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【2021ハロウィン】空京コスプレコンテスト

リアクション公開中!

【2021ハロウィン】空京コスプレコンテスト

リアクション


●注意●
本リアクションには女性同士および男性同士のいちゃいちゃ描写とか、お下品な描写とかが、いつもより多めに含まれているかもしれません。今のうちに覚悟しておいてください。

■■朝から大忙し■■


 ハロウィン当日。
 空京の片隅にある、桜の森公園には、「空京コスプレコンテスト」とポップな字体で書かれた看板が大々的に掲げられていた。
「うけつけはぁー、こっちだぜぇー!」
 公園西側の門の近くには机が出され、受付が設置されている。その前でぴょんぴょこ飛び跳ねながら、参加者達を誘導……呼び込み……しているのは童子 華花(どうじ・はな)だ。
 その元気な声に従って、参加者達は順序よく受付を済ませて行く。
「メディアから取材があるかもしれません。嫌な場合は断って下さいね」
 参加証を手渡しながら注意事項を伝えるのは奥山 沙夢(おくやま・さゆめ)空京稲荷 狐樹廊(くうきょういなり・こじゅろう)のふたりだ。
 (ちなみに参加証はカードサイズのシールになっていて、衣装の目立たないところに貼ることになっている。)
「それから、世の中には布一枚だけ透けて見えるコンタクトなるものも存在します、痴漢対策は万全を期して下さいね」
 狐耳を揺らしながら狐樹廊がニッコリと笑うと、特に女性の参加者はわかりましたぁと黄色い声で答える。
「更衣室はこちらです、順序よく進んで下さい。男性はあちら、女性はこちら」
 参加証を受け取った参加者達を案内しているのはリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)だ。
 その指さす先には、この日のために張られた大型のテント。これが、仮設の更衣室になっている。
「はい次の方――」
 沙夢と狐樹廊はてきぱきと受付を行っているが、結構な人数が並んでいるので人波はなかなか途切れない。
 このイベントの主催は蒼空学園のレクリエーション研究会だが、もとよりそれほど大きな組織ではない。だって同好会だし。
 リカインや狐樹廊のような正規の会員も、都合が付く者は総出で借り出されて居るが、コンテストの設営もあるしで人手は絶対的に足りない。そこで沙夢のような臨時のお手伝いにも来て貰っている。が、それでもやっぱり受付にはこれ以上の人数は割けないのが現状だ。
「こちらが参加証です、痴漢にはくれぐれも気をつけて――」
 受け付け担当の三人……と、ちびっこ一人は休む間もない。

 そのうしろ――運営本部では、首謀者、もとい主催者であるレクリエーション研究会会長、ノリコ・ラージャードと、蒼空学園生徒会の広報である湯上 凶司(ゆがみ・きょうじ)が打ち合わせを行っている。凶司の方から、取材をしたいという申し出があったのだ。
「くれぐれも許可のない相手を映したりしないようお願いします。あ、コンテストは大丈夫、出場要項にちゃんと取材があることを乗せておいたから」
「ええ、わかっています。では、本日はよろしく」
「こちらこそ、生徒会から協力して貰えるなんて有り難いわ。よろしくおねがいします」
 ノリコがぺこりと礼をすると、凶司も軽く頭を下げる。
「行くぞ、ディミーア、セラフ」
 そしてパートナー達に一声掛けると、凶司の後でキョロキョロしていたディミーア・ネフィリム(でぃみーあ・ねふぃりむ)と、ニコニコしていたセラフ・ネフィリム(せらふ・ねふぃりむ)の二人と共に取材の準備に取りかかる。
 事前にネットで配信の準備はしてきてある。あとは機材の準備をするだけだ。
「セラフ、カメラの準備は」
「進めてるわよ。もう、どうして私が機材担当なのよ……」
「そりゃ当然だろ……健全な部活動の取材だからな」
 ぶつくさ言いながら準備を進めるセラフに、ぼそり、と凶司がツッコミを入れる。
 なお、本日のセラフの服装はその豊満な肢体をこれでもかと見せつけるかのような、布面積の少ないアイドル衣装。コスプレイベント会場ではそれほど異端な格好ではないが、生徒会として流す放送のナビゲーターとしては、些か色気が過ぎる。
「ちょっと、今人のことわいせつ物扱いしなかった?」
「あーあー、マイクテストマイクテスト……セラフ姉さん、音声入ってる?」
「え? ああ、大丈夫よディミーア」
 と言うわけでインタビュアーには、セラフの妹であるディミーアが起用されている。
 ディミーアだって布面積の少ないお色気系アイドル衣装を身に纏っているけれど、セラフのそれに比べればまだ露出度は低い、し、何より清純系の顔立ちと控えめな雰囲気がお色気度合いを緩和させている。
「よし、回線も良好だ。取材に行くぞ」
 準備が整った凶司達は、コンテスト会場の雰囲気をリアルタイムで伝えるべく会場内へと出発するのだった。

 さて一方の受付。
「あー、疲れたぁ……」
 次から次へとやってくる参加者達をさばき終えたリカインが、うーんと一つ伸びをする。
 開場と同時に着替えに入ろうという気合いの入ったコスプレイヤー達は既に受付を済ませているし、軽い気持ちで楽しもうかなという参加者達はまだ来ていないようで、受付前はぽっかりと空白が出来ていた。
「楽しそうねぇ」
 更衣室のテントからは、きゃぁきゃぁと女子の黄色い声が響いている。
 リカインは少しだけ羨ましそうにそちらを見た。
「リカインもすれば良いではないですか、コスプレ。ほらあのお得意の」
「ええ……それも、ちょっと考えはしたんだけどね」
 狐樹廊の言葉に振り返ると、肩を竦めてみせる。
 実はリカイン、御神楽 環菜(みかぐら・かんな)のコスプレ、もとい変装にはかなりの自信がある。しかし完成度が高すぎた余り、ちょっとしたトラブルを引き起こしてしまったこともあり、お祭り気分で気軽に扮する気にはなれなかった。
「ちょっとおいそれとは、ね」
「オラもさくらちゃんとこすぷれしたかったなー」
 苦笑を零すリカインのとなりへ、すっかり手持ちぶさたになった華花が頭の後で手を組みながら歩いて来る。元々大した仕事はしていないんだけど。
「あの、ナベリウスのね……あれはほら、さくらちゃんとじゃ一人足りないじゃない?」
 それにちょっと露出度が。という本音は誤魔化して、華花の頭を撫でる。
「呼んだ?」
 と、自分の名前を聞きつけたのか、ひょっこりとどこからとも無く、公園に住まう地祇・さくらが顔を出した。ほんとに何処から出てきたのだろう。
「さくらちゃん!」
 しかしともだちの姿を見付けた華花はそんな些細なことは気にしないらしい。ぱっと笑顔を作ってさくらに飛びつく。
「華花ちゃーん!」
 さくらの方も見知った顔に笑顔を浮かべて、ハグに応じる。ちいさいのが二人じゃれ合う姿は実に微笑ましい。
「オラ、さくらちゃんと遊んでくるっ!」
「遊んでくるー!」
「片づけの時間までには戻るのよー」
 まるで母親のような口調のリカインに向かって大きく手を振ると、華花とさくらは手を繋いでぱたぱたと走っていった。幼い二人とはいえ分別は付いているし、なによりさくらはこの公園の精だ、万が一にも迷子になるということは無い。このまま此処に居ても大した手伝いが出来るわけでもなし、遊んでいた方が華花も楽しいだろう。
「さて、手前達は今のうちに一仕事してしまいましょう」
 華花を見送ると、狐樹廊はやれやれと机の下に置かれた段ボールから、参加証をどっさり取り出す。が、先ほどまで渡していたものと違い、数枚がひと繋がりになっている。業者からの納品が遅れて、切り離しが間に合わなかったのだ。
「私も手伝いうわ」
 一緒に受付に座っている沙夢が、束になった参加証を半分受け取ると、てきぱきと一枚ずつ切り離していく。
「全部は使わないかもしれないわね」
「そうですねェ」
 恐らく、参加者の大半はもう更衣室の中のはずだ。
 こうしている間にも数人受付にやってきたけれど、今後やってくる参加者ははこのペースと踏んで良いだろう。参加証はまだたくさん用意してあるが、全て切り離しておく必要はなさそうだ。
「半分くらいでいいかもしれません」
「そうね。そうしましょう」
 ぴりぴり。
 切れ目の入っている台紙を一枚一枚引っ張りながら、沙夢はふうと空を見上げた。
「今日一日、何も起こらないといいんだけど……」

 ま、そうもいかないだろうね。