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長雨の町を救え!

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長雨の町を救え!

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第5章

「はあああっ!」
 伏見 明子は……まだ、戦っていた。
 目に着いたゴーレムに、正々堂々一騎打ち。時間をかけての打ち合いだ。そしてついに、ゴーレムの一瞬の隙を突き、背中へ回り込んだ。
「これでっ!」
 槍を思い切り背中に突き立てる。がくん! とゴーレムが体を震わせたかと思うと、魔力の脈動が止まり、崩れ落ちた。
「今のは良い動きだったわね。戦いながら成長するとは……」
「一応言っておくけど、成長したわけじゃねェと思うぞ」
 と、セーラー服……もとい、レヴィ・アガリアレプトが言う。
「でも、体が軽くなる感覚が確かに……あれ?」
 自分の体を確かめるように、明子が下を見下ろす。そしてふと、上を見上げた。
「……雨、やんでない?」


 やがて……。
 招雨の宝珠によって乱された気圧はゆっくりと元に戻り、この町では滅多に見られなかった青空が見える。午後の日差しが、町中にある水をきらきらと照らしている。
 スウェル・アルトは、遺跡に潜った全員の無事を確かめ、避難所へと戻ってきた。
「やれやれ。なんとか……なったみたいだね」
 清泉 北都が、彼女を出迎えた。
「雨は……好き?」
 スウェルが問いかける。北都はきょとんとしてから、
「いや……どうだろ。どちらかというと、晴れてる方が好きかな」
 頭に手をやって答える北都。
「私は、雨が好き。いつか、きっと、やむから」
 そう言って、スウェルは空を見上げた。つられて、北都が空に目を向ける。
「あっ」
 思わず、声が漏れた。
 日差しがが降り注ぐ空。逃げ出すように分厚い雲が消え去った青い空に、きらきらと浮かぶものがあった。
「虹だ……」


「さ、どんどん行くよ!」
 ざぶん! と水の中に飛び込むのは、騎沙良 詩穂。町はいまだ、水が完全に引いていない状況だ。しかし、ぼやぼやしていては、誰かにとって大事なものが流されてしまうかも知れないのだ。
 だから、彼女は自ら水の中に向かい、町の人々の大事なものを回収することにしたのだ。
 婚約指輪。子供が作った玩具。アルバム。思い出の数々をすくい上げ、持ち主のもとまで返すのだ。
「どうやら、水はどこかに抜けるようになってるみたいだけど……」
 町のそこかしこで見かける排水溝。詰まってしまっているものもあったが、ある程度は役割を果たしてくれているようだ。
「完全に水がなくなるには、もう少し、かかりそうね」
 そしてまた、水の中へ戻る。日差しが水を温めてくれているから、辛くはなかった。


「しかし、なんだな。今度はここが干ばつや日照りに苦しんだりしないかが、俺としてはちょっぴり心配なんだが」
 エース・ラグランツが、避難所で対応に追われる町長に言った。
「そればっかりは、やってみないと分かりませんが……」
 分からないことが多い町長だ。
「むしろ、今まで他の地方から水を奪っていたのではと心配です。ああ、それにもしかしたら、サルヴィン川が減水するかもしれません。そうしたら、私の責任問題になるのでしょうか」
「あなたに文句を言う人は居ませんよ。こうでもしなければ、町が滅ぶしかなかったでしょうから」
 鷹村 真一郎が町長をいたわるように言う。町長は大きく胸をなで下ろした。
「いや、いや、皆さんが戦って、動いてくれたおかげです。全町民を代表して、お礼を言わせてください」
「別に、俺は契約者の代表じゃないから、そう言われても困るよ」
 エースが軽く肩をすくめる。
「ゴーレムはどうするんでしょうか。彼らの魔力の媒介になっていた女王器が壊れてしまったわけですが……」
「もしかしたら、修理したり、魔力を新たに注ぎ込めばまた動かせるかも知れませんね。そうしたら、作業用や研究用にどこかの学校が買い取ってくれるでしょうか?」
 真一郎の疑問に、町長がぽんと手を打った。案外、たくましい性分のようだ。
 まあ、大丈夫そうかな、とエースは笑っていた。


「興味深い」
 ノートパソコンに研究の結果をまとめながら、和泉 猛が言った。
「古王国の隠された歴史がついに牙を剥いた、ということかな」
 ルカルカ・ルーも同様。教導団への報告書を書きながら呟く。
「そんなに詩的に表現することはないだろう。単に、女王器の限界と事故が重なっただけだ」
「けど、アンニュイにもなるよ」
 ルカルカが、大きくため息を吐いた。
「あの町の地下に、隠された水路があって……そこに魔獣を封印し続けるために、雨を降らせ続けてたんでしょ? それじゃあ、まだ終わってないじゃない」
「落ち着き次第、今度は水路を調べなければならないだろうな」
 猛は、表情を変えずに続ける。
「俺としては、それもまた、興味深いところだ」

担当マスターより

▼担当マスター

丹野佑

▼マスターコメント

 本シナリオのリアクション執筆を担当させて頂きました、丹野佑と申します。
 シナリオに参加していただき、あるいはリアクションを読んで頂き、まことにありがとうございます。

 まずはお詫びを。私事がいろいろと重なり、締め切りを延ばしてしまうことになりました。楽しみにしていただいていたプレイヤーの皆様には、ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした。
 さらに言えば、皆様のアクションを処理するのが楽しくて、かなり分量が増えてしまったことも関係していると思います。

 最近の状況と、季節を踏まえて作成したシナリオでしたが、いかがだったでしょうか。
 書いているうちに、洪水というモチーフがかなりシャレにならない事件が起こり、戦々恐々としたものですが、決して茶化したりする目的ではなく、自分なりの応援をこめて、書かせて頂いたつもりです。

 不慣れな冒険シナリオでしたが、皆様のアクションのおかげで、魅力的な探検や戦いが描けたと思っています。
 新入生のアッシュは、今回のガイドを書いているうちに、先に罠にかかって教えてくれる人という便利なポジションを確立してくれました。非常に使いやすいキャラクターで、アクションをかけてくださったおかげもあり、本編でも活躍してもらいました。

 また、活躍を踏まえ、何人かの皆様に称号を贈らせて頂きました。

 最後になりましたが、重ねて、ご参加頂いた皆様、ありがとうございました。
 このシナリオとつながりのあるシナリオを、こっそり予定しています。機会があれば、またマスターを務めさせて頂ければと思います。