゃん、前、前!」
「んー?」
 陽子の声に透乃が振り返ったその瞬間……視界が急に暗くなった。
「あれ? おかしいな……」
 いぶかしがる透乃に陽子が上を指し示す。
「? うえ?」
 徐々に視線をあげて見上げる透乃のその頭上で、巨体が羽ばたいていた。
 その巨体の主と透乃の目が合った……
「あー、こ、こんにちわー」
 とりあえずソレに挨拶をしてみる透乃。
 すると、驚くべきことに、ソレも透乃に挨拶を返した。

 「イタダキマス」と……

「へ? イタダキマ……」
 その直後、ワイバーンの尾による一撃が保健所の車をなぎ払った。