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【怪盗VS探偵】昼に瞬く2つの月

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【怪盗VS探偵】昼に瞬く2つの月

リアクション


ーやるか、やられるかー



 更衣室の中で響渡った悲鳴(?)は何人かは聞き覚えのある声だった。
「いっや〜ん!」
 鉄のフラワシ【ナインライブス】によって、黒い紐パンの紐が解かれたのだ!
 落ちるパンツ!
 引っ張られる着付けたばかりの着物の帯!
 見られる快感!
 なんとのぞき穴はちょうど、パンツが今まであった場所の高さにあり、もろにのぞかれていた。
 壁は廊下側ではなく隣の部屋へと続く壁だ。
「予告のものを盗みに来たんだけれど……変装を見破るだなんてやるわね!」
 パンツの紐を結び直しながら、そう大声で言ったのは紫水 蝶子(しすい・ちょうこ)だ。
 蝶子をがっつり見る事が出来たのは……のぞき部部長弥涼 総司(いすず・そうじ)だ。
 さすが部長というべきだろう。
 壁の向こうでは、にやにやとしている総司の姿があった。
「予告!? という事は、あなたものぞき部の仲間ですね〜!!」
「怪盗パープルバタフライよ! ちゃんと予告出してルンルンさんの尻尾の毛を――」
「怪盗? しらばっくれても無駄ですよ!! のぞき部撲滅部、パンダ隊副隊長であるファイの目はごまかせないのです〜!! のぞき部、成敗です〜!!」
 蝶子の言葉になど耳を貸さずにファイリアはウィッグを取ると蝶子に襲いかかる。
(……怪盗来ちゃってたか〜。ま、このままの勢いで捕まえるのもアリかな)
 ウィノナはのぞき部ではない事に気がついているようだが、ファイリアを止める気はない。
「とにかく……そこの穴から覗いてるやつを退治だね」
 ウィノナはファイアストームを唱えると壁にぶち当て、壊してしまった。
 にやにや中の総司の姿が現れた。
「事件は部活でおきてるんじゃない! 更衣室でおきている!!」
 その爆音を聞きつけ、薫が扉を開け更衣室に入ってきた。
 更衣室内を見渡せば、下着姿の者、まだ帯が結び終わっていない蝶子などなどが目に入ってくる。
「…………綺麗なものほど、見たくなるものでござる。にんにん」
「きゃ〜〜〜っ!! 堂々とした覗きですーーー! ベアーっ!」
 ソアは下には水着を着ているが関係ないらしい。
 薫に対して、ソアはのぞき部とみなしたようだ。
「ご主人! 任せろ!」
 前をソア、後をベアに挟まれる。
「くっ! 退路がないでござる……って! 違うでござるよ! 叫び声が聞こえたから怪盗かと――」
「問答無用! あつい部所属……『熱きスク水の魔術師』ソア・ウェンボリスと、そのパートナー雪国ベア、参上だぜッ!!」
「いや、『熱きハートの魔術師』ですってば!」
「スク水の方が良いって、ご主人! って、逃げようとすんな! 久しぶりの……ベアクロー!!」
 ベアは爪を出し、薫をぶん殴った。
「ぐはっ……!!」
(まだ……怪盗パープルバタフライのを……しっかり見てないでござる……)
 薫は残念ながら、ここで意識を手放した。
「任務完了だな、ご主人!」
「そうですね!」
 ところで総司の方はと言えば――
「さーて、ひとしきり堪能したし、怪盗の捕縛を……」
「それで済まされると思っているのかーーっ!」
「ぐはぁっ!!!」
 総司が縄を取り出して、蝶子へ近付こうとした瞬間、後ろからバーストダッシュで轢かれた!
「蝶子お姉さまーー!?」
 ついでに蝶子も轢かれたようで、リースが倒れた蝶子に駆け寄った。
「あつい部部長……やるな……!」
 そう轢いたのは今しがた到着した牙竜だった。
 総司は立ち上がり、牙竜を見て嬉しそうにする。
「ふふふ……隙ありです!」
「なっ!」
 対峙していた牙竜のズボンとパンツはずり降ろされた!
 音もなく背後に忍び寄っていたのはつかさだ。
「ふんふん……それが牙竜様のナニですか……もっと期待していただけに残念です」
「なん…………だと…………っ!?」
 つかさの言葉に非常にショックを受けているようだ。
「俺はおっぱいに興味があるわけで…………ああー……確かに、もっと期待していたな」
「……!」
 総司の一言が止めを刺してしまった。
 それよりも早くしまえばいいというのに、ショックのあまり、パンツを上げるのを忘れている。
「ははは……はーっはっはっは! 侮辱されたコイツの分まで【正義の鉄槌】を叩きこんでやるっ! ファイファー!」
 ブチ切れたのか、ズボンも上げずに総司を指差し、決めポーズをとった。
 そして、そのまま永遠のライバル総司と牙竜の対決は始まってしまった。
(ふふ……このチャンスを逃すわけにはいかないわよね)
 他のパンダ隊やあつい部のメンバーも総司と牙竜に入って行き、大混戦となっていく中、呆然と事の成り行きを見ているばかりのルンルンの背後に近付く影があった。
「予告通り……尻尾の毛は……って、いったぁ〜い!」
 ルンルンの尻尾に手を伸ばした蝶子だったが、ルンルンの側に待機していた何かに手をかまれてしまい、思わず手をひっこめた。
 よく見ると、ルンルンの側に紙ドラゴンが待機していたのだ。
「あたしにやられて……平和のために役立ちな!」
 メイコは雷を拳に纏わせ、蝶子へとパンチを繰り出す。
「危ないじゃない」
 それを蝶子はひらりと後方へ飛んでかわした。
「ちっ!」
 メイコはルンルンの側に待機し、蝶子を近付けまいとする。
「魔法学校で盗みを働こうとは、良い度胸だ。このまま手ぶらで帰らせるのもなんだ、折角だからファイアストームの一つも味わって行き給え。焼き加減はミディアムかミディアムレア以外は受け付けん」
 そこへ、紙ドラゴンを待機させといた張本人アルツールもやってきた。
 すでにファイアーストームの詠唱に入っている。
「そんなの味わいたくないに決まってるじゃない」
「3、2、1、はい、時間切れだ。と言うことでミディアムと言うことでよろしく。返事は聞いていない」
「ちょ! 理不尽過ぎるわよ!」
 ファイアーストームが蝶子の体を包み込む。
「蝶子お姉さまー!」
 リースが慌てて、駆け寄るが、熱くて近寄れない。
 この隙にメイコはルンルンへと向き直り、何かを懐から取り出し、尻尾へと巻いて行く。
「何するの?」
「出来たっと! これで毛が盗まれる事はないだろう?」
 メイコの施したものは尻尾を普段自分が使っているテーピングでぐるぐる巻きにしてしまうというものだ。
「ええ〜っと、それって……」
「とる時、痛いんじゃないかな?」
 由宇の言葉を香奈が引き継いだ。
「いつの間にいたんですか!?」
「さっき、一緒に入ってきたんだが……気付かなかったか?」
 由宇が驚くと忍はアルツールを指差しながら、不思議そうに答えた。
「まったく気付きませんでした!」
 忍と香奈は2人して苦笑いをする。
 未だ炎が蝶子を包んでいる、その背後ではのぞき部とあつい部とパンダ隊の激戦が繰り広げられている。
 ファイリアとウィノナがつかさを挟み打ちにし、美羽がバーストダッシュで顔面にドロップキック!
 美羽に連れられ、橙歌ものぞき部の戦いに巻き込まれてしまっている為、一緒にドロップキックを繰り出している。
 蝶子の方はチラチラと見ているが、美羽の勢いに押されてしまっているのと、ショックを受けているようだ。
 その2人同時のドロップキックをつかさは辛くも避ける。
「なんつーもんを助手ちゃんに見せてくれてるのよー! ショック受けてるじゃない!」
 美羽の言うとおり、橙歌は怪盗を捕まえるという目的よりも、美羽と同じ行動をする事で先ほど見てしまった牙竜のナニを考えないように思考をストップさせているみたいだ。
「橙歌ハ、ダイジョウブ……デスノ」
 片言になってしまっている。
 本当に大丈夫なのか甚だ疑問だ。
「早くしまってください!」
 蝶子の方へと気を配っていた朔が牙竜に叫ぶ。
「はっ!!! 忘れてたーーーー! 俺の……俺の……俺のアームストロング砲がぁぁぁぁっ!!!」
(そんなに立派なモノか?)
 牙竜の叫びを聞いた人達は同じ事が考えた。
 慌てて、牙竜はパンツとズボンを上げる。
 ここでやっと蝶子の炎が消えた。
「蝶子お姉さま〜! って、そのお姿は……!!」
 リースは急いで駆け寄り、抱きつこうとしたが、蝶子のあられもない姿に固まってしまった。
「あら……いやん♪」
 蝶子の着物は綺麗に焼け、髪も少し焼けてしまっている……丁度、紐パンだけが残る形となっていた。
 蝶子はそれに気が付くと、左腕を胸に当て、大事なところだけを隠す。
「お姉さま! これを!!」
「ありがとう、リースさん」
「いえ! お役に立てて本望です!」
 リースは蝶子に下に転がっていた薫の上着を引っぺがし渡した。
 それを受け取ると、素早く羽織り、戦闘態勢に入る。
「乙女の心高ぶる時……」
 突如、背後から声が聞こえてきた。
 後ではエミリアが両手で円を描くように動いていた。
「あ、現われたる正義の女神!」
 その更に後ろでは繭が伸びをするような姿勢を取る。
「マジカルエミリー!」
「み、ミラクルコクーン!」
 2人は名乗りを上げると同時に制服を脱ぎ捨て、水着(エミリアはへそ出し、繭はスク水)にマント、仮面の格好になった。
「不幸を笑う悪い子は!」
「えっと……そのしあわせをぶちこわす?」
 2人はシンメトリーになるようにポーズを決めた。
「ルンルンちゃんは私達が盗んじゃうわよ!」
 エミリアと繭は同時にルンルンへと手を伸ばすが、見えない刃に切りつけられた。
「ダメですよ!」
 エミリアと繭の前に立ちはだかったのは朔だった。
「この可愛いものへの愛と情熱のダークヒーロー月光蝶仮面がルンルンさんには指一本触れさせません! ファイファー!!」
 思いっきり、戦闘モードに入ったところで、突然誰かが朔のズボンを下ろした。
「なっ!!」
 パンツはかろうじて、落ちなかったが、必死にズボンを上に上げる。
 なんと、そこに居たのは……司だ。
 司はさらに美羽とベアトリーチェの側に行くと、スカートを一気にめくった。
 思わぬところからの攻撃で一同、呆然とする。
「きゃぁっ!」
 司の行動はそれでも止まらず、香奈のスカートをめくり――
「ふざけんじゃねぇぞ……!」
 忍の闘士に火を付け――
「な、なにするんですかー!?」
 ソアの水着を脱がそうとし――
「ご主人になんてことをしてやがる!」
 ベアの目に炎を宿し――
「きゃ〜〜! 新たなのぞき部ですね! 成敗です〜!!」
 ファイリアのスカートをめくり――
「……その行為自体を恥ずかしく思わないの?」
 ウィノナに一瞥され――
「けけけ……」
 そう言うと、司は外へと飛び出して行った。
「待ちなさい! ――!?」
 朔達が素早く追いかけようとすると、毒蛇ヨルムンガルドが突如目の前に現れ、一時動きが止まる。
「邪魔ですー!」
 一同が固まる中、前へと出てきたのはファイリアだ。
 ヨルムンガルドの頭を手で押さえるとぶん回し、気絶させ、出入り口とは反対方向へと投げてしまった。
「これで追いかけられます! のぞき部は何があっても許さないです!」
 ファイリアはもうだいぶ離れた場所で走っている司を追いかけ、走り出した。
 その後ろを他の人達も走って追いかけて行った。
「そこ……逃がさないんだから♪」
 この隙にのぞき部部長の総司とつかさが逃げようとしたのを、縄で縛った者がいた。
 姿を消して待機していた理沙だ。
 理沙は総司を、チェルシーはつかさをとっ捕まえている。
「新たなのぞき部と一緒にお仕置きですわね☆」
 縄で引きずりながら、皆が向かった先へと歩いて行ったのだった。