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【ぷりかる】蘇る古代呪術研究所

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【ぷりかる】蘇る古代呪術研究所

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「古代呪術……甘美な言葉です」

 式神化したLEDランタンが浮かんで近くを照らす中、東 朱鷺(あずま・とき)は壊れてボロボロになった部屋の中を探索していた。
 今は亡き知識と技術を知ることが出来るかもしれない。
 そう考えて今回の依頼を受けた朱鷺だったが、想定していたよりも資料の劣化が激しい事には落胆を覚えていた。
 
「いや……一部でも解読可能な状態で残っていただけでも奇跡、でしょうか」

 そう言うと、朱鷺は古びた紙束を机の上に投げ出す。
 特に重要な書類は持ち出されてしまったのか、それともそこまでの深淵には辿り着かなかったのか。
 現代でも現存する呪術らしきものに関する資料はあったが、特に目新しいものは未だ見つかっていない。
 だが、しかし……と朱鷺は思う。
 部屋の外では、奏輝 優奈(かなて・ゆうな)が一体の魔操兵を床に叩きつけていた。

「この古代兵器もどういう技術使われとるかわからへんし、調べてみる価値はあるやろ。ウチの研究……錬金術やら召喚魔法やらに使えそうな物があるかもしれへんしな~」

 そう言うと、優奈は壊れた魔操兵の部品の吟味を始める。
 魔操兵。
 人間型の金属ゴーレムの一種で、人間に近い複雑な動作が可能な事が特徴な古代兵器の一種である。
 現代に至るまでに失われた技術の一つであり、この古代呪術研究所がそれなりに重要な場所であった事の証明でもある。
 命令には極めて忠実な為、今回のように守備を命じられた魔操兵を完全な姿で持って帰る事は不可能に近い。
 そこで、優奈はまず壊したのだが……。

「うーん……どれが重要な部分なんか、全然分からへん……」

 頭部は重要な気もするし、胴体部分も何か秘密がありそうな気がする。
 かといって、複雑な動きをする手も大事な気もする。
 どうしたものかと悩んでいると、部屋から出てきた朱鷺が声をかける。

「これは呪術とは違いますが……ある種、式神と似たような点がありますね」
「ふぅん?」
「どれを持ち帰っても同様の研究成果は得られると思いますが……知覚を司る頭部など、いいのではないでしょうか?」

 この探索がイルミンスール教師たるアーシア・レイフェル(あーしあ・れいふぇる)の依頼で行われている上に、イルミンスール魔法学校の生徒である優奈。
 これを考えれば、その研究にイルミンスール魔法学校のバックアップがつくことは間違いないだろう。
 それを考えても、魔力が複雑に働いていたであろう頭部は重要だろうと朱鷺は考えたのだ。

「頭部……兜みたいやなあ。持って帰るにはちと大きいけど、確かに色々分かりそうやな。おおきに」
「いえ、お役に立てたのならば」

 優奈にそう言うと、朱鷺は行われているもう1つの戦闘に目を向ける。
 ここが呪術の研究所であった証拠とも言える、怪物達との戦闘。

「怪物退治をするのはいいんだけどあれは怪物なのか刺客なのか……」

 日向 茜(ひなた・あかね)のスナイパーライフルが、怪物の一体を撃ち貫く。
 かろうじて人に似た姿をした何かは、茜の攻撃で地面に倒れ伏す。
 しかし、茜の倒した怪物の死体を踏み越えて、半分溶けかけたような姿の怪物が現れる。

「こいつは私に任せて!」

 再びスナイパーライフルを構えた茜を制するように、仁科 姫月(にしな・ひめき)はグレートソードを構えて立ち塞がる。

「かかってきなさい、あんた達には負けないわよ」
「俺はサポートに徹する。無理をしない程度に相手をしろ」

 その姫月をサポートするような立ち位置にいるのは、成田 樹彦(なりた・たつひこ)
 更に現れた怪物を牽制するように火術を放つと、姫月と隣り合うように樹彦は立つ。

「……ん。じゃあ、こっちもサポートに回るから」
「分かったわ。茜さん、お願い!」

 迎撃体勢をとった茜のサポート体勢に入りながら、茜は考える。
 あれは本当に怪物なのだろうか?
 古代呪術研究所。
 もしアレが化け物ではなくて、人間の成れの果てであるならば。
 ここでは一体、どれ程邪悪な研究が行われていたというのだろうか?

「……報酬分の仕事はきっちりこなすのは変わらないけど、ね!」
「たぁぁ!」

 茜と樹彦の援護射撃を受けて、姫月のグレートソードが一閃される。
 斬り倒された怪物が不快な音を立てて地面に崩れ落ちていく。