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リアクション
第三章 汚部屋住人、救出!
古城入り口。時間を遡らせ、各部屋の掃除が始まる少し前。オルナ捜索隊が動く。
「ほわぁ、別世界が広がってるよ。妖気が見えそう」
ルカルカはあまりの風景に思わず言葉を洩らす。
「……換気のおかげで匂いは薄いはずだが、油断はするな。それよりエクソスケルトンの気密確認は済んだのか?」
ダリルは周囲を見回し、危険度が多少低下した事を確認。
二人はエクソスケルトンで完全防備をして挑む。匂い発生源がどれほど危険かは分からないが用心をしてし足りない事は無いはず。
「準備おっけーだよ。人命救助は時間との闘いだもんね。ある時間を過ぎたら生存率が極端に低下する」
ルカルカはダリルに答え、表情を引き締めた。
「……急ごう」
ダリルは薬品を入れるための冷凍箱を確認してからルカルカに合図を送った。
「うん」
まだまだ溢れるごみと徘徊するぬいぐるみの相手をして時間を浪費しないためルカルカはバードマンアヴァターラ・ウィングを広げて廊下の天井付近を飛んで進む事にした。
今、優先するべきはオルナの救助ただ一つだ。
二人は、他の人達と連絡を取り合いながら人海戦術を駆使してオルナ捜索を続ける。
「……どこにもいないね。やっぱり実験室かも」
銃型HC弐式で人間の熱反応の有無を確認するなりルカルカは次の場所へ急ぐ。実験室へ向かう通り道の部屋のどこにも気配は無いし他の捜索隊からの連絡も無い。臭気が原因だけに最終目的地である実験室が文字通り匂う。
二人はさらに急いだ。
「……ここにはいませんね」
朋美達が侵入してすぐに舞花も古城に侵入した。救出隊員は何人かいるが、各々違う道を辿っている。ササカの言葉通り実験室や書斎にいるかもしれないが、それが外れている事も有り得る。そのため捜索範囲拡張のためちりぢりになっているのだ。場所が城というとても広い場所なので。
「……本当に広いですね」
なかなか見つからない。
ポータラカマスクを装着しティーカップパンダや『歴戦の生存術』、『不寝番』を使い匂いによる異常効果を完全に防御。本命は実験室だが、その通り道に書斎も挟む。
「周辺には人はいませんね。どの部屋も同じ風景」
銃型HC弐式の熱感知機能で人の存在を確認していく。ごみのせいかどこもかしこも同じ風景ばかり。何とか羅針盤のおかげで今のところ道に迷う事はないが、掃除組が相当の苦労をする事は明白。
「……書斎にはいませんね」
書斎に辿り着いた舞花は熱反応が無反応である事を確認するなり、実験室に急いだ。
古城入り口。
「……オルナ君を無事救出できれば、快眠香を分けて頂けるんです。行きましょうか。しかし、エンドにばれないようにこっそり依頼を受けたんですがね」
ロアは少しため息をつきながらグラキエスの方に振り向いた。
狂った魔力による不眠症を抱えるグラキエスのために快眠香を分けて貰おうとゴルガイスとこっそり依頼を引き受けたのだが最後まで上手くいかなかった。
「……俺も行く。今日は体調も悪くない」
グラキエスは我が儘だとは思いながらも手伝いをしたくてついて来たのだ。
「体を休めて貰いたかったが」
ゴルガイスもロアと同じ気持ちだった。
「……留守番は嫌だ」
「仕方あるまい」
帰る様子の無いグラキエスにゴルガイスは腹をくくった。なるべく危険を粉砕し、安全を確保しようと。
「気分が悪くなったらすぐに言って下さいね?」
「依頼も大事だがグランキエスの体も大事だ。気を遣わぬようにな」
もう一度、ロアとゴルガイスは念を押した。
「……分かった」
グラキエスは心配する二人に答え、『冥界渡り』とアサシンマスクで対策を取り城に入った。
「……随分、走り回りながら薬を探していたようですね」
「……ここを出て次に向かうとしたら」
ロアとグラキエスは『サイコメトリ』でオルナの情報収集をし、グラキエスの『行動予測』を使い、予測しながら先を進んでいた。
次へ行こうとしたところ、巨大な長細い彫刻品が道を塞いでいた。
「これは何かの芸術作品か」
『パワードマスク』を着用しているゴルガイスが二人に訊ねた。
決して上手とは言えず、無理矢理良い表現をすれば前衛的な物で走り書きをしたメモが貼ってあった。
「……」
グラキエスが『サイコメトリ』で正体を確認する。
「失敗してごみ箱に入れようとしたが入らず、処分を後回しにして忘れたようだ」
見えたのは、苛々頭を掻いたり、ごみ箱に捨てようにも重く大き過ぎて入らずメモを貼って放置するオルナの姿。
「……読めないが、捨てる物とでも書いているんだろう」
グラキエスは出来の悪い暗号にしか見えない文字が並ぶメモを見た。
「それならば、粉砕する」
マキシマムアームを装着しているゴルガイスは彫刻品を軽々と移動させ、『ドラゴンアーツ』で粉々にして片付けがし易い状態にした。
こうやって三人は情報を辿り、グラキエスが持つ羅針盤を使い迷う事なくごみ山を進み、危険物や障害物があれば、ゴルガイスの力とロアの『ハウスキーパー』を使って脇に寄せたりした。あちらこちらを動き回っているオルナの情報量は膨大でロア一人だったら大変だっただろう。
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