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ミッドナイトシャンバラ5

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ミッドナイトシャンバラ5

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「次のお便りは、ペンネーム、獅子座を想う者さんから。
 
 シャレード・ムーン様
 いつもラジオを楽しく聞いています
 今日は公開録音とのことで、会場にお邪魔いたします
 
 最近の悩み事です
 ふと、過去を振り返るといろいろと思い出すものことがあります
 クイーン・ヴァンガードが組織は既に解体されてから随分たちますが……あれ?
 名前が出て来ない…クィーン・ヴァンガードに所属してた男で彼女が十二星華の一人…あ、こっちも思い出せねぇー!
 喉まで出かかってるのにどうしても出て来ない…その二人は今どうしてるのでしょうと思うと同時に、クイーン・ヴァンガードの在り方に疑念を覚えて反発していましたが、改めて思うに反発せずに別のことが出来なかったのだろうかと悔やむことがあります
 
 もっとも、反発していたことで片思い中の女性の力になれたのですけど
 
 今でもクイーン・ヴァンガードに何か出来ないだろうかと考えることがあります
 シャレード様。俺は今からでも行動をするべきでしょうか?

 
 懐かしいですね、クイーン・ヴァンガードですか。
 組織としてのクイーン・ヴァンガードはもうなくなってからずいぶん経っていますね。
 でも、古から伝えられてきたクイーン・ヴァンガードの精神は今もなくなっていないと思いますよ。
 どちらかと言えば、クイーン・ヴァンガードという物は、組織ではなくて精神だったのではないかと思います。
 この間まであった組織としてのクイーン・ヴァンガードは、そのころまだ女王が即位していなかったこともあって、今ひとつ実感がなかったのではないのでしょうか。守っていたのは女王候補でしたから。
 でも、5000年前は違ってましたよね。あのころは、組織としてというよりもクラスという側面が大きかったと思います。
 実際は、現在でも同じなのじゃないでしょうか。
 きっと、女王を守りたいという心を持った者こそがクイーン・ヴァンガードなんですよ。
 だから、クイーン・ヴァンガードはなくなりはしないし、その精神で成せることもたくさんあると思いますよ」
 
「うーん、俺は、形にこだわりすぎていたのか?」
 シャレード・ムーンの言葉を聞いて、投稿主であった武神牙竜がちょっと考え込みました。
「そんなことを考えていたのでしたか」
 すぐ後ろに座って、じっと武神牙竜を観察し続けていた龍ヶ崎 灯(りゅうがさき・あかり)が、納得したようにつぶやきました。最近の武神牙竜は、ちょっと悩んでいるように見えたからです。
「わっ、いたんですか」
「ええ、ずっと」
 突然龍ヶ崎灯の視線に気づいた武神牙竜が、ちょっと驚いて言いました。龍ヶ崎灯のストーカー体質は、まだ完全には治ってはいないようです。
 
「続いてのお悩みは、血煙爪ガールさんからです。
 
 シャレード・ムーン様
 いつもラジオを楽しく聞いています
 
 悩み事の相談と言うより悩んでいたことに結論が出たのでラジオをお借りして聞いてると思うパートナーに伝えたいと思います
 
 血煙爪を極めると羽が生えると聞いたので、血煙爪を極める旅に出ます!
 
 探さないでください!

 
「へえー」
 そんな話、始めて聞いたと、曖浜 瑠樹(あいはま・りゅうき)が半信半疑ながらもちょっと感心して見せました。
「血煙爪を極めると羽が生えるのですか。ゆる族の私にも生えるのかなあ。背中でピコピコするちっちゃい天使の羽根……なんだか凄く可愛くていいです。これは、しっかりとメモをしておかないと……。あっ、でも、これって後日放送されるんですよね。だったら、そのときに録音すればいいのかなあ。でもでも、録音失敗すると大変ですから、とりあえずメモしておきましょう」
 律儀に投稿を信じ込んだマティエ・エニュール(まてぃえ・えにゅーる)が、細々とメモをとりました。
 
「ええっと、どこから説明すればいいのか……。
 どこから羽が生えるなんて話が出たのでしょうか……。そういうことを吹き込んだのは誰?
 生えるわけないじゃないですか。きっと、ネクロマンサーかヴァルキリーな人に欺されたんですよ。
 極めるのはいいですが、御家族が心配していると思いますから、早く帰ってあげてくださいね」
 さすがに、シャレード・ムーンもどう答えていいのか困っているようです。
 
「はは、そんな羽なんか生えるはずないよね!」
 おもしろーいっと、カレン・クレスティアが声をあげて笑いました。
「こ、これ、声が録音されてしまうぞ」
 恥ずかしいと、ジュレール・リーヴェンディが、あわててカレン・クレスティアの暴走をおさえます。
 
「がーん、生えないのです?」
「みたいだねぇ。メモ消しておくかぁい?」
 ちょっとショックなマティエ・エニュールに曖浜瑠樹が言いました。
 
「おかしいですね。血煙爪を極めると、宦官を大量生産できるんじゃなかったのかしら?」
 リカイン・フェルマータが、ちょっと怖いことをつぶやきます。
 
「これって、どう聞いてもリリィのことだよな。あいつ、ここ数日帰ってこないと思ったら、そんなことを思い悩んでいたのか」
 ようやく理由が分かったと、武神牙竜が言いました。
「家出ですか。あの娘は、最初はよく剣の花嫁と勘違いされてましたから、ヴァルキリーなのに翼がないのを随分気にしていたのでしょう。血煙爪を極めたいのも事実だと思いますが、羽根の方が重要な気がしますね」
「気が済むまで、帰ってくる場所を守っておかないとな。いつ帰ってきてもいいように」
 龍ヶ崎灯の言葉に、武神牙竜はそう言いました。