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リアクション
古城入り口。
匂いの原因を断つ事を目的に動いている河城 和命(かわしろ・わみょう)と女雨 玉小(めう・たまこ)。朋美達がある程度ごみを回収し道を作ったとは言え、まだまだ普通の家にはほど遠い。
「換気をして少しはマシになったが、発生源を断たないとな。そうすれば他の奴らが手際よく救出してくれるだろ」
和命はそう言いながら城内に入り、進む。当然、他とは別の場所を行く。道中のごみもしっかりと回収している。
「そうだね。酷い有様」
玉小も同じようにごみを回収しながら進んでいるが、拾っても拾っても変わらない様子に息を吐く。
歩き回ってしばらくしてドアの開いた部屋の前で女性が倒れているのを発見した。見覚えの無い顔、ササカから聞いた特徴との一致からすぐに正体は分かった。
「……おそらくオルナだ」
みんなとは違う場所を探しながら行ったためか早くオルナを見つける事が出来たようだ。
「……助けないと」
玉小がこくりと頷いた。
「……だいじょ」
和命が声をかけようとした瞬間、部屋からナイフや本が飛んで来た。
「危ない!」
玉小が『光条兵器』で飛んでく来る物を叩き落とし、身を守るためドアを閉めた。
「離れよう」
玉小が相手をしている間に和命が倒れているオルナを抱えた。
二人は急いでその場を離れた。
ちょうど、他の救援者や実験室掃除組がやって来た頃だった。
「オルナ!」
「無事ですか」
ルカルカと舞花がオルナを抱き抱えている和命に駆け寄った。
「……玉小が発見したんだが、状況が状況だけに」
和命が二人に話した。発見した手柄を玉小に譲っている。
「……状態はどう?」
玉小がダリルにオルナの状態を訊ると確認次第ダリルはすぐに答えた。
「……城内に漂う匂いのせいだろう。眠っているのはおそらく快眠香」
命に別状が無い事に安心するが、放ってはおけない。オルナの表情にほんの少し苦しさも混じり、寝息も乱れている。
「速やかに治療をしましょう」
放っておけないのは舞花も同じ。舞花はすぐに『蘇生術』と『ナーシング』にフューチャー・アーティファクトの効能も使い治療する。
しかし、オルナは目を覚まさない。
「……目を覚ましません。どうしますか?」
舞花がダリルに意見を求めた。
「表情から苦しみは消えている寝息も一定だ。少ししたら目を覚ますだろう。無理には起こさない方がいい。このまま外に運び出した方が最良だ」
ダリルは、オルナの顔色を見て大丈夫であると確認した。今無理に起こしてもまだ残っている匂いによって同じ状態に陥りかねない。ダリルは忘れずに『テレパシー』でササカにオルナの無事を知らせた。
「目を覚ましたらすぐに風呂にでも入れた方がいいな」
裕樹は城中の匂いが絡みついて汚れているオルナを見て言った。事件原因の匂いだけではなく汗臭い匂いもする上によく見たら汚れている。冷静に考えれば、浴場は魚に占拠されているのだから当然と言えば当然の事。
「すげー賑やかだなぁ」
二人が治療している間、トゥマスは凄まじい音が聞こえてくる実験室について訊ねた。
「熊のぬいぐるみのせいだよ。本やナイフを投げて来たんだ」
玉小は戦闘時にちらりと見た薄汚れた熊のぬいぐるみを思い出していた。
「……実験室にぬいぐるみか。厄介だな」
オルナの状態を確認しながら話を聞いていたダリルが言葉を挟んだ。匂いと薬品だけを処理すればいいと思いきや事態は深刻になっていた。薬品の混ぜ合わせをしだしたら大変な事になる。
「……早く作戦を考えた方が良さそうですね」
舞花も危機感を感じ、みんなに言葉をかける。
「確かに。その前にオルナの事だが」
ダリルがオルナの事を切り出した。運び出す事は言ったが、まだ誰が担当するかは話していない。
「連絡をした後、俺らも周囲の安全と脱出経路の確保に動こうと思うんだが」
和命はそう言いながら抱き抱えているオルナの様子を見た。
「オルナ君の事は心配いりませんよ。私達が外に連れ出します」
ロアがオルナの身柄を引き受けた。
「あぁ、頼む」
和命はオルナをロアに託した。
「任せて下さい」
ロアがオルナを背負った。
その後、和命は救出完了の連絡を入れようとしたが、
「和命は先行っててよ。ボクが連絡しておくから」
玉小が止めて先に行くように促した。
「分かった」
そう言い、和命は早速、脱出経路確保のために先に行った。オルナを連れ出す三人のために。
「オルナさんは無事発見して救出したよ。今から実験室の掃除に入るよ。ボク達は周囲の安全と脱出経路確保に回るから。入浴の準備もお願い」
玉小は法正にオルナの無事と入浴準備について連絡。
「あの、オルナさんを見つけたのはボクじゃなくて和命なんだ」
連絡を終えた玉小はその場にいるみんなにこっそりと真実を話した。
「……見つけたのはあなただと」
舞花が和命の発言と違う事を指摘した。
「本当は和命なんだ。和命は、人付き合いがあまり好きじゃないみたいだから。それでそんな事を言ったんだと思うんだ」
本人ではないので予想でしかないが、言った理由を話す玉小。
「大丈夫。和命には言わないよ」
ルカルカは力強く言った。
「それじゃ」
玉小はこくりと頷き、和命の元に急いだ。
「行くぞ。グラキエス、我から離れるでないぞ」
ゴルガイスは玉小の話を聞き終え、出発の合図を出して先頭を歩こうとした時、最後の捜索隊がやって来た。
「オルナさん! マスター、オルナさん無事です」
フレンディスがロアの背中にいるオルナを発見し、安心の声を上げた。
「……大丈夫なのか」
「あぁ。治療はしてある」
訊ねるベルクにグラキエスが答えた。
「無事で良かったです!」
「……あそこが問題の場所か」
安心するフレンディスとみんなが集まっている場所に視線を向けるベルク。
「熊のぬいぐるみが暴れているそうです」
ロアが簡単に事情を説明した。
「協力が必要なはずであろうから頼むぞ」
ゴルガイスが協力を頼み、和命達が確保した脱出経路を使った。
当然、断るはずもなくフレンディスは急いで行ってしまった。
「大丈夫です。行きましょう、マスター!」
「フレイ!」
ベルクは慌てて追いかけた。ポチの助はまだ夢の中だった。
「無事、住人は助けられたであります! 我々はこのまま最大の脅威が待つ実験室に向かうであります!」
フレンディスと入れ違いに吹雪達が登場。離れた所からロアに背負われているオルナを確認。
「……向かうのはいいけど、かなり危険予感が」
コルセアは実験室に突撃する吹雪にツッコミを入れながらついて行った。
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