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スリーピングホリデー

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スリーピングホリデー

リアクション

 エリセル・アトラナート(えりせる・あとらなーと)は暗い顔をしていた。
 他の被害者同様、客間のベッドに寝かされたアゾート・ワルプルギス(あぞーと・わるぷるぎす)を不安な表情で見つめている。
 状況や事情はよく分かっているつもりだった。しかし、眠ったまま目を覚まさないアゾートを見ていると、どんどん不安が沸いてくる。
「ああ、アゾートさん……」
 エリセルは彼女の名前を呼び、どうにかして目を覚ましてもらおうとした。
「私は……あなたと初めて会った時から、目的のために頑張る姿を見たその時から、一目惚れしました……」
 小さな声で切々と思いを紡ぐエリセル。アゾートに聞こえていなくても、彼女を見ているだけでは辛すぎて、そうするほかなかった。
「あなたが他の人と話をしているのを見たら、胸が苦しくなりました。……時には、嫉妬で狂いそうになりました」
 整った寝息を立てるアゾート。
「あなたが欲しいのだと、ようやく気付けました。欲しくて欲しくて、仕方がありません
……こんな、我儘な私を許してくれますか?」

   *  *  *

28 :名無しのリア充:2021/12/27(月) 13:36:29 ID:KUr0Sak1
君には一緒に過ごす相手はいないの?

29 :ミシェール☆ミ:2021/12/27(月) 13:38:02 ID:M1Chel1E
いたらこんなことやってない><

30 :名無しのリア充:2021/12/27(月) 13:39:12 ID:KUr0Sak1
普段は何をしているの?

31 :ミシェール☆ミ:2021/12/27(月) 13:40:18 ID:M1Chel1E
そうね、普段はゲームやってるわ
オンラインでね

32 :名無しのリア充:2021/12/27(月) 13:41:04 ID:KUr0Sak1
どんなゲームなの?

33 :ミシェール☆ミ:2021/12/27(月) 13:42:26 ID:M1Chel1E
いろいろやってるわよ☆
一番はMySGSオンラインかなー

34 :名無しのリア充:2021/12/27(月) 13:43:16 ID:KUr0Sak1
ああ、それなら知ってるよ
クラスは何なの?

35 :ミシェール☆ミ:2021/12/27(月) 13:43:48 ID:M1Chel1E
もちろん魔女に決まってるじゃない☆

36 :名無しのリア充:2021/12/27(月) 13:44:15 ID:KUr0Sak1
ゲームの中でも魔女なんだ?

37 :ミシェール☆ミ:2021/12/27(月) 12:45:31 ID:M1Chel1E
ちなみにクエストはカンスト済みよ☆
友だちになって欲しかったら探してみるといいわ、michelleで

   *  *  *

 黒崎天音(くろさき・あまね)は予感を覚えていた。
 掲示板でミシェールとやり取りをしつつ、彼女の居場所を探して歩いていく。
 目賀家のお茶会に参加していた天音は、異常事態が発生したために外へ出ていた。トレルやマシュアが倒れたということもあり、犯人にはどうしたって接触を図りたい。そして、胸の中にある予感を確信へと変えたい。
 そんな彼の後について、ブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)も歩いていた。

 シェリー・バウムガルト(しぇりー・ばうむがると)はウィンドウショッピングを楽しんでいた。
「ねぇ、見て。この帽子、セフィちゃんに似合いそう……って、瑠夏くん!?」
 と、すぐ後ろを歩いていたはずの天城瑠夏(あまぎ・るか)がいないことに気付く。否、彼は地面に倒れていた。
「瑠夏くん……良かった、寝てるだけみたい」
 と、シェリーは彼の呼吸を確認してほっと息をつく。
 そしてふと、周りにも似たように突然眠り始めている人たちがいることに気がついた。
「大規模な魔法か何かかしら?」
 と、首を傾げつつ、シェリーは近くの人に助けを求めて瑠夏を救護室へ運び込んだ。
 どこからか聞こえてくる「眠り姫」という言葉。それは眠ってしまった人を指すだけでなく、魔法を解くヒントでもあるらしい。
「……って、ことは」
 じっと瑠夏の寝顔を見下ろして考える。キスをすれば彼はきっと目を覚ます。しかし、眠っている相手にキスなど出来ない。
 ――でも、私がやるしか……っ。
 シェリーは思い切って瑠夏の唇へ唇を重ねた。
「あ……」
 瑠夏は目を開けた。今までにないほど近くにいる彼女をぼーっと見て、ふと尋ねる。
「……シェリー、もしかして、俺にキスした?」
「っ……ごめん、ごめんね。嫌だったよね、寝てる間に、こんな……」
 と、シェリーは顔を逸らして涙を流し始めた。彼の魔法が解けたのは嬉しいけれど、その気持ちを思うと胸が痛かった。
 しかし、瑠夏は声を押し殺して涙する彼女を見て、同じように胸を痛めていた。
 どうにかしてその涙を止めたくて、上半身を起こしてキスをする。そっと、優しく……頬に。
「謝らなくて、いい。……嫌では、なかった。シェリーなら……嫌じゃ、ない」
 と、瑠夏は言う。
「……シェリーは、嫌、だったか?」
 はっとしてシェリーは目元を拭った。
「っ、私だって嫌な訳、ないよ……。だって、私……」
 その先は言葉にならなかった。ただただ涙が溢れて止まらない。
「シェリー……」
 瑠夏は少し困惑しながらも、彼女に対して何か不思議な気持ちを覚えていることに驚いていた。

   *  *  *

「セルマ君、もっと近く行かないと見えないよー」
 と、鏡氷雨(かがみ・ひさめ)は距離を縮めようとした。
「ちょっと、何してるんですか氷雨さんっ」
「何って、パートナーとして二人の恋を見守ってるんだよ。何故なら、ボクたちにはその義務があるからね」
 と、はっきり言い切る氷雨。
 セルマ・アリス(せるま・ありす)は強くダメだとも言えず、仕方なく氷雨を追って近くへ寄った。
「……いくら家族だからって、あんまり二人の関係に突っ込むような真似は――」
 と、呟きかけたところで目標人物の内、一人がぱたりと倒れ込んだ。
「あれ、紫焔さん寝ちゃいましたよ?」
「あ、本当だ」