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【●】歪な天使の群れ

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【●】歪な天使の群れ

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第八章

「動きがとまった……?」
 ヴァーチャーと戦闘を繰り広げていた面々は、突然動きを止めたヴァーチャーを不審げに見やる。
「武器や兵器に頼っとるから肝心な時にやらかすんじゃボケェ!」
 裕輝が飛び出し、生身で攻撃にかかる。
煉は雲耀之太刀をヴァーチャーに叩き込むと、その状態で機体を固定する。
「っておい煉、シロとクロ連れてなにする気……」
「機体任せた!」
「ってうお!? 外出て何する気だよ!?」
 エヴァに操縦を任せると、煉は機体から飛び出した。
 空中で二つのギフトを身に纏い氷雪比翼で飛行。
 いくつもの技を複合させた奥義、真・雲耀之太刀でヴァーチャーに飛び込んでいく。
 ヒット&アウェイで即座に離脱したところに、唯斗が残しておいた大筒を至近距離で直撃させる。
「あれは……」
 ヴァーチャーとともに、その中にあった小さな珠が砕け散って消滅するのが見えた。
『あーあ……終わっちゃった――』
 声もまた形を失って、やがて、全て消えた。

(時々思うんだけどよ、煉って絶対あたし以上にぶっ壊れてるよな。……無茶しすぎだ、バカ)
 エヴァからのテレパシーに、煉は苦笑いをこぼす。
(謎の天使のデータに、エクス・カリバーンや他のイコンの戦闘データ。これだけデータが取れれば、今回の収穫としては十分でしょう)
 ヴァーチャー消滅を見届けた十六凪は満足げに頷いた。

 少し離れた空域で天使たちを抑えていた面々の目の前で、天使たちが静かに消えていく。
「装置が破壊されたのか……」
 
 天使たちの慟哭が静かに薄らいでいく。
 戦いを終えたものたちは、それぞれの想いを抱えながら戦場を後にするのだった。
 
「戦場で倒れた者に敬意も示さず、墓穴を掘り返しては死体を辱める事しか出来ぬ狗畜生にはお似合いの姿じゃな」
 『手記』の激情を抑えた冷たい声が響く。

 破壊された装置の隣では、刺さった黄のスタイラスに天の炎をかけられた、オーソンが炎に包まれていた。
(今回はここまでのようだな)
 言い捨てると、オーソンは装置を操作し、凄まじい音と共に一瞬にしてその場から姿を消した。

「転移装置……」
 美羽が悔しそうに呟く。
「今の衝撃で洞窟に負荷がかかっている。すぐに脱出を」
 ダリルの提案とほぼ同時にルカルカが動き、脱出路の確保を行っていた。

 洞窟の中で、呼雪の鎮魂歌が静かに響き渡る。
 天使たちが静かに眠れるよう、ギターを爪弾き穏やかで優しい曲調と詩が紡がれていく。
「愚かだなんていうのは簡単だけど……我が身を投げ打って、一心に手を伸ばそうとした姿は、笑ったり出来ないよ……」
 ぼそりと呟いたヘルの隣で、ラファが祈るように瞑目する。

「みなさん、本当にありがとうございました〜……」
 洞窟の外に皆で脱出し、安心して力が抜けたのか、ふにゃっとしてエメネアが感謝を告げる。
 美羽とベアトリーチェ、雪が支えるようにそばに立つ。
「全員、無事外に出たようですよ」
「騒がせたのぅ……」
 ラムズが人員を確認すると、『手記』が洞窟内に炎を放った。
 真っ暗な洞窟の中の様子を窺うことはできない。
 だがきっと、天使たちはこれで浄化されるだろう。
 そう信じることしかできなかった。

「天使さんたち、これで静かに眠れると思いますぅ」
 
 エメネアの言葉を合図に、一人、また一人と帰っていく。
 戦闘の傷跡が色濃く残った景色を見つめたエメネアの耳には、まだ黒い犬の笑い声が響いているように感じられた。

担当マスターより

▼担当マスター

花井詠巳

▼マスターコメント

こんにちは。花井です。
この度は「【●】歪な天使の群れ」にご参加いただきありがとうございました。
公開の遅延誠に申し訳ございません。
一部の方には称号を付けさせていただきました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。