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【ぷりかる】メイド奪還戦

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【ぷりかる】メイド奪還戦

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エピローグ


 大きな暗雲は太陽を包み、やがて雨が降る。
 騒がしかった建物から声が消え去り、雨が全てを掻き消していく。

そんな建物を遠くの崖の上から眺めている女がいた。

 真っ黒なフードを被り、顔こそ見えなかったが雨でくっついた服が胸のふくらみを強調していた。
「……もう少し、人数が欲しかったところですが……ここは手を引いたほうが賢明ですね」
「そうですか、では手を引く前に色々と訊いておきましょうか?」
 後ろから声が聞こえ、振り返るとそこには楊霞がいた。その姿を見て女は笑みを浮かべる。
「素晴らしい。まさかこんな形で再会するとは思っていませんでしたよ──コンロンの至宝、冥土姫様……どうしてここに私がいると?」
 女は優雅に一礼するが、楊霞の表情が軟らかくなることはない。
「書庫に資料がありましてね、定期的にここから様子を見ることが分かったんです」
「そうでしたか……。貴女がコンロンから姿を消してから、我が主は血眼で探していましたよ……どこぞでメイドの真似事をしているからと、わざわざ人攫いまで雇いましたからね」
「……この誘拐事件は僕を捜すためだと?」
「いえいえ、我が主のために働いて欲しかったというのもあります。おかげで計画は最終段階……貴女の身柄を拘束するだけになっていたのですが……探す手間が省けましたね」
 女はフードから覗く口元を上げると、バッと片手を上げてみせる。
 その瞬間、どこから黒い装束を身にまとった男が五人ほど現れた。
「抵抗はなさらない方がよろしいですよ、先程の雑兵とは違い、こちらは洗練された兵士たちですから」
「身のこなしを見ればそのくらい分かります……仕方ありませんね。全てを片づけてから、貴女の主が何を考えているのか訊ねることにしましょう」
 楊霞は目を覆っていたバイザーに手をかけると男たちは一斉に飛びかかる。が、楊霞がバイザーをとる方が早く、男たちは楊霞の目に見入ってしまう。
 真っ赤な目。
 血や、火を思わせるような光彩がそこにはあった。まるで宝石のように輝いて見えるそれは男たちの視線を釘付けにして離さない。
 と、
「ぐあああああああああ!?」
 男の一人が楊霞の目の前で立ち止まり、ようやく自身の身に降りかかった異変に気付く。
 足が石に変わっていたのだ。
 それは比喩などではなく、男の足は徐々に黒い装束から白い石へと変わり、他の男たちも例外なく石に浸食されていく。
「な、なんだこれは!?」
「やめろぉ! た、たすけ……!」
 男たちは口々に悲鳴を上げるが、石の浸食は止まらず、まるで水が布に染み渡るように石化は進み、やがて男たちの口まで石に変わる。
「……!」
 口を塞がれた男たちは目をカッと見開き助けを求めるように涙を流すが、石化は慈悲もなく男たちを石像へと姿を変えてしまった。
「お見事、と言いたいところですが隙ありです」
「なっ!?」
 楊霞は後ろから声が聞こえて背後を見ようとするが、首筋に衝撃を感じその場に倒れ込んでしまう。
「さすがですね、目を合わせた相手に石化の呪いをかける魔眼……その美しさをもって、コンロンの至宝とはよく言ったものです」
 女は楽しそうにクスクス笑っていると、楊霞は反論する暇もなく意識を手放し、女は楊霞を肩で担いだ。
「思いもよらず、最後のピースが揃いました……これで、我が主が目指す『究極の主従』が現実のものに……」
 女は雨に掻き消されないほどの高笑いを上げて、雨の中へと消えていった。

──了──


担当マスターより

▼担当マスター

西里田篤史

▼マスターコメント

 こんにちは、本シナリオを担当させていただいた西里田篤史というものです。
 今回のシナリオに参加してくれた方々にこの場を借りて、厚く御礼申し上げます。

 初めてシナリオが続きました。果たしてこんな引っ張り方でいいのか不安で仕方ないですが、このままラストまで走らないといけない状況なのでゴール目指して頑張りたいと思います。
 
 短い挨拶となりましたが、また皆様とお会いできるのを楽しみにしております。

 それでは、失礼致します。