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学生たちの休日10

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学生たちの休日10
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    ★    ★    ★
 
「修練場の使用許可か。真面目だな。いいだろう、許可しよう。ただし、対戦相手はいないので、訓練用の機晶ロボットになるが、そのへんは了承しろ」
 ローグ・キャスト(ろーぐ・きゃすと)に訓練の申請を受けて、ジェイス・銀霞が許可を出しました。年末年始なので他に訓練を希望する物も少ないので、訓練用の機晶ロボットをレンタルします。
「まあ、時期が時期だし、しょうがないか」
 修練場に入ったローグ・キャストが言いました。広い修練場には、槍を持った機晶ロボットがすでに待機しています。
「来い、コアトル・スネークアヴァターラ(こあとる・すねーくあう゛ぁたーら)
「了解した」
 ローグ・キャストに呼ばれて、蛇型ギフトのコアトル・スネークアヴァターラが地面を素早い動きで蛇行しながら近づいてきました。
 その勢いのまま高くジャンプすると、ボディをピンとのばして大型のランスに変化します。
 ズンと、コアトル・スネークアヴァターラが、地面に突き立ちました。
 それを抜き取ると、ローグ・キャストが空を切って身構えます。
『戦闘訓練開始します』
 ローグ・キャストが身構えたのを確認すると、機晶ロボットが動き始めました。
 びゅんと長槍を撓らせて、ローグ・キャストを叩き伏せようとします。コアトル・スネークアヴァターラでそれを払いのけつつ、ローグ・キャストが横に移動しました。
 穂先を払いのけられた機晶ロボットが、身体を回転させてローグ・キャストの後を追います。振り回された槍の穂先が、弧を描いてローグ・キャストの背後から迫りました。
 野生の勘でそれを察知したローグ・キャストが、大きくジャンプしてそれを躱します。
 敵の槍が戻ってくる前に、ローグ・キャストが敵との間合いを一気に詰めようとしました。機晶ロボットが、槍を引いて、突きを入れようとします。クルリとコアトル・スネークアヴァターラのランスの先を回すと、ローグ・キャストが敵の槍を絡めとるようにして切っ先を逸らします。そのまま、敵のボディに強烈なチャージをします。
 吹っ飛んだ機晶ロボットが、ボディに大穴を開けて停止しました。
 同じ槍でも、形状によって戦い方は大きく変わります。
「よし、次だ!」
 新しい機晶ロボットが登場し、第二戦が始まります。
 今度は突き主体で責めてくる機晶ロボットに、ローグ・キャストはコアトル・スネークアヴァターラの穂先でそれを跳ね上げると、花のように開いた大きな護拳部分でそれをはさみ、強く捻りあげて敵の槍を叩き折りました。そのまま敵の脇にコアトル・スネークアヴァターラを突き込むと、身体を捻って大きくギフトを振り、敵を撥ね飛ばして行動不能にします。
「いい感じだ。大丈夫か、コアトル」
「問題ない。絶好調だ」
「よし、次行くぞ」
 ローグ・キャストは、次の機晶ロボットを要請しました。
「今頃頑張っているかなあ」
 ローグ・キャストたちが戦っている間に大掃除を済ませたフルーネ・キャスト(ふるーね・きゃすと)が、食事を作って修練場へとやってきました。
 きっと、訓練でお腹が空くことでしょう。簡単にとれて腹持ちのいいように、お餅主体でお弁当を作ってきています。家庭餅つき器でのつきたてですから、まだ柔らかです。あんころ餅に、からみ餅とバリエーションも揃えています。
「あ、でも、コアトルって、お餅食べられるのかなあ」
 それは考えてなかったと、フルーネ・キャストが一瞬立ち止まって考えました。まあ、食べさせてみれば分かるでしょう。その結果もちょっと楽しみにしながら、フルーネ・キャストは修練場へと入っていきました。
 
    ★    ★    ★
 
「ふう、さすがにバロウズは掃除しがいがある……って、無理だろ、応龍全部一人で掃除するのは!」
 モップを持ったまま、巨大なバロウズを見あげて、阿部 勇(あべ・いさむ)がちょっと絶句しました。
「まあ、計画変更で、せめてコックピット回りだけでも綺麗にするかな。他の内部回路とか武器とかは普段のメンテナンスでバッチリ綺麗にしてるしなあ」
 そう言うと、阿部勇はバロウズのコックピットにあがって、床やコンソール回りを綺麗にしていきました。パイロットシートも、ピッカピッカに磨きあげます。
「うん、まるで新品だ。さてと、締めは注連縄と言うことで……」
 そう言うと、阿部勇は機晶妖精を使って、バロウズの機種に正月飾りを取りつけました。まあ、お正月の自動車につけるような感じです。
「よし、完璧っと。さて、甚五郎たちの方ももう終わったかな?」
 そう思って、阿部勇が、夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)の家の方を見やりました。が、何やら薄く煙がたちのぼっています。
「なんだ、あれは? 火事か?」
 あわてて、阿部勇は家の方へとむかいました。
 
    ★    ★    ★
 
「わらわが、特殊な才能を持っていることは、わらわ自身よおっく分かった。だからといって、この扱いは酷かろうが」
 なぜか、布団に簀巻きにされて転がされている草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)が、彼女をスルーして黙々と大掃除を続けている夜刀神甚五郎にむかって言いました。
「分かっているなら、大人しくしていろ。だいたい、どこの世界に、箒がけでボヤを起こす者がいるんだ」
「ちょっと双龍箒【炎烈翼】で高速の掃き掃除をしただけではないか」
「それで、三度も火を出せば充分だ。少しは限度というものを知るべきだ」
「ええい、どうでもいいから自由にするのだー」
 ジタバタともがく草薙羽純を、夜刀神甚五郎はスルーしました。
「しかし、こんなに焦げるとなんだなあ。ちょうどいい機会だから、ルルゥの部屋を独立させるかあ」
「ええ、ほんと? ルルゥのお部屋できるんですか? やたっ!」
 夜刀神甚五郎の言葉に、ルルゥ・メルクリウス(るるぅ・めるくりうす)が喜びました。今まで、ずっと草薙羽純と一緒の部屋だったからです。
「元の部屋がこの有様じゃなあ。コンテナハウスがもう一つ届くから、それを今の家にくっつけてルルゥ用にする予定だ」
「わあい、楽しみにしてるんだもん!」
「わ、わらわの部屋は……」
 芋虫のように簀巻き状態で這いずりながら草薙羽純が言いました。
「そのままかな……」
「せめて焦げたところは交換してくれ……」
「考えてはおこう。さて、ひとまずはだいたい片づいたから、後は正月用に餅つきでもするか」
「わあい」
 夜刀神甚五郎が臼を用意していると、何やら阿部勇があわてて戻ってきたので、一緒に手伝ってもらいます。
「ほどいてくれー」
 ゴロゴロと転げる草薙羽純をスルーして、夜刀神甚五郎たちはぺったんぺったんと餅をついていきました。