薔薇の学舎へ

波羅蜜多実業高等学校

校長室

葦原明倫館へ

花嫁探しの仮面舞踏会

リアクション公開中!

花嫁探しの仮面舞踏会

リアクション

 
 


●いよいよ花嫁探し!



「まったく、こんな場所で暴れるなんてなんてバイオレンス、優雅じゃないねえ〜」
さて、敵の脅威はひとまずなくなったものの、自分を襲ってきた男達を倒す千代達を見て、気分を悪くした御曹司。
「涼司〜、今日はお招きありがとう♪ ふふ、ルカのドレスは似合ってるかな?」
「あ、ああ、まあな」
 御曹司と仲良くしようとルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は、涼司に御曹司を紹介してもらい、仲良くなろうとする。


「パラミタまで来て花嫁探しなんて、偉いよね〜。ルカは偶然出会ったの。教導管理の花嫁を紹介して貰った人もいるよ」
「はっ?」
 突然発せられたルカの言葉に御曹司とダリルの顔に疑問符が浮かぶ。
「花嫁は女の人がいいの? 男の人がいいの?」
「ルカ、それは多分花嫁違いでだな……そっちは別に探していないと言うか」
「あ、ごめんね、ダリルは花嫁って呼ばれたくないんだよね?」
「いや、そうじゃなくって……確かに種族名は嫁だが、男性型なので心理的に嫁呼称には抵抗があるけど……」
 どうやらルカは剣の花嫁を探しにきたと勘違いしているようだった。


「そうだ、可愛いって言ったら戦車やイコンも可愛いよね」
「いや、御曹司の趣味はともかく、ルカの趣味はどうでもよくてだな……」
「あ、そうか、戦車じゃなくて人だよね。人間だと外見不問だけど筋肉があればいいよね。筋肉がなくても何かひとつ、秀でたところがあればいいよね」
「……いや、ルカ、今は何の話をしている……?」
 必死にコミニュケーションを取ろうとするルカのずれた発言に、的確に突っ込みを入れていくダリル。
 だけどそのずれた言葉は、何故か御曹司の心を打ったようだ。


「僕の感性は受け入れてもらえないんだ。だからパラミタまで来ても婚約者が見つかりそうもなくて……」
「う〜んそうか、お金持ちも大変なんだよね。暫く逗留して探す? 一生の問題だし家族の説得なら手伝うよ」
 御曹司と仲良くなったルカは、悩みを聞いた後に手を差し伸べる。
「楽しくしていたら、きっと自然に見つかるよ。それまで、さ、仲良くなったんだから折角だから私と踊ろうよ」
 御曹司は少し躊躇いながらもその手を握り、微笑んだ。


 御曹司とルカが踊っている一方、会場の中で困った顔で立ちつくしている女性がいた。
 高島 恵美(たかしま・えみ)はパートナーのミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)に無理矢理、婚活の為に連れてこられたのだ。
「困ったな〜。そんなに乗り気じゃないのよねぇ……」
「だめ、そんな消極的じゃ。いつまでもミーナのことばかりじゃなくて恵美さんも幸せを求めてもいいと思うの!」
「う〜ん、私は別にミーナちゃんが幸せになってくれたら、それでいいんだけど……」
 強引なミーナの言葉に困り顔を見せながらも、渋々と辺りの男性を見ていく恵美。


「ほらほら、あの仮面の人なんてかっこよさげだよ!」
「全員仮面なんだけどぉ」
「うわっ、背が高いよね、男の人でも女の人でも、年上の背が高い人って憧れるよね!」
「う〜ん……」
 ミーナが色々と相手を勧めるが、高貴な雰囲気の男性には興味がないのか、あまりいい返事をしない恵美。
「だめだよ、そんなことじゃ。それとも恵美は女の子の方が好きなのかな?」
「ふふ、そうかも。私もミーナちゃんと一緒にいる内に、女の子が好きになっちゃったかなぁ」
「あわわっ、そういう冗談を言うと本気にしちゃうよ〜?」
 冗談を言い合いはするが、恵美はやはり本気で相手を探しているようではなかった。
 その恵美が、ふとある男性に向けて、その視線を止めた。


「あの人、凄い頑張ってるねぇ」
「え? あの人って、あの、配膳とか案内で走り回っている人?」
 裏方で一生懸命動き回っている男性は、恵美の視線に気付いたのか、こちらに向かってくる。
「あのお客様、何が御用ですか?」
「あら、え〜と、その……」
 まさか貴方が気になって見ていたなんて、言葉に出来ない。
 恵美は真っ赤になりながらも、男性と話をする。
「その、素敵ねぇ。私、一生懸命働く人って好きで……あらあら、私ってば何を言ってるんだろ……」
 そんな恵美から離れ、遠巻きに見物するミーナ。彼女は満足そうに二人の様子を見ながら、会場にある料理を食べ尽くす作業に入っていた。
「うんうん、青春だねっ」


 宴もたけなわになるが、御曹司のお相手は一向に見つかりそうにない。それもそのはず、この会場に来ているのはほとんど一般的な考えで相手を探している人間ばかり、外見も考えも至って普通の男女ばかりなのだ。
 その上、御曹司が時折大きな声を上げたりして奇行を繰り返しているので、みんな話しかけづらくて敬遠してる。
「ユノは御曹司を誘いに行かぬのか?」
 リリ・スノーウォーカー(りり・すのーうぉーかー)の言葉にユノ・フェティダ(ゆの・ふぇてぃだ)はぶんぶんと首を振る。
「ないわ〜、あれはないわ〜。幾ら政略結婚でも限度があるんだもん。あ、でも、シュシュだったらお見合い相手に丁度いいかも?」
 ユノは思いついたように会場から飛び出ると、すぐに、なんと花の妖精を連れて帰ってきた。


「虫が大好きな変わり者だから、趣味が合ってうまくかもしれないもん」
「虫愛ずる姫君か…。確かに意外とうまく行くかもなのだ」
 ユノの行動に頷くリリだが、すぐに不思議そうな顔をする。
「だが、あちらの御曹司も奇人変人、面倒くさいだろうに、何故世話を焼くのだ?」
 ユノはちっちと指を振ると、胸を張って言った。
「リリちゃん分かってないなあ。ここで作ったコネが後々効いてくるんだよ。情けは人の為ならず、だもん」
 早速、テーブルの近くで「お〜、我が愛しき妻よ、いずこに〜」と叫んでいる御曹司の元へ、シュシュを連れて行く2人。
「お、おお! その虫食いだらけのキャベツ頭のお方は!」
 思った以上に、キラキラとした目で御曹司は食いついてきた。
「こ、このようなビューテホーな方、見たことがない。是非、僕と一緒に……」
 御曹司が花妖精の手に口付けをしようとしたときだった。


「ちょ〜っと待ってヨ。ミーを差し置いて話を進めたら駄目ネ!」
 キャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)の登場で、何故登場してきたかよりも、その格好に凍りつくリリ達。
 キャンディスは胸元(?)を強調したイブニングドレスに羽マスク、マスコットの立場を隠した完璧な変装(自分ではそう思ってる)で華麗に上空から飛び降りてきたのだ。
「御曹司のハートを射止めるのはミーね!」
 キャンディスは今夜の仮面舞踏会の噂を裏の情報網で聞きつけ、茅ヶ崎 清音(ちがさき・きよね) が止めるのも聞かずに、無理矢理1人(1匹)でこの会場にやってきたのだ。
「お、おお! こちらも更に素敵なお方! 是非、僕の物に!」
 跪き、キャンディスに礼をする御曹司。
 キャンディスは不敵に笑うと、会場に用意された食事をばくばくと食べながら言った。
「2022年冬季ろくりんピックが終わり、ちょうど休憩が必要なのヨネ。鋭気を養うには、恋と食べ物で胸を満たすのはうってつけなのヨネ。ほら、御曹司だけでなく会場の男性の目がミーに釘付けヨ」
 突然現れ、既に勝利宣言のような高笑いをするキャンディスに、リリは黙っていない。


「ちょっと待て、先にうちのシュシュが御曹司の求愛を受けたのだ。横槍はやめて欲しいのだ」
 リリの言葉に、当然、ユノも援護をする。
「そうそう、こういう美味しい機会に失敗したら先行投資……もとい、シュシュの幸せが掴めないんだもん!」
「何を言ってるのヨ。恋は奪い合い、戦争ネ。美しいものが最後に勝ち残る、これが世の中の摂理ネ」
 たちまちの内に火花を散らす、ユノ達とキャンディス。
 肝心の御曹司はその熱い言い合いに目をぱちくりとさせていたが、ふぁさと髪をかきあげると笑った。
「ふっ、心配しなくともレディ達(仮)。僕は一夫一妻制なんて古い時代の遺産だと思っているんだ。今この場で、シュシュさんとキャンディスさん、お2人との結婚式を挙げようじゃないか!」
 おお〜〜!っと一斉に沸く会場内。形はどうあれ、結婚というめでたいイベントに、全員が熱烈なエールを送る。……涼司以外は。


「おいおい、これで本当に結婚したら、俺がかなり怒られるんだが」
 そんな彼の心配はよそに、何処で準備したのか花嫁姿で現れるシュシュとキャンディス。ついに御曹司の悲願が達成するかと思われた。
「それじゃ、2人共。僕と誓いの熱いキスを、むちゅ〜〜……ぎゃっ!」
 御曹司の後頭部を小突く影。その者は、なんと御曹司のお付きの従者の守護天使だった。
「せめて人間の相手をちゃんと選んでください。さ、お坊ちゃま、冗談は程ほどにして、きちんとした婚約者候補を探しにいきましょう」
「い、いや、僕は至って真面目に選んでだね!? あ、引っ張らないで〜〜〜!」
 ずるずると引きずられ、会場の奥へと消えていく御曹司と従者。それを見て、涼司は半眼でぽつりと呟いた。
「……結局、今日の仮面舞踏会は何だったんだ……」




 こうして、麗しき仮面舞踏会は無事(?)幕を下ろした。
 以降、しばらく経つが、御曹司が結婚したというニュースは聞いていない。
 面倒くさいのは2度と御免だと、溜息をつく涼司だった……。


担当マスターより

▼担当マスター

浮浪

▼マスターコメント

 こんにちは、浮浪です。はじめましての方ははじめまして、お久しぶりです。
 今回は恋愛ジャンルを選んだのですが、護衛任務よりのアクションが多かったですので、結局ギャグとアクション性が強いシナリオになっちゃいました。
 いえ、楽しんで書けたので全然いいんですどねっ。
 どうでしょうか、きちんとお望みのリアクションになっていましたでしょうか?
 もし感想などがあれヴば、掲示板を覗きますのでどんどん感想(良い点、悪い点関わらず)お聞かせください!
 次回の参考にさせていただきます!
 また、次に書いて欲しい希望ジャンルなども、もしあれば教えていただければ、参考になります。
 それは次回も宜しくお願い致します!