リアクション
◆第4章 決戦
通路の先は、扉で閉ざされていた。
「今度こそ俺様の出番だな!」
光一郎は、持ち前の技術で扉を開けにかかった。
「まずは『ダークビジョン』。これで暗闇でもばっちり見えるぜ。
お次は『ホークアイ』。細かい作業も楽になるなぁ」
(うひょー、朝野の胸の谷間、絶景!
巨乳じゃあねえが、まだまだ発育の余地がありそうなところもまた……)
「どうかした? あたしの体じろじろ見て」
「い、いや、朝野の技術をどう使いこなそうかと思ってよ!
そうだな、後は――
『サイコメトリ』……してもしょうがねえしな。
『機晶技術』……はいらん。
そう! 『財産管理』で計算を早くして……どうするんだよ!
おい朝野! なんでろくな技もってねーんだよ!」
「そんなこと言われても。
茶坊主さんは色々準備してきたみたいだし、あたしがやろうか?」
未沙は扉の前に行こうとしたが、光一郎がこれを遮った。
「今更引き下がれるかよ。
つーかそのあだ名で呼ぶな! 染めてねーし!
行くぜ、おんどりゃーっ!!」
光一郎は『ヒロイックアサルト』で攻撃力を上げ、
『光条兵器』で扉をぶっ壊した。
「見たか!
……ん? やり方が荒っぽいって?
反感を買うのは承知の上よ。何せ俺は判官(ジャスティシア)だからな!」
「そのダジャレ、つまらぬぞ。あと、今はスカイレイダーだろ」
オットーはそれだけ言って、光一郎の脇をすり抜けて行った。
「……ほっとけーき」
■□■
「一番奥まで来たみたいだな」
扉の残骸の向こうに広がる部屋を見て、ルースが言った。
「ルースさん、あれ」
ナナはルースに腕を絡ませたまま、部屋の中央を指差した。
そこには、ガーゴイルに囲まれ、一匹のドラゴンが座していた。
「よくぞここまで辿り着いた。
我を倒し秘宝を手に入れれば、お前達は元に戻り、ここから出ることができる」
「るるの思った通りだよ!」
「ふふ……そう簡単にいくと思うか?
ちょうど腹が減っていたところだ!」
「来るよ!」
未沙が『庇護者』で味方の身を守る構えをとる。
いち早く攻撃に転じたのは、逢だった。
「ななー!」
(マスク・ザ・ブシドーの名にかけて、ナナ様には指一本触れさせないでござる!)
逢はガーゴイルにアリスチョップをかました。
が、ガーゴイルの体は硬い。
逢は弾き飛ばされ、ミケに受け止められた。
「逢!」
ナナは自らのパートナーの身を案じたが、
(こ、これがナナ様のお胸……幸せすぎるでござる!)
逢は、やはりナナのボディを満喫していた。
「一体どうすれば……」
自分はただのゴブリンになってしまったし、逢もやられてしまった。
ナナは、何か自分にもできることはないか、部屋中を見回した。
すると、彼女の目に、るるの『自走式人間大砲』が映った。
「あれです! 私をあの大砲の弾にしてください!」
「な、何を言うんです!?」
ナナのまさかの発言に、当然ルースは止めようとするが、
「大丈夫です。この体はゴブリン。
例え粉々になっても、私が元の体に戻れれば何の問題もありません」
「何気にエグイことを言いますね……
分かりました。きっとナナを元に戻して見せます。――ジャンヌ!」
「任せな!」
アルジャンヌは『密林の配達員』でナナを素早く運び、
ガーゴイル目がけて『自走式人間大砲』でナナを撃ち出した。
ドンッ ガシャン!
ナナは見事ガーゴイルに命中。
ガーゴイルはそのまま壁に叩きつけられ、動かなくなった。
「ナナ!」
ルースがナナに駆け寄る。
ナナは気を失っているものの、上手く頭を保護したようで、無事だった。
「ナイスジャンヌ!」
パートナーの砲撃に、未沙がガッツポーズをする。
それに応えるように、るるが弱々しい声を上げた。
「こっちもどうにかしてよ〜」
戦闘向きの技を多く所持してるるはドラゴンの相手をしていたが、
慣れない体の上に相手は強敵。
徐々にドラゴンの攻撃を凌ぎきれなくなっていた。
「しっかりしてよ、るる!
せっかくフラワシも連れてきたし、便利な技も用意してきのに!」
るるは『空飛ぶ魔法↑↑』で宙をふわふわしながら、
ゴブリンに身振り手振りで戦い方を教える。
「ゴブ……?」
「そう、そうだよ! もうちょっと!」
「ゴブ……!」
「今何か出た感じがするよ! もしかしてフラワシじゃない!?
……うえっ……」
るるは突如吐き気を感じ、落下した。
「なんで、よりによってそれを選んじゃうかな……」
ゴブリンが呼び出したのは、『悪疫のフラワシ』だった!
『悪疫のフラワシ』は病原体を周囲に散布する。
ゴブリンの近くにいる者から順に、病気の症状が出始めた。
正に絶体絶命。そう思われたが――
「ドラゴンにも病原体が効いてる! チャンスだよ!」
『悪疫のフラワシ』はドラゴンにも確かなダメージを与えていた。
未沙は完全に動けなくなる前に、ゴブリンから最も離れたところにいるルースとナナに向かって
『小型飛空艇』を投げ出した。
「無駄にはしません! 行きますよ、ナナ!」
「はい、ルースさん!」
ルースは、意識を取り戻したナナと小型飛空艇に乗り、
大きく開かれたドラゴンの口へと一直線に突き進んだ。
二人の手が引くセフィロトボウから輝く矢が放たれ――
――ドラゴンを貫いた。
「ふ、まるでケーキ入刀。これぞ愛の力だな」
『パワードヘルム』を被っていたおかげでノーダメージのオットーが、かっこよく締めた。