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アラン少年の千夜一夜物語

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アラン少年の千夜一夜物語

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「こんばんはー!」
 元気よく部屋の中に入ってきたのは遠野 歌菜(とおの・かな)だ。
「おお♪ 今日の語り手だな。待っていたぞ」
「えへへ。そんな風に言われると嬉しいな。じゃあ、すぐにお話始めるね」
「うむ!!」
 歌菜はアランの頭をぽふぽふと撫でてあげてから、お話を始めた。


『娘と魔法のランプ』



 むかしむかし、ある街に貧しくも明るく元気な娘(歌菜)がおりました。
 ある日、昼の仕事が終わり歩いていた娘を呼び止める者(百日紅 火焔(さるすべり・かえん))がいました。
 その者は大変みすぼらしい恰好をしています。
「ちょいとそこの可愛らしいお譲さん。オレの頼みごとを聞いてはもらえませんでしょうか?」
 少しだけ悩んだ娘でしたが、その者があまりにも必死だったので、頼みを聞いてあげることにしました。
 みすぼらしい恰好の者が連れて行ったのは街の近くの砂漠。
 砂以外は何もないところです。
「こんなところで一体何をすればいいの?」
 ちょっとだけ怖くなった娘は腰が引けています。
「な〜に……、お使いをしてきて欲しいだけですよ。そうだ、これはお守りです。何かあったら使うと良い。ただし、帰ってきたら必ず返してくださいね」
「ええ、わかったわ」
 娘が頷くのを見ると、みすぼらしい恰好の者は娘に指輪を渡しました。
 そして、指輪をはめたのを確認すると魔法の言葉を言いました。
 すると、娘の立っていた場所にぽっかり穴が開いたのです。
 落ちていく娘にみすぼらしい恰好の者が叫びました。
「奥にあるランプです。ランプを必ず取ってきてください!」
 娘は地面になんとか着地すると、横に延びている穴を進んでいきます。
 その奥にあったのは、砂で出来た台座の上にある古びたランプ。
「こんなのが必要だなんて……変わってる人なのね」
 娘はランプを持って、なんとか穴を上っていきます。
 出口ではあのみすぼらしい者が今か今かと待っていました。
「さあ、早く渡してください!」
 その鬼気迫る様子に娘は思わず後ずさり……ではなく、顔面パンチを繰り出していました。
「顔が近いのーー!」
「ぎゃふん!!」
 みすぼらしい恰好の者はふっとばされてお星さまになってしまいました。
 娘は悪い事をしたなと思いましたが、もうどうする事もできないので、家に帰ることにしました。
 その帰り道で街を歩いている一人の美青年(月崎 羽純(つきざき・はすみ))に出会ったのです。
 その様子はなんだかふらふらしていて危なげ。
 思わず娘は声をかけていました。
「大丈夫? もしかしてお腹が空いてるの?」
「ああ、実はここ3日何も食べていない……」
「大変! うちに来て! ごちそうするよ」
 娘は美青年を家へと招待しました。
 そこで娘は得意の料理をたくさんごちそうしたのです。
「うまい……こんなにうまい料理は初めてだ。ぜひ俺のお嫁さんに。掃除なら俺がする」
 そう娘の家はかなり散らかっていたのです。
 しかし、それでも良いと、美青年は娘の手を握りしめプロポーズしてきました。
 実は娘も美青年に一目ぼれをしていたのですぐに頷きました。
 青年は親に会ってほしいと娘を連れ出しました。
 なんと美青年が案内したのはこの国のお城でした。
 そう美青年は王子だったのです。
 外に出ていたのはお妃探しをするためでした。
「そんな一般庶民は認められない……ですの。あなたが留守にしていた間、嫁候補なら見つけておいた……ですの」
 女王様(陽炎 橙歌(かげろう・とうか))がそう言うと、奥からどこかの国の美しい姫たちが現れました。
「さあ、その汚らしい娘をたたき出せ……ですの」
 女王様の言葉に衛兵たちが動き、娘をつまみ出そうとします。
 しかし、それを見た王子が娘を衛兵たちから守ったのです。
(ああ、この人のそばにいたい……!)
 娘がそう強く願い、手を強く握り合わせた瞬間指輪がこすれ指輪から魔人(紫水 青太(しすい・せいた))が現れました。
「ご主人様お呼びでしょうか? なんでもおっしゃってくださいね。ご主人様の願い、叶えますっ!」
「そ、それじゃあ……私をお姫様にして! この人とずっと一緒にいたいんです!」
「うーん……僕だけの力じゃ国を作る事はできないな……あ、もしかしてそこに持っているのは魔法のランプ? それをこすってください」
 娘は持っているのすら忘れていたランプを取り出し、こすりました。
 すると中から妖艶なランプの魔人(紫水 蝶子(しすい・ちょうこ))が現れました。
 魔人たちは砂漠に新しく国を造り娘をお姫様にしたのです。
 それならと女王は娘を認めました。
 娘と王子は末永く幸せに暮らしましたとさ。
 めでたし、めでたし。


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「余の知っている魔法のランプの話とは違ったが面白かったぞ!」
「それは良かった♪ じゃあ、羽純くんと待ち合わせしてるからもう行くね」
 歌菜はそそくさと部屋を後にした。
「……なんだ? もしかしてラブラブ話を聞かされただけなのか?」
「かもしれませんね」