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春一番!

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春一番!
春一番! 春一番!

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イタズラするならお菓子をおくれ

 メクリパワーの噂を聞きつけたリョージュ・ムテン(りょーじゅ・むてん)はメクリのところへ、パートナーの白石 忍(しろいし・しのぶ)を引っ張ってきた。

「すばらしい。堂々とスカートがめくれるぜ! 二人分メクリパワーゲットだぜ! 
 おい忍、協力しろよ ……って、逃げ足速いな。いねえし」

忍は事情を知るや、リョージュから離れた建物の陰に潜んだのであった。

「どうしてこんなことに。
 リョージュ君が『スカートはいて来い。タイツ禁止な!かわいいパンツはいてこいよ』なんて。
 ……でも、私のパンツなんて見たい人いるのかしら……」

一人悶々と悩む忍をよそに、リョージュはのんきなものだった。

「ちょっとした悪戯じゃねーか、な。見えちまうもんは花が咲いてるから花見する、それと一緒だろうが」

「あんたもそう思うか? いろいろうるさすぎるんだよな」

メクリがボソッと言った。

 一方、空京のガーデン・カフェでお茶を飲んでいた面々は、通りかかったシズルとおサエからの話を聞いた。

ネル・マイヤーズ(ねる・まいやーず)はパートナーの斎藤 邦彦(さいとう・くにひこ)とお茶を飲みながら言った。

「まー、男の精霊と言っても、子供のスカートめくり位だったらそこまで目くじら立てるつもりは無い。
 問題なのはそれに同調したいい歳した連中だ。
 その歳でスカートめくりは間違いなく犯罪だぞ。女として事情を聞いた以上見逃せない。
 邦彦は先に帰ってて……、」

「いや、ネルにはいつも世話になってるからな。
 仕事じゃないが相棒としては動かざるをえない。気にするな」

「……手伝ってくれるのか? 悪いね」

邦彦はふんふん、とうなずいた。

(ちぃっとばかし買い物で外に出たらこの騒動だよ。
 休日の朝っぱらから走り回ることになるとは……。
 はぁ寒っ。早く終わらせて家でゴロゴロして本読んだりしてぇわ。っていうかしよう)

「んー? どした?」

シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)が声をかけた。ネルが答える。

「なんだか、春風の精霊の子が、スカート捲りをしてるんだそうで」

「なんてバカバカしい……まー、構って欲しいんだろうな。
 ガキの世話するつもりで遊んでやっか」

シリウスのパートナー、リーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)はそれを聞いて、キッとまなじりを吊り上げた。

「な、な、な ……なんてハレンチな!」

「……って、おい相棒。何ムキになってんだ」

「お姉さまにハレンチな行動をするような人は許しません!!!
 お姉さまはわたくしが守ります! 誰にも手出しはさせませんわ!!」

リーブラの目はきりきりと釣りあがり、目つきが危なくなっている。

(……ほっとくとリーブラが刃物持ち出す……絶対。……ついてないとまずいなこりゃ)

シリウスはため息をついて、やれやれと首を振ったのであった。4人にパワーを分けると、おサエとシズルは立ち去った。

 その少しあと、カフェにやってきた芦原 郁乃(あはら・いくの)は、噂を聞いて、おびえる荀 灌(じゅん・かん)に言っていた。

「まぁ、何があったとしても荀灌には手は出させないよ。
いざっていう時はわたしが身代わりになってでも守ってあげるんだからね」

「スカートめくりなんて絶対いやですぅ」

荀灌が首をすくめた。二人を眺めていたヴィクトリア朝 メイド服コスプレ(びくとりあちょう・めいどふくこすぷれ)が、郁乃に言った。

「春風の悪戯で郁乃のスカートの中を只でさらすわけにはいかナイヨ。
 魔鎧としてユーを守るネ」

「……うん、お願いね」

魔鎧化して郁乃に装着されたヴィクトリアは、一人悦に入っていた。実は郁乃らに合流する前にメクリパワーをゲットしていたのである。

(今日は郁乃の鉄壁ガードたる娘もいないし、ばっちり郁乃の萌えを演出するネ?
 春風の悪戯に乗じてスカートをめくるというわけヨ。ついでに荀灌のスカートもめくらせてネ)

そばにいたミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)が言った。

「男の子ってそういうの好きだよね?
 フツーのメイド服ってロングスカートだからあんまりめくれないんだけど、
 あたしのは動きやすいように軽い布を使ってるの。だからいつも下にはスパッツを履いてるんだけどね」

そこへメクリと共にリョージュが現れ、おもむろにパワーを解き放った。

「おーお、華がいっぱいだぜ」

メクリも同時に力を解き放つ。ガーデンカフェのあるあたり一帯に、強い風が巻き起こり、パラソルやサンシェードがバタバタと音を立てる。

「ヴィクトリア、後ろから風が来るよ。備えてッ!!」

(こ、これは、チャンスネ!!!)

ヴィクトリアが便乗してメクリパワーを放つ。

「郁乃、前からモ来るヨ!」

「あっ!前はフェイント!!」

「郁乃、ごめん間に合わないっ!」

足の間を風が通る感触とともに、郁乃のスカートがめくれ上がった。

「きゃああああ!!」

慌ててスカートを押さえる郁乃。リョージュが叫ぶ。

「ナイス、ピンク!」

声のほうをキッと睨むと同時に、荀灌の悲鳴が上がった。

「ひゃぁぁぁぁ〜っ!!」

スカートと周りの反応に気をとられて荀灌を守るの忘れていたのであった。荀灌はカフェのイスにすとんと座り込むと、真っ赤になった。

(周りの人に見られちゃったよぉ……恥ずかしいですぅ…あぅぅ)

ヴィクトリアは内心ガッツポーズを取っていた。

(郁乃のピンク色も荀灌の水色の水玉も可愛かったネ)

「あー、ほら、あれだ、気にすんな、な?」

シリウスがポンポンと荀灌の頭を優しく叩く。そういっている彼女のミニの魔法少女コスチュームは見事に捲れ、淡いピンクの下着が風に見え隠れしている。

「ゆ…… 許しませんことよ……」

リーブラがゆらりと立ち上がる。シリウスがあわてて制止の言葉をかける。

「お、おい、ちょっと待て」

「よ、よせリーブラ!!」

「……いっそ、二度と不貞を働けない体に ……えぇ、これはいい機会ですわ
 ……うふ、うふふふふふ……」

リーブラの耳にはもう何も入らない。そのまますらりと偽星剣を抜き放った。目が完全にイってしまっている。

「南無三。 ……許せリーブラ!」

このままではキケンと見て取ったシリウスが、リーブラにサンダーブラストを見舞い、リーブラは失神してイスにどさりと倒れた。

「……ふー。危なかった……」

一方、リョージュのすぐそばにいたミルディアのスカートもまた舞い上がっていた。

「ざんねんでした〜! 中身はスパッツぅ…… 」

ミルディアが言いかけたが、スパッツをばっちり履き忘れてきていたのを思い出した。スカートを両手で押さえて叫ぶ。

「え? ……あ!!
 やめて〜! 見るな〜! ぐーで殴るぞ〜!」

即座にネルと邦彦がおサエパワーを使うが、メクリの力もあり押さえ切れない。ものかげからこっそりと忍もおサエパワーを使うが、ネルのスカートはどうにかおさえられたものの、ミルディアのスカートはあえなく捲れ上がった。

「はうううう……」

ミルディアを見て、邦彦が声をかける。

「大丈夫か? んー、とりあえず汚いコートで悪いがこれでも羽織って。な」

半べそのミルディアを見てあわててリョージュが風を止めた。、メクリは肩をすくめると、どこかへ飛び去ってしまった。

「あ……いや。そこまで嫌なものだとは ……その。なんだ。
 俺は変態とか、ましてやいじめとかそういうんじゃねえよ」

「いやああああ!!」

困った表情のリョージュが、

「……みんな好きなものおごるから、水に流そうぜ? な?」

街路樹の陰に潜んでいた忍がひょいと姿を現し、言った。

「みんなに好きな物、なんでも、リョージュ君のおごりね?」

赤くなって固まっているミルディアと荀灌、気絶中のリーブラ以外の全員が、リョージュをじーっと見つめ、ニヤリと笑う。

「……ハイ」

穏やかな暖気に包まれたカフェとは裏腹に、かくしてリョージュの財布には冷たい北風が吹く羽目となったのだった。