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ア・マ・エ・タ・イ

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ア・マ・エ・タ・イ

リアクション

「ごめん。よく分からないけど、こうしたい気分なんだ」
 肩に感じる恋人の体温に、クナイ・アヤシ(くない・あやし)は不思議そうな顔で恋人の清泉 北都(いずみ・ほくと)の顔を覗き込む。
 ほんの少し赤らんだ頬と、うるんだ瞳。
 いつもとは違った恋人の様子に、肩を抱き寄せようとした手を止める。
 そっと頭に手を置いて、撫でる。
「ん……」
 目を瞑り、体を震わせる北都。
 まるで、撫でられることに快楽を感じているかのように。
 かつて触れられる事さえ嫌悪していた、彼が。
(これは、何かの影響なのでしょうか?)
 訝しがりつつも、クナイは手を休めない。
(何か、理由があるにしても)
(今のこの状況を、利用してしまってもよろしいのでしょうか?)
 戸惑っているのはクナイだけではなかった。
 北都本人も、自分の心と身体の有り様に不思議な違和感を抱いていた。
(これって、よく分からない。分からないけど……)
 北都は、自分が感じる衝動に身を任せてみることにした。
 クナイに、触れたい。
 頭を撫でてもらって、キスして、そして……
「ねぇ、クナイ」
 覗き込むように、クナイに顔を近づける。
 恋人の、戸惑ったような視線についくすりと笑みがこぼれる。
「今夜、一緒に寝てもいい……かな?」
「一緒……に?」
 恋人からの言葉に、クナイは息を飲む。
 それはつまり、そういう意味でのことなのだろうか。
 いや、北都のことだから言葉通りの意味なのかもしれない。
 それでも。
(私は、ずるいのでしょうか)
 クナイの、北都の頭を撫でていた手がそっと移動する。
(たとえ何かの影響だとしても、今の言葉が本意ではなかったにしても)
 肩に……腰に。
(この機会を、今を、逃したくない……)
 二人の影が、重なった。