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リアクション
廊下。
「こらこら、お転婆はだめだぞ」
色眼鏡と匂いの影響で錯乱と幻視幻聴を患った司は兎のぬいぐるみを妹と妄想して楽しそうに世話をしながら追いかけていた。物を投げて壊せば、甲斐甲斐しく拾ってごみ袋に片付けていく。
その時、ぬいぐるみ捜索をしていたレキとカムイに遭遇した。
「見つけたよ」
レキは兎のぬいぐるみがこちらを振り向くよりも素早く『財天去私』、黄昏星輝銃の柄で殴り伏せ、動きを封じてから消臭スプレーをかけて大人しくさせた。
「兎ちゃん捕まえた。キミも綺麗に洗ってあげるからね」
優しく汚れた兎のぬいぐるみを抱きながら言った。
「何してるんだ。妹が苦しがってるから離れろ」
妄想を患っている司の声が飛ぶ。司には妹がレキの胸で圧死寸前に見えているのだ。
「い、妹?」
予想外の言葉にレキは聞き返す。
「今、助ける」
司はレキに答える事なく近付き、兎のぬいぐるみを取り返そうとする。
「やめてよ! この子はボクが助けるんだ!!」
当然、レキは力一杯抱き締め離さない。
「離せ!」
「離さないよ!」
レキと司の攻防が永遠と続く。
「火?」
何とか止めようとするカムイが周辺のごみが燃え始めた事に気付いた。
「苦しんでる人間に見えたからつい燃やしちゃったよぉ〜☆」
ミステルが樹海の根で『爆炎波』を使った。
ここに最悪な連鎖。
「ワン」
ライターを持った犬のぬいぐるみが現れ、ごみ袋に火を付けた。
「……火の海ですよ」
思わず声を上げるカムイ。
「火の海、サイコー!」
ミステルは愉しそうに言いながらもっと賑やかにしようと『爆炎波』を放とうとする。
そこにシオンが
「回収、回収」
壊されないうちに色眼鏡をそっと回収してミステルの『爆炎波』を阻止した。
また遊べそうだと思い、色眼鏡を片付けた。
「な、何でこんな事に!? 何かぼんやり見えるんですが」
ようやく正常に戻った司は周囲を見回し、唖然とする。色眼鏡の影響は消えたが、匂いの影響は残っていた。そのためはっきりと見えていた妹の声や姿はぼんやりとなった。
「犬君が逃げるよ!」
レキは逃げて行くライターを持った犬のぬいぐるみを指さした。追いかけたいが、今の状況も何とかしなければならない。動くに動けない。
しかし、助けがやって来た。
「セレアナ」
「分かってる」
セレンフィリティに促されるよりも早く周辺の炎を全て『氷術』で凍らせた。
ごみ処理に回っていたところにたまたま遭遇したのだ。
「……大丈夫?」
ただ事では無い様子にたまたま近くを通っていたローズも駆けつけた。
ちなみにシンには先に浴場に行くように言ってある。
「何かぼんやりと少し吐き気が」
司は幻視幻聴と今感じ始めている吐き気を訴えた。
「少し待って」
ローズはすぐに『ナーシング』で癒した。
「……犬君」
レキは困ったようにぬいぐるみが逃げた方向を見ていた。