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リアクション
ミゼとは違う二人掛けのテーブルに一人で座って、ドリンクバーを注文し色々なドリンクのミックスを楽しんでいたのは竹野夜 真珠(たけのや・しんじゅ)であった。
真珠のテーブルには、黒とオレンジの混ざったグラスが置かれてある。
「ぅう……アイスオレンジコーヒーって不味いわね。さっき飲んだメロンジンジャーエールはそこそこいけたのに……」
「混ぜたのかよ」
「ん? あ、つぐむちゃん!! どこに居たのよ?」
真珠の向かいにつぐむが腰を下ろす。
「色々な席を回ってた。ま、お疲れさん!」
と、自分の持っていたコーラの入ったグラスを持ち上げるつぐむ。
「うん! 今回の冒険も大変だったね!」
真珠が自分のグラスをチンッと合わせる。
互いに自分のグラスを飲む二人。
「ぅぷ……やっぱり美味しくないやー」
「しょうがないなぁ。口直しに俺のを飲めよ?」
「あ、ありがとう」
真珠がつぐむのコーラに口をつけ、首を傾げる。
「何か、普通のコーラと違う?」
「ああ、レモンスカッシュがあっただろう? それを少し混ぜたんだ。サッパリして美味しいぜ」
「へー。あ、真珠のも飲む?」
「うん、遠慮しておく」
「いいから! ものは試しだよ?」
真珠のグラスを飲むつぐむ……が。
「うぇ……苦いのと酸っぱいのが同時に……」
「お砂糖とクリームも入れたら良かったかな?」
「今以上の混沌を呼んでどうするんだ。別の飲み物取ってくるよ」
「あ! 今は駄目らしいよ」
「何が?」
「うん、さっき真珠が行った後、店員がドリンクバーの機械が壊れたとか何とか言ってたから」
「……ちょっと見てくる」
と、席を立つつぐむ。
ポツンと残された真珠が、残されたグラスを見つめて、ハッと顔を赤く染める。
「ヤバッ……これって間接キッスじゃない!?」
「きゃー、きゃー!!」と一人はしゃぐ真珠。
「そうよ! 見事に壊れているのよ! これはなななでも無理ね!」
「……」
故障中と書いた札を機械にペタリと貼ったなななを、つぐむが訝しげに見つめる。
「他の店員は?」
「みんな、今手一杯なの! だからなななが誰も使わないようにこうして見張っているの!」
家は代々技術者か研究者であり、本人も機械弄りが趣味なつぐむは、自分の工具を絶えず持ち歩いていた事を思い出す。
「金元。俺が直してみてもいいか?」
「え? 本当? 出来るの?」
「んー、やってみないとわからないけど」
「いいよッ! なななが許可してあげるよ!」
「……ありがとう」
と、つぐむがドリンクバーの前に屈む。
「ところで、どうして故障したんだろう?」
「うん! 何かね、ドリンクが出ないってお客さんが言ってきたから、ななながパンチとかキックとかしてみたんだ。古いテレビはそれで直ったのに、おかしいよね?」
「……」
つぐむは静かに工具の選定を始めた。
なななの許可を取ってそのドリンクバーの修理に取り掛かるつぐむ。
その修理の様子を興味深そうに背後で見守っていたセルシウスを、丁度入店してきた夢野 久(ゆめの・ひさし)が見つける。
「(……あのトーガの金髪、前にコンビにで会ったエリュシオンの奴だな)」
そう思った久がセルシウスの肩をポンと叩く。
「む?」
「うぉーい、何時かぶりだな。何してんだ?」
「!! 貴公は、カップ麺の男だな?」
「妙な覚えられ方だな」
久が苦笑する。
「ここは荒くれもんも多い、一人こっきりだと絡まれる可能性が高くなるぜ? また会ったのも何かの縁だ。良かったらちと話さねえか?」
「フッ……一線は退いたものの、体術ならそう蛮族達に負けはせん」
「言うねぇ」
「だが、貴公の話とやらには興味がある。付き合おう」
久がセルシウスの背後にあるドリンクバーを見る。
「しかし、酒場にドリンクバーね。まぁ、語り合うにはイイ手段だけどな」
「うむ。あれは我が故郷には無いものだ」
「あー、まー、言われて見ればそーだろーなー。地球から色々輸入されてるしそりゃエリュシオンから来た奴には意味不明なのも多いか。俺が知ってる限りでよけりゃざっと教えるぜ?」
「頼む」
久がコホンと咳をして続ける。
「ドリンクバーはまあ、見ての通りだ。客寄せの面が強いんだろ。ソフトドリンクはまとめて仕入れりゃ安いだろうしな。聞いた話じゃ原価なんてタダみたいなものらしい」
「タダ!? 無料だというのか!? どういうビジネスモデルなのだ?」
「PR。つまりはメーカーの宣伝て意味合いもあるんだろう。携帯電話だって昔は本体の値段がタダみたいなもんだったろう?」
「携帯電話がタダ!! ……高度な情報化はそこに一因があったのか」
腕組みをして「うーむ」と考えこむセルシウス。
久が見ると、トーガの下に見えるセルシウスの足がやや震えている。
「おまえ、足震えてるぞ? どうした?」
「ああ……先程、PPPHなる踊りをつい乱舞してしまったからな」
「……乱舞か。そりゃあ喉も乾くし、疲れるってもんだな。だが生憎、席は満杯みたいだし……」
久が周囲を見渡し、空席を見つけようとする。
と。そこに二人に向かって手を振る人物がいた。
「ん? あれは?」
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