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遅咲き桜と花祭り~in2022~

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遅咲き桜と花祭り~in2022~

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(ルカ母さんにちょっと早めの母の日のプレゼントを……)
 そう思いながら、母と呼ぶルカーディア・バックライ(るかーでぃあ・ばっくらい)を始め、パートナーのフィンラン・サイフィス(ふぃんらん・さいふぃす)と、シベレー・ウィンチェスター(しべれー・うぃんちぇすたー)たちとも花祭りの会場を訪れたアクロ・サイフィス(あくろ・さいふぃす)は、会場内を歩いていた。
 歩きながらその思いをフィンランとシベレーの2人に話してみると、彼女たちも同じようなことを考えていたようだ。
「さて……あそこでネックレスを作れるようですので……せっかくですからみんなで作ってみましょうか」
 入り口で貰った会場案内の下、歩いてきた先には、アクセサリー等の作成コーナーがある。
「早いですが、母の日プレゼントというのでカーネーションがあればいいのですが……」
 様々な花のトップが並ぶ中、アクロはカーネーションを探した。
(母の日……プレゼント……何だか嬉しいね……)
 その様子を見ながらルカーディアはそっと頬を緩める。
「あったあった」
 カーネーション1つとっても、様々な色が用意されていて、4人は思い思いの色のトップを選ぶと、鎖を一緒に受け取って、作業テーブルの方へと移る。
 子どもでも作れるようにと作り方は簡単で、シベレーはあっという間に作り上げてしまう。
(アクロ様も意外と手先が器用なのですね)
 彼女同様、早々に仕上げたアクロの手元を見て、シベレーはそう思いながらも他の2人を見遣った。
「えっと……あれ?」
「フィンちゃん……手伝おうか?」
 意外と不器用だったらしく、手こずっているフィンランの様子に、次に仕上げたルカーディアが苦笑を口の端に浮かべつつ訊ねる。
「ルカ母さん〜」
 泣きそうになりながらフィンランはルカーディアに助けを求め、皆から遅れながらもネックレスを作り上げた。
 皆が作り終えると、一行は作成コーナーから少し離れる。
 そして、それぞれが作ったネックレスを首へと掛けてみた。
「ルカ母さんやシベレー、フィンは似合ってますね」
 アクロは皆の様子を見て、そう告げる。
「ルカーディア母様はやっぱり似合っていますね」
 シベレーもルカーディアが中でも一番似合ってると思って、微笑みながらそう口にした。
「兄さんも似合ってるわねー」
「みんな……似合ってる……」
 フィンランがアクロに言い返す隣で、ルカーディアも皆を見渡して小さく頷きながら告げる。
「こういう思い出も…大切にしたいですね。カーネーションのネックレスと共に」
 アクロの呟きに、皆が頷き合う。



 パートナーであるフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)へと想いを寄せるベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)は、鈍感で勘違いをしてしまっている彼女へと先日、想いをぶつけていた。
 けれども、それ以来返事を保留にされている――というより、話題自体を避けられているため、聞けず仕舞いだったのだが、花祭りの話を聞き、良い機会だと彼女を誘って来た。
(これは任務なのです)
 そう言い聞かせて着いてくるフレンディスであるが、ベルクと一緒に居るだけで、彼を意識してしまい、感情の抑制が効かず、獣特有の鋭い感覚が身に付く超感覚を常時発動させてしまっている状態だ。
 周囲からしてみれば、平静で居られていないのがバレバレであるが、鈍感な彼女はそれさえも気付けずに居た。
 そうして、2人連れ立って花祭りの会場を歩く。
「作成コーナーとかあるぜ。行ってみるか」
 通りの先に、幟を見つけたベルクは、フレンディスの返事も待たずにコーナーへと向かう。
(誕生日は8月17日だよな。っつーとミモザか……偶然かもしれねぇが、やっぱ紫なんだな。定番じゃねぇからなさそうだが……無かったらまぁ……、似合いそうなのを探すか)
 そんなことを思いながら、ベルクはミモザを探す。残念ながら本来のミモザは置いておらず、フサアカシアである方のミモザがその日の誕生花として紹介されていた。
(……これでも似合う、か?)
 ちら、と横目でフレンディスを見て、黄色いミモザを見遣る。
 似合いそうかと判断して、ベルクはそれを手に取った。
「ま、こーやって散々一緒にいる事がデートっつー自覚もねぇ鈍感だから仕方ねぇが……。フレイがどう思おうが、俺はいつまでもお前のマスターのままでいるつもりもねぇからな?」
 器用にネックレスを作りながら、ベルクは告げる。
 フレンディスはただ彼の様子を見ていただけに、突然告げられた言葉に、超感覚で生えた金狼の耳尻尾を揺らした。
「……マスターは、本当に、私などで良いのでしょうか?」
 暫しの沈黙の後、意を決したようにフレンディスが口を開く。
「何だって?」
 追求などせず、彼女の口から語られるのを待っていたベルクも突然の問い掛けに思わず、問い返してしまう。
「先日の仰ってくださったこと、嬉しくもあり、恥ずかしくもあったのです。それで思わず逃げて、しまいました……。それに、最初から言っていたと仰って、今まで気づかなかったことが申し訳なくて、そう思うと、私などで良いのかと考えてしまって……」
 そう告げているうちに、次第に焦ってきて、口早になっていく。
「深く考えんでも、お前がいいと言ってるだろう?」
 言い返すベルクは、丁度ネックレスが出来上がったらしく、留め具を外して、フレンディスの首元へと手を伸ばした。
「嬉しかったってことは、求めてもいいってことだよな?」
「それは、その……!」
 ネックレスを彼女の首元に付けながら、訊ねるベルクに、フレンディスは頬を染めて声を上げる。
「場所、変えるか」
「マ、マスター!!」
 彼女の手を引いて、ベルクは作成コーナーを出て行く。
 フレンディスは益々頬を赤らめながら、彼を呼ぶ。
 少しばかり進展したようだけれど、彼女が彼をマスターでなく恋人として意識するには、まだ時間が掛かりそうであった。



「ネックレスが作れるみたいですよ? 折角ですし三人でお揃いのを一緒に作りませんか、使う花は薔薇で色はそれぞれが好きな色にするんです」
 作成コーナーに辿り着くと、碧葉がそう提案をした。
「ネックレスね、まあ良いわよ。そこまで面倒そうじゃなさそうだし」
「お揃いのネックレスですか? 良いですね」
 緋菜白花がそれぞれ頷く。
「私はこのピンクの薔薇にします。最近のお気に入りなんですよ、この色」
 早速、ピンクの薔薇をを手にして碧葉が告げる。
(それになんか緋菜みたいな感じがしますし……)
 心の中で、そっとそう付け足して。
「それでは私はこの白でお願いします。ひーちゃんとあおちゃん、お2人に付けて貰った名前でもありますから、この色がとても好きなんです」
 微笑んで、白花は白い薔薇を手にした。
「それじゃ私は青いのにしとくわ。3人とも色違うし、これでいいわね?」
 最後に緋菜が選んで、3人は作業テーブルへと移る。
「緋菜は何で青色にしたんですか?」
 ネックレスを作りながら、碧葉が訊ねる。
(碧葉にみたいな感じがした、なんて言えないもの……)
「……別に、何となくよ」
 本心を隠しつつ、少しだけ彼女から視線を逸らしながら、緋菜は素っ気無く応えるのであった。



 家族の親睦を深めるため、リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)は息子のユウキ・ブルーウォーター(ゆうき・ぶるーうぉーたー)、そして妻のレティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)の3人で花祭りの会場を訪れていた。
 作成コーナーへとやって来た3人は早速、それぞれ思い思いに花に関するアクセサリーなどを作り始める。
 リアトリスは、桜の香りがするピンク色の香水と、桜の花のネックレスを作る。
(踊る時には丁度良いでしょうしねぇ)
 そんなことを思いながら、花のブローチを作るのは、レティシアだ。
(パパとママににどんなのを作ってあげようかな♪)
 ユウキはたくさんの花を前に、何を作ろうかと悩む。
 暫し考えた結果、桜の花と枝を使った花冠を作ることを決めた。