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図書館ボランティア

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「たまにはゆっくり読書でもするか」と樹月 刀真(きづき・とうま)に誘われて来た封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)
 樹月 刀真(きづき・とうま)が顔を上げると封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)が視界に入る。どんな本かは分からないが、楽しそうに本に夢中になっているようだ。

 ── 封印の巫女として影龍を封じ続けていた彼女の世界が広がれば良いだろうな 月夜と共に彼女を護っていければ ──

 月夜から教えてもらった恋愛小説を読んでいた白花。‘恋’の文字に目を留めて、視線を上げると偶然、刀真と顔が合った。あわてて本に目を戻すものの、顔が赤らんでいるのが鏡を見なくとも分かる。
 もう一度さり気なく顔を上げると、刀真の視線が不思議そうなものに変わっていた。
『何でもありませんよ!』
 そう大声で叫びたい衝動に白花はかられた。
 刀真は本を戻すついでに月夜が運ぼうとしていた本を手伝う。夢中になっていたようで、かなりの数と重さだ。
「月夜、夢中になるの良いが、次の本を読むのは前の本を片付けてな」
「……むっ、夢中になってたから仕方ないの!」と強情をはったが、刀真の優しい笑顔で恥ずかしくなる。
「ありがとう、お礼に今日のご飯は私が作ってあげる!」
 月夜なりのお礼を言って駆け出した。



 柊 真司(ひいらぎ・しんじ)は司書の一人に、アレーティアがまとめた報告書を手渡した。報告書を読んだ司書は「上に回しておこう」と沈痛な面持ちで返事をする。
「ボランティア以上のことをさせてしまったようだね。お礼にもならないかもしれんが、良かったら持っていってくれ」
 手渡されたのは師王 アスカ(しおう・あすか)の作品集。急きょ開かれた個展で売り出されたものだった。
「どうも」
 絵にはさほど興味のない真司だったが、ヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)が喜ぶかもと受け取った。
「アレーティアとアニマにも何か土産でも買っていくか」



『魔導書の歴史 入門 解説付き』を手にした初老の司書は、嬉しそうな表情を隠さなかった。
「意外に早かったね」
「まとめただけだからな。それほど時間はかからない」
「名前は……入れなかったんだ」
 司書が表紙と奥付を確かめる。イーオン・アルカヌムの文字はどこにもなく、“特別編集”とだけ書かれていた。
「不要、誰かの役に立てばそれでいい」
「他の本も出ると聞いてるよ。ぜひ図書館に置かせてもらうからね」
 イーオンとセルウィーは部屋を後にする。
「孤児院の校長に続いて本の出版か。最近は余計なことばかり背負い込んでるな。もっともこれが少しでも門扉を広げるのに繋がればいいか。セル、次の本を選んでおいてくれ」
「イエス、……マイロード」
 セルウィーはイーオンの発言に、先日よりも大きな心の高ぶりを感じた。



 急きょ開催された師王 アスカ(しおう・あすか)の個展は、その準備期間の短さにもかかわらず、集中させたボランティアのマンパワーもあって盛況だった。

 ── 意外なことになっちゃいましたぁ 嬉しいんですけど、ボランティアの人達には、ホントに申し訳ないですぅ ──

 肩身を狭くしながら椅子にチョコンと座るアスカの側で、獣 ニサト(けもの・にさと)が大声で呼びかけていた。
「はーい! 大注目の美人画家、師王アスカのサイン会はこっちでーす! 各種グッズも取り揃えておりまーす!」
 サイン会に加え、関連グッズの販売コーナーなどは、ニサトのアイデアで開催された。
「あの……美人と言われるのはちょっと……」とアスカは抵抗したものの、ニサトの「良いじゃん、良いじゃん。ほら胸を張って、ニッコリ笑って」と強引さに負けた。
 そしていつの間に用意されたのか、アスカを写した写真集や、絵を加工したしおりに絵葉書なども用意されている。
「ほら、グッズとかも売り出したら良いんじゃないか? 欲しがる人がいると思うぜ」
 アスカは「まっさかぁ」と思ったけれども、ニサトの言葉通り、結構な人が集まった。
「はい、コーヒー豆っすね。毎度ありー」
 なぜか片隅でコーヒー豆も売られているが、苦情が出るわけでもなかったので、ニサトのするがままにさせてあった。

 ── パラミタ一の画家になれるかなぁ よぉし、知名度上げる為に新作、新作〜♪ ──

 集まった人を見ると、アスカは更なる創作意欲が湧き上がるのを実感した。



 元々医学書を探しに来たラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)は、医心方 房内(いしんぼう・ぼうない)を見て大喜びする。
「こんなところでこいつに会えるとは! 来たかいがあったってもんだ!」
「わらわをこいつ呼ばわりするのは失礼であろう。そなたがそのように生意気では、わらわの写本もここに置くのは止めることにするぞ」
「おう、すまんな。つい喜び過ぎちまったぜ」
 ラルクが素直に頭を下げると、医心方房内も「よし」と納得する。
「ところでゴーレム共はどうなのじゃ?」
「心配するな。片付けた。書庫の掃除もあるんで、もちっと待ってな」
「うむ、よきに計らえ」

 鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)常闇 夜月(とこやみ・よづき)は、調理本のコーナーに入り浸りだった。
「少しだけですよ。俺が探すのは……」と言っていた貴仁だったが、夜月の希望にあわせて懸命に探し続ける。
 そこに料理の本を探しに来た漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)がいた。
 樹月 刀真(きづき・とうま)は相変わらす半ば本に浸りながらも、もう半分は自分と行動を共にしてくれる月夜と白花に思いを馳せている。
 2人は盛んに料理のコーナーを行ったりきたりしている。
『多分俺の食事を作る相談をしているのだろう』と分かってしまうことが、どこかむず痒くもあった。
 白花と夜月の手が同じ本に重なる。
「あ、ごめんなさい」
「私こそ、お先にどうぞ」
 互いに譲り合ってばかりで、決着が付かなかった。ふと夜月が白花にどんなものを作るのか尋ねる。
「どんなものを……と言うか、大切な人に作るので、どんなものでも良いのですけど」
 自らも尽くすタイプである夜月も、白花の言い方に納得する。
「それではこのようなのはいかがですか?」
「あ、おいしそう!」
 そこに月夜がやってくる。本棚の前で料理談義が始まった。
「私もまだお料理勉強中ですし、今日はカレーを作りましょうか? ……簡単ですし失敗も少ないと思います」
 夜月も月夜と白花の手を借りて、お目当ての本を見つけた。
「お待たせしました」
 嬉しそうな顔の夜月を見ると、貴仁の表情も緩んでしまった。

 鬼龍 白羽(きりゅう・しらは)は、遅れて回収班に参加する。
 ボーイッシュな女の子。しかも執事服とあっては、鬼が金棒を持って翼が生えたようなもので、特定の層ながらも大受けした。そして白羽の人懐っこく、いたずら好きな面が、効果を一層大きなものにしていた。
「なんだか釣りで入れ食いって、このことみたいです」
 クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)が感心する。
 白羽も「こんなに楽しいボランティアがあるんですね」と一段と誘いのメールに精を出した。



 回収班の活躍はボランティア最終日まで続いた。
 メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が淡々と回収業務と言う名のナンパをこなしていくのに対し、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は、琳 鳳明(りん・ほうめい)セラフィーナ・メルファ(せらふぃーな・めるふぁ)の指導に熱がこもっていた。
「もっと、こう、グッと迫っていかなくちゃ!」
 セレンフィリティが女の武器を活かすようにアドバイスすると、エースは「初々しい方が良いんじゃないか」と異なった助言を行う。
「もっと元気を出してやってごらんよ」
「そっか、空元気も元気の内! ……っておじいちゃんも言ってた」
 アドバイスの効果が徐々に出てきたのか、琳とセラフィーナも遅延者の男性から着実に本を回収していく。人数が増えたことで、効率が大きくアップする。たまに時間が重なりバタバタすることもあったが、日々数十冊の本を回収していった。

「お疲れ様。どうなることかと思ったけど、予想以上に返ってきました。どうもありがとう」
 司書の言葉に、クロセルを始め回収班の面々は満足げな表情だった。もっとも満足したのは黒豹のヴァルヴァラかもしれないが、表情からは読み取りにくい。
「でもたまに服をボロボロにした人が泣きながら返してきたって報告が来たけど、あれは何か関係があるのかしら?」
 ヴァルヴァラがそっぽを向く。
「さ、さぁ、学園も広いので、いろんな趣味の人がいるのでしょう」
 とぼけるクロセルに、司書は思わせぶりな顔つきながらも、それ以上は追求してこなかった。


 臨時の図書館ボランティアは終了したが、人数を絞って登録ボランティアが活躍することになった。もちろん今回のボランティアの成果が認められたのは言うまでもない。
 ただし新たな懸案事項として、ゴーレムのトラブルの調査結果がまとめられた。柊真司の報告書を下敷きに、更に詳しい調査が加えられ、図書館長から蒼空学園の山葉校長の元に届けられた。そして更なる原因追求と管理体制強化の指示が下った、


                《終わり》

担当マスターより

▼担当マスター

県田 静

▼マスターコメント

5作目となりました。県田静です。多くの方の、ご参加ありがとうございました。

今回もいろいろなアクションの参加があり、楽しんで書く事ができました。
「アクション以上に膨らましすぎたかも」と思うところも多々あるのですが、楽しんでいただけたらと思います。

「このアクションをしてくれる人が欲しい」と思っていたところに来てくれました。
「このアクションを書く人がいるだろうな」と予想通りになった方もいらっしゃいました。
また「こんなアクションがあったのか」と予想以上のものもあり、何とかはめ込みたかったのですが、力量不足なところもあり申し訳ありませんでした。

最後に含みを持たせたのは、一応続きがあるからなのですが、どうなるかは不明です。

次の機会がありましたら、よろしくお願いします。