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リアクション
黎明華とレティシアがリング中央で組み合い力比べを行う。
「てぇいッ!」
お互いの力が拮抗した状態で、黎明華が自ら解くとレティシアの頭を掴みヒップバットを叩きこむ。
二度、三度と叩きこむとレティシアは動きを止める。
「いくのだ〜!」
黎明華がロープへ走る。ヒップアタック狙いだ。だが、
「甘いですねぇ!」
レティシアが戻ってきた黎明華をキャッチ。そのままバックドロップでリングに叩きつける。
「うあっ!?」
受け身を取りつつ起き上がる黎明華。
「面白いですねぇ、こういうガチなのも」
黎明華を見下ろし、レティシアが笑みを浮かべた。
『試合開始から早くも10分が経過! 攻守、対戦相手が入れ替わりながらも現在まだ誰も脱出者は居ない状況ね!』
『あっという間の10分だったな! けどそろそろ試合は動き出す頃だぜ!』
ヴィゼントの言う通り、試合が動き出そうとしていた。
「はぁッ!」
ラルフのローリングソバットが荒神の鳩尾に突き刺さる様に決まる。
「ぐぅッ!」
呻き声を上げ、身を屈める荒神にラルフがロープへと走るとそのままセカンドロープへと飛び乗った。
このままラ・ブファドーラで荒神に飛びつくのが狙いであったが、そこに誤算が生じた。
「おっと、失礼」
金網の向こう、待機していたアルベールが手に持っていた粉末プロテインをラルフへと投げつける。
「うぉッ!?」
咄嗟に瞼を閉じるが、粉末が目に入り体勢を崩す。そのまま後ろに飛びのき、目が見えないながらも何とかラルフが着地した、刹那。
「そぉらッ!」
顔面目がけ、荒神がトラースキックで蹴り上げる。
「あがッ!」
そのまま荒神はラルフを、水車落としの様に肩に担ぎ抱える。そして飛び上がると、ラルフを首から落下させる。シュバインと呼ばれる技である。
大技が決まったラルフが大の字でリングに転がる。その様子を見ると、荒神はロープを足場代わりに上り――金網に手をかけた。
「よぉいしょっとぉ!」
梓紗が飛び上がると真姫の首を足に挟み、フランケンシュタイナーで放り投げる。
「さーってと……ん?」
起き上がる梓紗の目に入ったのは、金網を上りだしている荒神の姿。他の選手はまだ気付いていないようであった。
「んー……んじゃあたしも逃げるか」
そう呟くと、梓紗はコーナーに上り、金網に手をかける。が、
「えいっ!」
姫星がパイプ椅子で金網をひっぱたく。金網から出ていた指にパイプ椅子が当たり、思わず手を引っ込める。
「痛ッ!? 何するんだよ!」
「そう簡単に終わらせませんよ! 真姫さん立って〜! 立つんだ真姫さん〜!」
「ったく面倒だな……」
上ろうとするとパイプ椅子を構える姫星に、梓紗が困ったように呟く。
「そう簡単に終わっちゃ面白くないよなぁ?」
「あ? ぐっ!」
復活した真姫が腕を叩きつけられ、梓紗が動きを止める。
「さっきのフランケンであたしが沈んだと思った? 甘いねぇ、そう簡単にはいかないよ」
そう言うと真姫はロープを足場にして上り、梓紗の喉を絞める様に掴む。
「こいつは簡単じゃないよ!」
そして、梓紗の身体を持ち上げると自分も飛び、リングへ喉輪落としで叩きつけた。雪崩式で叩きつけられ、梓紗の呼吸が一瞬止まる。
「出たー! 真姫さんの雪崩式喉輪落としだー!」
金網の外で、姫星が嬉しそうにはしゃぎまわる。
「よーし! そろそろあたしも出させてもらおうかね!」
そう言ってコーナーに上り、真姫が金網を掴んだ。
「いっくぞぉー!」
セレンフィリティが掛け声をあげると、観客が沸いた。
「ノー! ノー! やめてほしいッス!」
彼女の足元にいるアレックスが首を振り叫ぶ。足は折り畳まれ、セレンフィリティがリバースインディアンデスロックで固めていた。
今この状況で痛みは無い。あとセレンフィリティが一つのムーブを行う事で、この技が完成する。
「ん〜? やめてほしいの?」
セレンフィリティが振り向きながら、アレックスに問う。ブンブンと、勢いよくアレックスが頷いた。
「ん〜……でもダメ!」
が、それでやめるセレンフィリティではない。
「とうっ!」
セレンフィリティが受け身を取りながら背中から倒れ込む。絡み合ったアレックスの足が曲げられ、膝に激痛が走る。
「――ッ!」
声にならない悲鳴を上げるアレックス。
「よーしもういっちょー行くぞー!」
手を叩きながら観客を煽り、セレンフィリティが再度倒れ込んだ。
「とっどめー!」
起き上がったセレンフィリティが叫ぶと、一瞬溜めてから、勢いをつけて倒れ込んだ。
「――!?」
背中をのけ反らせたアレックスは、そのまま顔からマットに倒れ込んでピクピクと痙攣を始める。
「セレン」
「ん? なーにセレアナ?」
セレンフィリティが技を解き、金網外から呼びかけるセレアナに歩み寄る。
「今脱出しちゃったほうがいいかもよ? 丁度チャンスみたいだから」
セレアナにそう言われ、セレンフィリティは辺りを見回した。
金網を上る荒神と真姫。そして戦いに夢中で気付いていない他の選手達。
少し、セレンフィリティが思案する。逃げるのもいいが、このままあの二人を邪魔するも良し、他の選手達と絡むのもいい。
だが、あまり長くいてグダグダになってしまっては試合は面白くない。引き際も肝心である。
「うーん……そうねー。今の内に逃げちゃおっか」
そう言うとセレンフィリティが金網に手をかけ、ロープを足場にして上りだした。
『荒神選手、真姫選手、セレンフィリティ選手の3名が金網を上る! 妨害が無いから早いね!』
『あっという間に上り切っちまった! 今荒神選手が縁に手をかけ――立った!』
『最初の脱出は彼か。他の2人も上り切ったな』
「おーいアル、例のアレ取ってくれ」
縁に立った荒神が呼びかけると「仰せのままに」とアルベールが何かを投げる。
それは水風船だった。中に液体が入っており、パンパンに膨らんでいる。
割らないようにキャッチした荒神は、
「そぉれ、っと!」
リングへ投げ込んだ。
「んぶっ!」
「あ」
水風船は、レフェリーリリィにナイスヒット。割れた風船の中から溢れた水ではない粘っこい液体が、リリィに纏わりつく。
「……これは何かなー?」
「……ろ、ローションです……す、滑るかなーと思って」
笑顔で問いかけるリリィに、顔を引きつらせて荒神が答える。荒神はこれをリング上にばら撒いて、試合を混乱――面白くさせようと企んでいたのであった。
「下りて来なさい! ぶん投げてやるわよ!」
だが予想外に一発目がリリィにヒットしてしまい、この有様である。
怒りの形相で叫ぶリリィ。
「そ、それじゃみなさん頑張ってー! おいアル、逃げるぞ!」
「中々愉快な展開に持ち込みましたね。狙ったのでしょうか?」
「んなわけあるか!」
「おいコラ待たんかい!」
逃げる荒神とアルベールに、金網を掴み悔しそうに歯を軋ませるリリィ。
その光景を見て、「とっとと逃げてよかった」と密かに思う真姫とセレンフィリティであった。
(残り選手数:9名)
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