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兄の仇はローレライ!?

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兄の仇はローレライ!?

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〜臨戦態勢〜

 突然の襲撃をなんと斬りぬけることに成功した一行は安心に包まれていた。同時に今回の事件の主犯であろうスキュラの存在を改めて確認する事になった。
「これで……はっきりしました。死体が……なぜ一つも上がらなかったの、か」
「ゾンビにしていたのですね。なんてひどい…」
パッフェルとローレライは暗い面持ちで帆船の上で海上を見下ろしていた。
「でもこれで終わりですよね?」
 アイラは不安な表情で問いかけた。アイラは無数のゾンビ達の中に兄がいるのではないかと気が気でなかったようだ。
「岩場で……人を誘い、不利な状況を……見極めるや否や……戦線離脱。相手は相当狡猾……今は簡単に……気を抜けない状況、でしょう」
「はい…」
クリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)クリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)二人は次のスキュラの襲撃を予想し、歌に着目していた。
「先程の事でスキュラは歌によって我々をおびき出していた。だったら今度は俺達の歌でスキュラをおびき出すのはどうだろう?歌で船自体の防御能力もあげておけるし」
「歌でおびき出せるかは分からないけれど歌で船を防御するのはいいと思うね。他の人にも協力してもらって歌による結界とまではいかないけれどそれに似たような事は出来ると思う」
 二人は周りの歌えるもの達を一か所に集める事にした。
 冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)は先の戦闘でゾンビ達を一瞬で屠っていた。
「帆船を沈められては帰るのにも苦労しそうです。私は船を護りますわ」
中型の帆船であるこの船にもマストの先に見張りの為の籠ぐらいは付いてるだろうと踏んだ小夜子は籠へと登った。
「ホークアイで、もしまた襲ってくるのであれば感知しますわ。これで異変があればイングリットさんや、他の仲間に大声で知らせる事ができますわ」
七瀬 歩(ななせ・あゆむ)はクリストファーとクリスティーの歌を使って船を防御するという話を聞いてやってきた。
「ローレライさんも一緒に歌ってくれたら嬉しいな。あんまり戦いは得意じゃないけど、アイラちゃんはあたしやローレライさんたちで守るから任せておいて!」
そう快活に告げる歩は楽しそうに遊ぶような口調で喋っている。アイラはローレライの方を一瞬見ると歩を見つめなおし、はにかんでいる。
「この船に乗ってからというもの心強い以外の感想が出てきません」
 その頃帆船の内部では佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)の姿をした伊勢 敦(いせ・あつし)熊谷 直実(くまがや・なおざね)が眺めながらぼやいていた。
「なぁ、弥十郎髪の毛どうした? 黒髪だったっけか?」
「ああ、これはウィッグだよ」
「ん……そうか」
確か、前にもこんな違和感を感じたなそう思った直実だったが口には出さずに飲み込んだ。
「さっきの激しい戦闘ではほとんど出番が無かったね」
「ああ、そうだね。まぁ次出てきたらコテンパンにしてやるけどな」
そう言って軽く笑う。とんとんと誰かが直実の肩を叩いた。
「なんだよ?」
そう言って振り返ると、見知らぬ顔の男が立っていた。その男は生気がなく白目をむいている。良く見ると所々腐敗しているように見える。
「ゾンビ!?今度は中から湧いてきやがった!」
すぐさま距離を取る直実。伊勢は落ちついた様子のままで
「おっさんここでやるのは少しまずい一度外に出るよ」
そう言うと弥十郎が装備している龍頭琴を構える。
「ゾンビさんこっちですよ」
龍頭琴をかきならしながら甲板へと出る二人。飛び出すと同時に直実は空飛ぶ箒スパロウに乗り飛び上がる。ゾンビはいつの間にか多数が中から湧いてきていた。
 伊勢は船の揺れに戸惑いつつも行動予測で相手の出方を見据える。得意の体術を活かす為に弥十郎のスキル荒ぶる力を使う。そのまま相手に一発をお見舞いする。
「前にもあったな!」
 そう言って相手をなぎ倒す伊勢、いや体は弥十郎を見て直実は普段と違い体術メインで戦う弟子に再び違和感を感じる。
「おっさん、何してんの。援護お願い。」
 その声を聞いて我に返る直実。空飛ぶ箒スパロウに乗り一定の距離を取りつつ弓矢で攻撃を行う。その矢は一つには煉獄斬で灯した炎、もう一つにはアルティマ・トゥーレで氷を灯したもの。それをゾンビに向かって放つ。
「バスッ、バスッ」
伊勢の攻撃を縫ってゾンビへと命中させていく。
「よし」
 周囲のゾンビを倒し声を上げるがすでに船は戦場になっていた。