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学園祭に火をつけろ!

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学園祭に火をつけろ!
学園祭に火をつけろ! 学園祭に火をつけろ!

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     ◆

 占いに句切りを、店内にアナウンスが入ったのは、シリウスたちがスカイホリディにやってきて十分程度が経ってからの事だ。
「これから、スカイホリディ緊急企画、『突撃突然生ライブ』をお送りしたいと思います。司会はあたし、レキ・フォートアウフと――」
「か、カムイ・マギが、お、おお、お送りします」
 緊張からか、若干どもっているカムイ。何故かメイド服を着させられている為、店内にいる男性客からの声援が二人に向かって飛んでいく。
「さて、緊急企画なので一回っきり、今店内にいる人たちはまさしくラッキーな感じですね!」
「と、とっぷばったーは、シリウス・バイナリタスさん、に、よ…よる、クラシックギターのひき、弾き語りです………!」
「「頑張れねーちゃーん!!!!」」
 急遽作った原稿を辿々しく読むカムイに飛んでくる声援。耳まで真っ赤にしながら、カムイは頑張って司会を進行する。レキは――というと、案外馴れた感じでマイクを握り、身ぶり手振りも兼ねて進行していた。
「それでは、シリウスさんの登場です、どーぞーっ!」
 周囲の拍手に迎えられ、ギターをさげたシリウスが登場する。
「ど、ども。紹介されたシリウス、です? まぁその……なんだ。クラシックだから盛り上がりはしないかもしんねぇけど、一生懸命頑張るから、その、聴いてくれ」
 若干恥じらいながら、彼女はいつの間にか備えられていたカウンターに置いてあった椅子に腰掛け、ゆっくり弦を弾き始める。
穏やかな曲調のそれは、しかし心地の良いメロディ。独自の間を持つにも関わらず、全くといっていいほど違和感がない。
彼女は瞳を閉じて演奏に集中し、観客たち、みせばんをしていた一同も思わず目を閉じて聞き入っている。
クラシック、と言えば随分と長いものの様に感じるが、実際には小さな纏まりの集合体である。故に構成を変えたり、部分だけで演奏することのしやすい物である。彼女は出だしの節、盛り上がりの節を上手く纏めてほどよい長さのアレンジとして弾いていた。
沈黙が続いた僅か二分半――、物音はほとんどせず、彼女の奏でる音色のみが響き渡っている。
 弾き終わったシリウスは、小さく息を吐き出し立ち上がってお辞儀する。拍手喝采が巻き起こり、今度は笑顔を浮かべながらに再度礼をしたシリウスを、更に大きな拍手が包む。
「ありがとうございました! 何と心の休まる音色だった事でしょう! 素敵な演奏を疲労してくれたシリウスさんに、もう一度心からの拍手をお送りしましょう」
 暫く鳴り止まない拍手に送られ、簡単に作られた舞台から降りていくシリウス。
「それでは続いて参りましょう、次はペト・ペトさんの弾き語りです」
 どうやらシリウスの演奏を聴き、落ち着いたのかカムイはどもらずに紹介する。
「元気でポップで独創的な彼女の歌声、お聴きください!ペトちゃんどうぞー!」
 ウーマの背中に乗って舞台上に登場したペトは、ウーマにくっつかない様に椅子の上に座る。
「ペト、歌っちゃうのです」
「か、可愛い………」
「ちいちゃくて可愛いねぇ、あの子!」
 椅子の上に立ってお辞儀したペトは、再び椅子に腰掛けるとギターを前に持ってくる。そして息を吸い込んでから、ギターを弾き始めた。

  今年の空大    ぶんかさーい
  万博の裏で    盛り上がーる?
  そんなの全然   関係なーい

  苦境も楽しむ   Cool Guys
  死ぬときゃ小粋に Cool Die
  校長デカイよ   ずーうったーい
  いつでも最高   くーうっだーい
                    」
 ポップで独創的な歌が響き、可愛らしさと歌詞で笑っている観客。演奏が終わると再び立ち上がりお辞儀をしたペト。会場からは惜しみ無い拍手が響く。
再びウーマがやって来て、彼女はその上に乗ると舞台を降りていく。
「可愛い演奏、ありがとうございました! ペトちゃんでしたー」
「CDが出たら買います」
「………カムイ、気に入ったんだ。今の曲…………」
「………………………」
 やや照れた様子で、カムイが頷いた。
「さ、さぁ! それでは最後になりました。続きましては、『Foret Noire』による演奏です!」
「メンバーは、呂布 奉先さん、シャーロット・モリアーティさん、セイニィ・アルギエバさんの三人です」
「それでは、拍手でお迎えください、どうぞー!」
 拍手の中、三人がやって来る。
「皆さん、こんにちはー!」
「紹介に預かったForet Noire、メインヴォーカルの呂布だ。今日は別のバンドで活躍しているシャーロットとセイニィをゲストヴォーカルで呼んだ。短い時間だけど盛り上がってってくれ」
 伴奏が始まり、互いに顔を見合わせてから歌い始める三人。流石に普段から人前で歌う機会が多い彼女たち緊張の色はない。心の底から楽しそうに歌う彼女たちを前に、観客たちも自然、リズムに合わせて体を揺らすのだ。
 彼女たちは数曲をアレンジした上で、それをメドレー形式に纏めていた。一曲と同意のこの方法は、順番や組み合わせなどでその色合いを容易に変えてしまう。印象も違えば、良し悪しまで変わってしまうため、慎重に編曲をし、編集をしなければならない。が、それもお手の物、なのだろう。
最初はバラード調のものから、徐々に盛り上がっている曲に変わり、再び静かな曲になったと思いきや、大きく盛り上がる。安定の中にサプライズを入れた進行で、観客は更に盛り上がる。最後に再び落ち着いた調子の曲に戻ったまま、彼女たちの演奏は終了した。静まる空間、演奏の余韻だけが残り、一拍遅れて歓声と拍手の嵐が巻き起こった。
「あ、ありがとうございました! 最後に皆様、急遽開いた演奏会を盛り上げてくれた三組の方たちに盛大な拍手を――」
 レキの言葉が途中で途切れてしまうほどの拍手が部屋一杯に広がっていた。どうやら無事、演奏会は成功に終わったらしい。