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スリーピングホリデー

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8 :カリン:2021/12/27(月) 12:11:18 ID:cKAR1ne
すごいことしてるね♪
一体どうやったの?

9 :ミシェール☆ミ:2021/12/27(月) 12:12:01 ID:M1Chel1E
よく分かってるじゃない、あなた
どうって、ただ上空から眠らせてるだけよ?

10 :カリン:2021/12/27(月) 12:13:28 ID:cKAR1ne
そっか、空飛んでるんだ
魔女はいろいろできてすごいね^^

11 :ミシェール☆ミ:2021/12/27(月) 12:13:53 ID:M1Chel1E
ふふん、これくらい朝飯前よ☆

12 :カリン:2021/12/27(月) 12:14:30 ID:cKAE1ne
ねぇ、会ってもっとおしゃべりしませんか?
空京公園で待ってるね^^

   *  *  *   

 叶月は大切なパートナーだ。しかし、それだけの関係ではいられない状況に置かれていることを、ヤチェルは薄々気づいている。それをはっきりさせるためにも、今日は二人きりで話そうと空京へ連れ出したのだ。
「……カナ君」
 近くのベンチに彼を寝かせたはいいものの、ヤチェルは心を決められずにいた。キスをしてしまえば、魔女にかけられた魔法は解ける。しかしそれは、これまでの関係を壊してしまう諸刃の剣。
 そっと彼の頬に触れてみた。冷え切った頬を温めたいと思うけれど、それはどういった意味を持つのだろうか。
「……」
 朔と里也が見守る中で、ヤチェルはただ「眠り姫」を見つめていた。

 御神楽陽太(みかぐら・ようた)にとって、キスで目覚めさせるというのは習慣だった。
 客間をひとつ借りて、眠ってしまった御神楽環菜(みかぐら・かんな)をベッドへ寝かせた陽太だが、ヒントをもらわずとも起こす準備は出来ていた。
 それというのも、毎朝彼はキスで妻を起こしているためだった。早朝にそっと起きて朝食を作り、準備が出来たところで寝室へ戻り、キスをする。そうすると環菜は目を覚まして、二人の朝が始まるのだ。
 しかし、陽太はドキドキしていた。夫婦となった今でも、彼女の美しさ、可憐さにはつい目を奪われてしまうのだ。
 そっと彼女の横に手をついて、陽太は愛する妻へ唇を重ねた。
「おはようございます、環菜……気分はどうですか?」
 両目を開けた環菜が、いつものようにやわらかな表情を浮かべる。
「おはよう、陽太」

 客間に通された秋葉つかさ(あきば・つかさ)は、無防備に眠っている加能シズル(かのう・しずる)を見つめた。
「魔法の眠り……ですか」
 二人きりにされて、何も起こらないわけがない。
 つかさはシズルの上にかけられている毛布をはぎ、彼女のスカートをぺらりとめくりあげた。
「ちゃんとしてますねぇ、いい子です」
 と、くすくす笑ってスカートを元に戻す。
 次は何をしようかと、彼女の顔に顔を近づけてみるつかさ。いつもは凛々しい彼女も、寝顔はあどけなく愛らしい。
 その内に情報も入ってくるだろうと考え、つかさはシズルの頬をそっと撫でた。

 クローラ・テレスコピウム(くろーら・てれすこぴうむ)小暮秀幸(こぐれ・ひでゆき)をお姫様抱っこした。二人は決してそういう関係ではないが、小暮が眠ってしまったのだから仕方がない。
 目賀家の使用人たちが順に他の被害者たちを客間へ案内していたが、数を見るに足りなさそうだ。
「居間を借りるぞ」
 と、クローラは目賀家の居間を借りることにした。
 メイドに案内された居間で、四人がけのソファへ小暮を降ろす。
 そっと横にして寝かせてやると、クローラは自分の上着を脱いで彼へかけてやった。
「さて、魔法による睡眠か……」
 と、思考を巡らせるクローラ。術者の解除か、呪破壊の魔法、恋人の口付けなどが解除手段に考えられたものの、クローラは小暮の寝顔を見て呟く。
「……同意もなく行うのは良くないな」
 ましてや、お互いにそのような気持ちは抱いていないはずだ。二人はただの【親友】だ。
 その内に目覚める可能性もあると考え、クローラはその時を待つことにした。

 どの被害者よりも早く目を覚ました環菜は、陽太と二人でお茶を楽しんでいた。
「今年は、俺にとって環菜と結婚できた人生最良の年でした」
 と、言う夫に環菜も頷く。
「ええ、そうね……」
「来年も、二人で幸せに過ごせる良い年であってほしいです」
 残り数日となった今年を思い、来年を考える。
 環菜は紅茶のカップに口をつけ、その味わいをゆっくりと楽しんだ。今年もいろいろなことがあったけれど、夫と過ごせる時間は何物にも代えがたい宝物だ。
「そうなるよう、俺も全力で頑張ります」
 そう決意をする陽太をくすっと笑い、環菜は言った。
「ええ、そうね」
 その笑顔が、微笑が、陽太の心に愛しさを募らせる。
「……愛しています、環菜」
 どちらからともなく顔を近づけてキスをする。先ほどよりも深く、確かなキスだった。

 樹月刀真(きづき・とうま)は自分の膝を枕にしている漆髪月夜(うるしがみ・つくよ)の髪の毛を優しく撫でていた。その名のとおり、感触は心地いい。
 突然眠ってしまったパートナーに最初は驚いたものの、すぐにそれが魔女の仕業だと分かって、どこか安心もしていた。
 それに、彼女はただ眠っているだけだ。

   *  *  *

17 :銀髪の鴉:2021/12/27(月) 12:16:50 ID:Kt0uMa00
紫髪の魔女さんへ
素敵なサプライズをありがとう。
今はパートナーの可愛い寝顔を飽きずに眺めているよ。

だけど、次から何かする時には一言欲しいな…
もしパートナーが怪我をしていたら、僕は君を赦せないだろうから

   *  *  *

 刀真が掲示板へ書き込みをしている最中、月夜は昔の夢を見ていた。
 夜空に浮かぶ月の下、彼と出会い、契約に至ったときのことだ。
『俺は俺の力の為にその剣が欲しい、だがお前が俺に付き合う理由がない』
『だから選べ! 俺に従うか、俺を拒むか……従うなら、お前は俺の剣で俺のものだ』
 彼の問いかけに、月夜は彼の手を取ることで答えた。そして「漆髪月夜」の名をもらい、月夜は刀真のものとなった……。

 たまたま空京公園の近くを通りがかったミシェールは、そこで花琳に見つかってしまった。
「可愛い! 写真よりもすごく可愛いよ、ミシェールちゃん!」
「……あ、あら、そう?」
 と、ミシェールは地上に降り立ち、少し得意げな顔をして見せた。
「うん、これなら充分だねっ。ねぇ、ちょっと案内したいところがあるの」
 と、花琳は彼女の腕を取って歩き出す。
 どきまぎしながらミシェールは後ろを振り返ったが、来栖たちは何も言わなかった。
 花琳に連れて行かれた先には、一人の青年がベンチに寝かされていた。そのそばにいるのは彼女と思しき女の子だ。
「連れてきたよ、お姉ちゃんたち」
 朔は妹の隣にいる人物を見とめるなり、煮え切らないヤチェルのために近づいた。
「ふむ……可愛い女の子は傷つけたくないが、さっさと解除法を教えてもらおうか?」
 と、ミシェールを問い詰める。