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必ず生きて待っていろ

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幕間その二
 
 作業区画のすぐ近くに設置された警備員の詰め所、今となっては無人である筈のこの部屋には今、教導団の軍服を着た一人の若い女性が立っていた。
 彼女は端末の前に立つと、軍服の内ポケットから、大事そうにしまいこんでいた写真を取り出す。彼女とその夫と思しき若い男性、そして、彼女たちの子供と思しき少年が写った写真を見つめながら、彼女は静かに呟いた。
「これで……やっと」
 呟き終え、彼女が端末に手をかけようとした時だった。
「女性の方がいると思って来てみれば、とんでもない現場に遭遇してしまいましたね」
 あくまで柔らかい口調で、世 羅儀(せい・らぎ)は声をかけた。
「あなた見た事ありますよ。確か、イリーナ・阿部中尉でしょ?」
 その問いかけに、若い女性――イリーナはゆっくりと振り返る。
「よりにもよってこんな時にこんな所で何してるんですか――なんて聞きはしませんよ」
 やはり柔らかい口調を崩さずに、羅儀は語り掛け続けた。
「いくら犯人が鏖殺寺院の凄腕工作員とはいえ、いくらなんでも教導団の施設に潜入するなんて無茶だ。だから――内部に手引きした者がいる。自然な推理ですよね? しかし、今にも焼け落ちそうだっていうのに残ってるなんて、何かの証拠でも消したかったのかねえ」
 言いながら羅儀は取り出した拳銃をイリーナに突きつけていた。それに対し、イリーナは躊躇なく袖口から取り出した何かのスイッチを押しこむ。
「やめろッ!」
 羅儀が引き金を引くよりも早く、イリーナのすぐ近く――端末のある場所で爆発が起こる。それによって、端末は木端微塵に破壊されたが、付近にいたイリーナもただではすまなかった。
「大丈夫かッ!」
 一目で重傷とわかる怪我を負って倒れたイリーナに羅儀が駆け寄るも、当のイリーナはやり遂げたような満足した表情を浮かべている。
「まだ息がある……死なせやしないぜ!」
 歯噛みしながら呟くと、羅儀はイリーナの身体を抱え上げた。