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求ム、告ゲラレシ天命ノ被験者

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3月生まれ:高峰 結和(たかみね・ゆうわ)のケース


『これは……うーん、何といえばいいのでしょうか……』


 留学中のシャンバラ教導団から、久々にイルミンスールに登校した結和は、テラスでパートナーの魔道書占卜大全 風水から珈琲占いまで(せんぼくたいぜん・ふうすいからこーひーうらないまで)と話していた。掲示板にあった、占いの検証の依頼の貼り紙についてのことだ。
「なんだか…その……うーん……、変わった、依頼がありましたね」
 占い指南の魔道書というパートナー、とりもなおさず目の前にいる彼なのだが、その彼に師事して占い研究をしている身としては、少なからず興味を引かれて依頼に目を通したものの、具体的にはどうしたものだか分からない。
「取り敢えず、後で美術室にでも行ってみましょうか……?」
 自分のラッキーアイテムを思い出して独り言のように呟く結和を前に、占卜大全は呆れ顔だった。
「どんな連中かは知らんが、アホなことを考え付くよな」
「……当たらないですか? テレビの占いは」
「いや、そりゃーまぁ、アレも根拠なく言ってるわけじゃねぇだろう。誰かが占ってるわけだしよ。ある程度大きな運命の流れっつーものは、確かにあるからな」
「流れ……ですか」
「しかしその『流れ』も切れ目がはっきりしたものではなく、そうそう一ヶ月で綺麗に分かれるわけもない。不特定多数に発信するために、無理矢理まとめてるんだよ」
「はぁ、なるほど……」
 二人の間のテーブルの上にはコーヒー、そしてお茶請けの幾つかのお菓子。さながら二人はお茶会をしながらのんびり世間話でもしているかのようだが、間違いなくこれから占い教室が始まるのである。だがその前に、今回の『依頼』の件に関する占卜大全の所感がつらつらと語られている。
「……ついでに言えば、ラッキーアイテムとかは正直胡散臭い。それよか一対一で個別に占った方が、精度もいいに決まってる。
しかし、ま、アホだけど面白い試みだと」
「なるほど……わかりました」
 占いの“先生”の言葉なので、ひたすら素直に傾聴する結和である。
「さて……と。じゃあ、始めるか」
「はいっ」

 占卜大全が教えるのはコーヒー占い。挽いたコーヒー豆を漉さずトルコ式に飲んだ後、カップの底に残った豆の泥を受け皿に落としてその形で吉凶を占う。
 なかなか、その形から徴を示すものを読み取れない結和は、占卜大全の教えを受けながら、熱心に生真面目に、皿の上に散ったコーヒー豆のどろどろを凝視し、首を傾げてうーんと唸る。
 強いコーヒーの香り、時々クッキーやスポンジ菓子。
 大樹の枝が影を作る下のテラスは、夏の昼下がりでもさほど暑くなく、時には心地よい風も入ってくる。
 魔道書の教授する占い教室の時間は、真剣に、でものどかに流れていく。


 そうして占いの勉強を終え、ザンスカールに在住する占卜大全と別れてヒラニプラへと戻る途中。
 それまでよく晴れていた空が一転俄かにかき曇り、むくむくと広がった雲から突然の通り雨。
「え〜〜〜っ、……」
 箒に乗って急いでいたために、急に隠れることもできず、びっしょり濡れてしまった。
(水難の相……)
 水場に自分から近付いてはいないし、美術室にも行った、もちろん何の異変もなかったが。


『やはり「流れ」というものは、避けられるものではないのかも知れないですね……』


**************

●委員Eによるチェック●
 他にも例があるようだが、全く予期していない場所で水を喰らうようなことがあると、「水難」と思わざるを得ないようだな、誰しも……
 ん? 何だ、こんな隅に殴り書きが……

「追伸・あんまりアホなことやってっとお前ら占いで特定すっぞ☆」

 なんだこれは!! 我々に対する挑戦か!! 占い界の闇勢力の圧力か!?
 くそう、我々は断じて屈せん! 屈せんぞぉぉぉぉ
(↑ここでコメントの筆は途切れており、以下別人の筆跡)
 委員E乱心のため部室備品(花瓶)にて同人を強制終了……委員Dにより本件のチェック終了、統計へ回して可也……