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リアクション
拝啓、お父上、お母上。
僕ら――永井託(ながい・たく)、ハル・オールストローム(はる・おーるすとろーむ)、神崎輝(かんざき・ひかる)は今、死中にあります。
何とか生き延びられるかもしれませんが、相当恐ろしいことになっています。
そう、何かクマにおっかけられてるんですよ――!?
最初は、輝のトレジャーセンスにきゅぴーんっと反応したパラミタマツタケが始まりでした。
木の根元に、色々なキノコと一緒にひときわ目立つようにおいてあったのです。
――事の起こり――
「やったー! パラミタマツタケゲットだー!」
「こっちはパラミタしいたけがあるねぇ」
「ここの全部持って帰れば、食材としては丁度いいかもね」
ほくほく笑顔の輝が託とハルに向かって言った。
さすがアイドル。その笑顔は晴れやかで、見ている者の気分も高揚させることができるようだ。
「それでは、戻りましょう」
「そうだねぇ。まだ時期的に紅葉とかは早そうだし。今日のメインは闇鍋だしねー」
託は辺りを見回して言った。
地味ながらも紅葉している部分はあるとはいえ、見栄え的にはそうでもない現在。
陽光が差し込む森の中。
そんな三人を大きな影が包む。
ガオー。
「はいはい、がおーがおーです…………ねー……?」
クマがいた。
はしゃいでいたせいで、クマの足音に気がつかなかった。
驚愕に輝は手に持ったパラミタマツタケを落としそうになる。
「どうしたんで……す……か?」
あんぐりと口をあけて固まっている輝の視線を追う、ハル。
クマがいた。
「どうしたのー?」
のんびりとした調子の託はまだ気づいていない。
「く、く、く、クマだー!」
「これは、わたくしの獲物に。一番大きい動物を狩ろうと思ってたんですよ」
叫ぶ輝とは裏腹にハルは落ち着きを取り戻し、一笑するとクマを見据えた。
息を吐くと同時に、ハルは駆け出した。
だが――
「ぐべっ」
ガサガサッという木の葉の舞い上がる音と共にハルは背中から転ぶと、後頭部を強打してしまう。
何がいけなかった。[ダッシュローラー]のローラー部分が落ち葉を巻き込み滑ってしまったのが悪かった。
そして不運なことに、落ち葉に隠れている地面は大小さまざまな石が散らばる
「だから、ダッシュローラーは危ないっていったじゃないのー!」
輝が泣きそうな声でハルに抗議をした。
「託さん、ちょっと起こすの手伝って!」
輝は託にお願いすると、手早く荷物をまとめてハルを抱え起こした。
「了解だよー」
託はいそいそとハルに肩を貸すと、輝と同じように荷物をまとめた。
「ハルさーん、しっかりしてー! 自分の足で走ってもらわないとボクたち食べられちゃうよ!!」
ぴよぴよとハルの頭の上にひよこが回っているような、そんな幻視ができてしまう。
そんなのお構いなしに、輝はハルの頬を叩いた。
「む、むう……。世話をかけてしまいました」
ハルはなんとか目を覚まし、自分の足で走り出した。教訓にして、[ダッシュローラー]のローラー部分は使わないように気をつけてだ。
ある日、森の中。クマさんにであったら、そりゃあ、まあ全力で逃げますよね?
――そして、現在――
何とか逃げ切り、体勢を整えなおす。
装備を確認して、今度は反撃に出る番だ。
クマは辺りをキョロキョロと見回している。まだ3人は見つけきれていないようだ。
「僕は後ろから回復でサポートするよ。多分大丈夫だと思うけどねぇ」
完全武装状態の輝とハルを見て、託は言った。
「さっきは不意打ちでしたが、次は遅れをとりません」
「うん。ボクも慌てちゃったけど、普通なら負けないよね」
輝とハルも、クマを見据えて言う。
そして、ざっと落ち葉を踏みしめる音が響く。
まずは輝がクマに肉薄――しようと試みたところで、クマも輝たちの存在に気がついた。
「くっ――!」
不意打ちは難しいと判断した輝は、[女王のソードブレイカー]を構え、仁王立ちしているクマに【チェインスマイト】の2連撃を放つ。
二度の剣閃が輝の攻撃と同時に振るわれたクマの豪腕に傷をつけた。
雄たけびを上げ、もう片方の腕が振るわれる。
咄嗟の判断。【歴戦の防御術】が輝の身を少し後ろに引かせ、[女王のソードブレイカー]でクマの爪を受け止めた。
「ハルさん、今です!」
輝の後ろから迫っていたハルが、[桃木剣]を下段に構え、【歴戦の必殺術】でクマの弱点を探す。
「分かっています!」
がら空きになっている、胴、頭部。
まるで風になっているかのような速度で、ハルはクマに肉薄すると、まずは頭部に【疾風突き】を見舞う。
加速された自身の速度と、文字通り疾風のごとく[桃木剣]から繰り出される突きがクマの頭部へと突き刺さる。
衝撃で仰け反るクマ。
そのまま、ハルはクマの胴を蹴りつき離すと、よろめいているクマにもう一度【疾風突き】を繰り出した。
初速そのままに放たれる突き。たとえ武器が木製であろうと、動物の皮膚を突き破るくらいはたやすいことだった。
心臓のある位置を穿たれたクマはどうと音を立てて倒れる。まだびくびくと痙攣してはいるが、絶命するのも時間の問題だ。
「……ところでこのクマ、誰が運ぶんですか?」
血を拭いながら、ハルはそういうのだった。
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