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ア・マ・エ・タ・イ

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ア・マ・エ・タ・イ

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(これは、花粉のせいなんです……)
 御堂 椿(みどう・つばき)は、自分の少し前を歩くマクスウェル・ウォーバーグ(まくすうぇる・うぉーばーぐ)の背中を見つめながら、押えきれない自分の鼓動に動揺していた。
(私の、本意じゃないってウェルさんも分かってくれるはず)
 必死に、自分に言い聞かせる。

 椿に花見に誘われたマクスウェル。
 しかし特に桜に興味があるわけでもなく、ただぼんやりと花を見上げるだけだった。
 ふわり。
 マクスウェルの手に、風になびいた椿の髪が触れる。
(ん?)
 パートナーの様子にどこか違和感を感じたマクスウェルは、椿の顔を見る。
 いつもと変わった様子は見られない。
 しかし、感じる違和感。
 椿の顔は、ほんのりと赤かった。
「椿?」
「ウェルさん……」
(あ、近い)
 そこでマクスウェルは違和感の原因に気づく。
 距離感だ。
 いつも感じていた椿からの距離。
 今はそれが、どこか自分に近くなっているのだ。
「ウェルさん……あの、人がいっぱいいますね」
「ああ」
「はぐれないように、手を繋いでも、いいですか?」
「ん? あぁ」
 顔を赤らめて近づいてくる椿の様子に首を傾げながら、自分の手を差し出すマクスウェル。
 おずおずとその手を取ると、そのままマクスウェルの隣に立つ椿。
 そっと、マクスウェルの腕に頭をつける。
「おい、椿?」
「もう少し、このままでもいいですか……?」
「……あぁ」
(……まあ、こんな日もあるのか……な?)
 椿の行動に首を傾げつつ、さらりと受け入れるマクスウェルだった。

(花粉のせいなんです……)
(だから、ね。私の本心は、ウェルさんには気づかれていない筈)
(今この時だけは、ウェルさんとこうしていさせてください……)
 マクスウェルの体温を頬に感じながら、椿はそっとため息をつく。
 どこか切なげに。