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イコン最終改造計画

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イコン最終改造計画

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第6章 イコン戦……?

 そうして品評会が進む中、1機のイコンが会場に降り立った。
 全体的に黒のカラーリング、ところどころに赤い水晶が埋め込まれており、マントを羽織り、肩には大型のバズーカ砲という出で立ち。しかも要好みの大型であった。
「お? 何々? 何かでっかいのが来たよ!?」
 黒塗りのイコンは降り立ってから何もせずその場にとどまっていたが、しばらくするとコクピットハッチが開き、中から1人の女性を送り出した。
「やあやあ皆の衆、突然で悪いが、この私の【六天魔王】の相手をしてくれる者はおらぬか!?」
 ハッチから出てきたのは織田 信長(おだ・のぶなが)。この黒塗りのイコン・六天魔王の所有者である。
 信長がここに来た理由は1つ。イコン品評会に参加し、その場にいる参加者にイコン戦を申し込み、勝利するために来たのだ。とはいえそれは場を荒らすのが目的ではなく、自らのイコンが最強であることを証明したいだけであり、手当たり次第にイコンを破壊する意思は毛頭無かった。そもそも場を荒らすのが目的ならば、上空から肩に担いだ「第六天魔砲」を連射すればいいのだから。
 だが信長の意思とは裏腹に、その場に集まった者は何の反応も見せなかった。
「……おや、妙だな? 誰もイコン戦を行ってはくれんのか?」
 そう、この場に集まった者の中で、イコン戦を行おうという意思のあるのはいなかった。
 いるとすればこの後で完成する予定の「高島要の魔改造イコン」と戦うという面々であり、個別でイコン戦を行おうと考える者は皆無も同然だった。
「何じゃ何じゃ、つまらんのう。せっかく六天魔王が大きくて最強であると証明したかったというのに、どいつもこいつも腑抜けばかりで――」
 信長がそこまで言うと、どこかから銃弾が六天魔王の装甲に体当たりしてきた。
「ん、何じゃ?」
 誰かイコンの射撃武器で攻撃してきたのだろうか。期待を胸に信長は辺りを見回すが、発砲したらしいイコンは見当たらなかった。
「誰じゃ、今撃ってくれたのは?」
「ここだよー!」
 その声は信長から見てかなり下の方から聞こえた。
 果たしてそこには、「孤影のカーマイン」を六天魔王に向けて撃ちまくる湯島 茜(ゆしま・あかね)がいた。
「イコン最強の座はあたしのものだー!」
「ち、ちょっと待て! 戦うのはいいとして、なぜ生身で、しかも鉄砲1丁だけなのじゃ!?」
「だってしょうがないじゃない! イコン持ってくるの忘れちゃったんだからー!」
「なんじゃそりゃあああああああ!?」
 茜自身はパートナーの分を合わせて、イコンを3体、大型車両を1台所有している。おそらくその中のいずれかを持ち込んで、会場内にいる誰かにイコン戦を申し込むつもりだったのだろう。戦闘の算段はつけていた。だが肝心のイコンを持ってくるのを忘れてしまったのだ。
「イコン持ってくるの忘れたから、生身で勝負するしかないんだもん!」
 茜も契約者である以上、それなりの実力はつけてきている。武器や戦術さえ十分であれば、ゴーストイコンの1体や2体くらいは倒せるだろう。だが今回は「生身で戦うための戦術」は考えておらず、持っている武器はカーマイン1つだけ。これでゴーストイコンより強力なイコンを倒せというのはさすがに無理な相談である。
「はぁ、まったくしょうがない奴め……。忍、とりあえず黙らせてやれ」
「……了解」
 信長のパートナーである桜葉 忍(さくらば・しのぶ)がサブパイロット席から操縦を行い、足元に来ていた茜を、六天魔王の巨大な足で軽く蹴る。
「きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
 いくら契約者といえど、生身の人間がイコンの攻撃をまともに受けて無事でいられるわけがなく、茜はあっさりと飛ばされてしまった。

「まったく、せっかく六天魔王でここまで来てやったというのに、誰もイコン戦を行おうとせんとは、嘆かわしい」
 茜を退場させた後、信長はコクピット席に座って愚痴をこぼしていた。
 そんな信長をなだめたのは忍である。
「まあまあ落ち着けよ信長。聞いた話だと、この後イコンの改造大会があるそうじゃないか」
 そう、品評会の後はいよいよメインイベントである、イコン魔改造の時間となる。改造が終了すれば、その次に待っているのは間違いなく試運転。そして都合がいいことに、その時を狙って要のイコンと戦おうとしている者がいるというではないか。
「だからさ、それに便乗させてもらえば? 1対1の戦いってわけじゃないから、誰が最強なのかを決めるのは難しそうだけど……」
 幸いにして要の要望は「イコンを大きくしたい」というものである。それならば、同じく大きさが自慢の1つである六天魔王が対抗するのにちょうどいいのではないだろうか。
「なるほどのう。では、それまでのんびり待つとするか」
 どうせ他にイコン戦を行おうとする者はいないことだし、と信長はゆっくり待つことを決めた。

「ねえアレックス、さっきのは何だったのかな?」
「さあ、俺に聞かれてもなぁ……」
「まあ会場が荒れるってことにはならないんだし、別にいいだろ。にしても……、すごく……、大きいじゃないか」
 端の方――荒野に端というものがあるのかどうかはわからないが――で待機する六天魔王を見て、和希は1人、そんな感想をもらした。