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求ム、告ゲラレシ天命ノ被験者

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3月生まれ:山葉 加夜(やまは・かや)のケース


『全て信じる訳ではないですけど、取り入れられる物があれば持ち歩いたり、気をつけたりするぐらいです』


「今日のラッキーパーソンは、『好きな人』……」
 朝見た占いのことが気になったので、掲示板の検証依頼を引き受けた加夜は、蒼空学園の校長室に向かう。占いが当たるのなら、そこにいる『好きな人』――夫の山葉 涼司(やまは・りょうじ)が、加夜の幸運の鍵になってくれるはずだ。
「あぁ、今日は登校してたのか」
 扉を小さくノックして入室を許可する短い返事を聞いて入ると、校長室の中心を為すような大きな机に向かっている涼司が顔を上げて言った。
「はい。涼司くん、朝からずっとお仕事だったんでしょう? そろそろ一息つきませんか?」

 加夜は自分のラッキーのためだけに涼司に会いに行ったわけではなく、好きな人とただ漫然と一緒にいたい、というばかりでもない。ちゃんと、11月生まれの涼司の占いもチェックしている。
 直感を信じて行動して可だが、疲れるまで頑張るのは駄目。疲れる前に休息してほしくて、校長室を訪れたのだった。
「あぁ。これひと段落ついたらな」
 区切りを付けずに途中でやめると再開する時面倒だからな、と顔をしかめながらデスクワークにスパートをかけている間に、加夜はコーヒーを淹れた。
 この室内にある水分はこのくらい。占いで忠告された水難が、自分に降りかかることはなさそうだ。


「涼司くん。今日の夕食、何がいいですか?」
 コーヒーの香りに包まれた休息のひと時。ソファに座って加夜は、向かいに座る涼司を見つめた。
「ん? 夕食……そうだな、何かあっさりした……」
 暑い日が続いているからだろう、そう言いかけた涼司は、しかし「暑いからってあっさりしたものばかりでは力が出なくなりますよ」と窘められる次の言葉を予想したかのように、途中で言葉を切って、
「いや、やっぱりがっつりしたもの、……いや、あ……?」
 即座に反対のものを口にしたはいいが、自分でも何を言いたいのか分からなくなったらしい。一人でぽかんとしてしまった様子に、加夜は思わずくすりと笑う。
「……やっぱり、任せていいか……?」
「分かりました。……?」
「何だ? 何か来たのか?」
 車が急停車してタイヤが軋むような音が外からしてきて、涼司は腰を浮かせたが、窓に近い加夜の方が先に立って、外を覗いた。
「何か業者さんのトラックが停まってますけど、別に何も起こってはよういないですよ」
「そうか。だが、もう来たのか。書類を持ってって話をしなきゃならないんだ。悪いな」
「いいえ。じゃあ私はもう戻りますね。忙しいと思いますけど……きちんと、休息を取ってくださいね?」
「分かってる。ありがとう」
 扉を出ていく間際、二人は一瞬、穏やかな、優しい微笑みを交わす。
 公務に追われ忙しい彼にとっても、少しでもいいことがある日でありますように。願いながら、加夜は扉を閉めた。


『特に何も起こらなかったですね……ラッキーパーソンの効果でしょうか?
 占いが当たっているのかいないのか、難しいところですね……



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●委員Bによるチェック●
 リア充爆発しr…………いやいや、滅多なことは書いちゃだめだ、学園のトップに関わることだ……
 ラッキーパーソンの力って、その人物のステータスまで関係しているのだろうか? 案外、一考の価値はあるかもしれんな……