薔薇の学舎へ

波羅蜜多実業高等学校

校長室

葦原明倫館へ

開催、第一代目パートナーバカ決定大会

リアクション公開中!

開催、第一代目パートナーバカ決定大会
開催、第一代目パートナーバカ決定大会 開催、第一代目パートナーバカ決定大会

リアクション

『さあ、ここまで多種多様なアピールが飛び出してきましたがまだまだ大会は続きます。
 このアピールたちに埋もれないようにすることはできるのでしょうか』
「はぁ、みんなすごいねぇ。でもやっぱり綾乃のほうが可愛いと思うし、自慢したくなっちゃうなぁ」
 観戦席で独り言を零すのは桜月 舞香(さくらづき・まいか)。自分も参加を考えていたが、
 パートナーが恥ずかしがって出なかっため観戦していたのだ。
「あ、次の人出てきた」
『次は永遠を約束しあった二人、芦原 郁乃(あはら・いくの)選手と秋月 桃花(あきづき・とうか)選手の登場です』
「ふっふっふ、その程度で一番を名乗ろうだなんて……甘い甘い、甘すぎる、まるでスクラロースのように甘いわっ!!」
 もはや虫の息のモブキャ、相手選手に対してびしっと決める郁乃。
「やっぱり、どこを切ってもかわいらしく、清楚で、清純さしかでてこない超麗しい桃花に勝てるパートナーがいるとは思えないわ」
「あはは……」
 郁乃の宣言に、嬉しそうであり、恥ずかしそうな顔をする桃花。そんなことにはかまわず続ける郁乃。
「桃花は顔よし、頭よし、性格よし、運動神経もよし、器量よし、向かうところ敵なし。
 究極のお嫁さんにしたい女の子なのよ。ふかふかで、温かい胸に包まれたときの幸福感に、かえられるものなんてないわ!」
「郁乃様。嬉しいのですが、その、体の一部分だけを掻い摘んで言うのは少し恥ずかしく」
「大きさ、形、張り、柔らかさ、感度、その他もろもろ、全てにおいて一級品。
 吸い付いたときなんて、ええそれはもうハチャメチャが押し寄せてきちゃってもおかしくないわ!」
 ここでカメラさんが空気を呼んで桃花(の胸)をドアップで映す。
 それに気づいた桃花が両手を使ってガードするも、それがかえって強調することに。
 「オオー……」「ゲイジュツデ〜ス……」という声が聞こえてくる。
「それだけじゃない。料理の腕だって『準最強(在庫)チョコ活用マイスター』、
 『2022年蒼学秋の限定メニューに選ばれた』の称号を冠するほどの腕前。
 料理の味もさることながら、作る姿を見るだけでも味がべらぼーに美味しくなる特殊機能つきよ!」
 まるで演説者のように身振り手振りで桃花の素晴らしさを熱弁する郁乃。しかしそれに納得いかない者が二人。
 その一人が遂にしびれを切らす。
「……郁乃様はご自身の可愛らしさに無頓着すぎます!!」
『おーっとここで逆アピールだ! 桃花選手が一歩前に出た!』
「茶目っ気と天真爛漫が織り成すハーモニー、プイッとそっぽを向いて頬を膨らませる仕草の愛しいこと……間違いありません、世界一です」
「いや世界一は桃花」
「いいえ、譲れません。……なにせ、首を傾げるような上目遣いなんてされたら心臓はズッキューンと一撃、顔がゆるむことなど止められません。
 止められるわけなどありません。だから、私という特定の相手ができてなおも、人を惹きつけ続けているんです」
 少しだけ目を伏せる桃花。その顔は何かを心配しているようだった。
「だからこそ、いつか私のほかに、と心配になったり気苦労が絶えないんです」
「……私は絶対に、桃花以外の人と恋人にはならない。誓う、絶対、誓うから」
「……本当ですか?」
「絶対」
 上目遣いながらもキリっとした顔つきで桃花にきっぱり告げる郁乃。
「……少しだけ、安心できました。ありがとうございます」
「私のほうこそ、気づいてあげられなくてごめんね。これからは気をつけるから、だからずっと一緒にいてね」
「はい」
『一度は永遠を約束しあった二人が更なる永遠を誓い合う、きっと来世でも巡り逢うのでしょう。そう思いますよね、ライナさん』
『そうね、でもあたしは実は鉄道が大好きな鉄道娘で、生粋のお嬢様で、世界を救っちゃうヒロインの、桜月綾乃が一番のパートナーって思うわね。
 いつもフォローしてくれるし、気配りだって他の子に負けてないと思うのよ』
『……ライナさん?』
『え、えええ!? 今の私じゃないよ!? 別の誰かが勝手に!』
「むぅ、うちの桃花のほうが可愛いもん! だれだー! でてきなさーい!」
「そうです、郁乃様のほうが愛しいです!」
「桃花のほうが!」
「いいえ、郁乃様のほうが!」
 突然のマイクジャック。その犯人は、先ほどの郁乃のアピールに納得がいかなかったもう一人の人物。もうお分かりだろう。
「二人のアピールにあてられて、ついついマイク奪っちゃった。
 まだまだ伝えたいことはあるけど、ちょっとしたミステリーを残して、綾乃が知れ渡ってくれれば、それでいいかな。
 さて、いろいろ聞いてて綾乃に逢いたくなったし、帰ろっと」
 マイクジャックの主犯である舞香だったが、会場を後にする。笑顔と、嬉しそうに小刻みにステップをしながら。
『……まさかのマイクジャックもありましたが、大会は続行します』

―――「フォーエバー! イクノ!」「フォーエバー! モモカ!」
―――「ミステリアス! テツドウムスメ!」「アヤノ? アヤノ!」

「きたぜぇ……! この瞬間を待ってたんだ!」
「アサルト兄様、少し落ち着いて」
『ま、マイクジャックに遭ってもまだまだいくよ! 次はまたまた姉妹? いや兄妹だ!
 黒衣 流水(くろい・なるみ)選手とアサルト・アーレイ(あさると・あーれい)選手の入場!』
 コールと共に真っ先に現れたのはアサルト。背後からは○○コンオーラが垣間見えている、がそれはアサルトに限ったことではない。
 何度目かの兄妹での参戦、一見不利に思える。だがアサルトはそれをいいハンデくらいにしか思っていなかった。
「どのパートナーが可愛いって、そりゃ当然! うちの妹の流水だ! よし、審査員! そのまま流水が優勝で頼む!」
「ご紹介に預かった流水よ。こちらはアサルト兄様。よろしくね」
「まずこんなに礼儀正しい! なっ? いい子だろ? そうなんだよ流水はいい子なんだよ!」
 兄妹で参戦する者たちに共通することがある。それは「○○コン」的なオーラが背後から立ち上っていることだ。
「それにだ、普段はボケっとしてるが実は素晴らしい回避性能を持っている! 今からそれを実演するぞ! はああああああああ!」
 アサルトが流水の回避をアピールするためにわざと攻撃をしようとする。……するのだが。
「……駄目だぁ! こんなかわいいナルミに手をあげるなんて、ありえねぇ! ありえねぇ!」
 きっと大事なことだったので二回言ったのだと思われる。
 それを見ていた対戦相手(モブキャごほんごほん)が業を煮やしたのか、それなら俺たちがと言わんばかりに流水に攻撃をする。
 しかしアサルトがそれを許すはずもなかった。
「……なに、してんだぁ!」
 『チェインスマイト』を駆使して襲ってきた二人を弾き飛ばすアサルト。
『おーっとここで久方ぶりの闘技大会っぽい攻防だ! すっかり忘れられていた存在を思い出させてくれた! このポイントは高い!』
 無事に相手を倒したアサルト。だったのだが、重要なことに気づく。
「……あああ! せっかくのナルミの超素敵無敵の回避のお披露目ができたのに、俺はなんてことぉっ!」
 がっくりとうなだれるアサルト。それを横にして流水がそっと動き出す。
「みなさん、アサルト兄様はいつもやられてばかり。ですが、こういった時、必ず私を守ってくれる。それだけじゃない」
 それまで静かにアサルトを見ていた流水がゆっくりと喋り始める。
「いつも優しく見守っていてくれるアサルト兄様、いつも美味しいご飯を作ってくれるアサルト兄様、美人なアサルト兄様。
 その全てが私にとってかけがえのないアサルト兄様なの」
「い、いやいや俺なんて別に……」
「私を大切にしてくれるアサルト兄様こそ、パートナーバカ一代に相応しいと思うから。どうかよろしくお願いします」
「ぐっ! 最大の敵がよもや流水だったとは……だがこればっかりは譲れねぇ!
 お前ら良くきけぇ! まだまだ流水のいいところ話は始まったばかりだ!」
 流水とアサルトの温度差の激しいことこの上ないが、それが逆にほほえましく見え、会場もほんわかムードに包まれていた。
『やはり兄妹愛は安定のアピール度の高さですね。本当に、こちらまで心が温かくなってしまいます。
 しかし残念ながらアピールタイムは終了ですので、簡易リングに移ってもらいましょう』

―――「ホットブラザー!」「アサルト! アサルト!」
―――「ナチュナルブラザー!」「ナルミ! ナルミ!」

『さて、ここまでやってきましたが既に半数の参加者のアピールが終了しています。
 一度審査員の感想を聞いてみたいと思います。ローグさん、どうでしたか?』
『そうだな。いきなりのツンデレからの開始にヒヤヒヤしたが、それすらも枷としない見事なアピールばかりだった。
 こりゃ審査するのも一苦労だな。だが安心してほしい、俺の独断と偏見は鈍っちゃいない』
『なるほど、それではコアトルさん?』
『ふむ、嫉妬するほどの溺愛ぶり、で判断するならばどれも甲乙つけがたい。だが執念に近い何かをもっている、そんなアピールも捨てがたい』
『なるほど、お二人ともまだまだ優勝候補を決めあぐねているようですね。
 さあ残り半分のアピールにも期待しましょう。それではみなさん? ……あなたの心は温まっていますか?』

―――「バクハツッ!」「バクハツッッ!!」「バクハツッッッ!!!」

『温まっているようです。それでは参りましょう。次の選手の登場です』