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学生たちの休日10

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ツァンダのクリスマス

 
 
「いいか、我々の使命は、困窮している雑貨屋『いさり火』の年越しのための必要機材、必要食材を、充分な量補充することにある。くれぐれも、勝手な行動はとらないように。いいな! では、買い出しに出発する。着いてこ……こらあ、言ってるそばから列を離れるんじゃない! こっちにこーい、馬鹿者があ!」
 出発するそばからちょろちょろと勝手に走りだすエクリィール・スフリント(えくりぃーる・すふりんと)を捕まえて、藍華 信(あいか・しん)がすかさずデコピンをしました。
「いったあ〜い」
 エクリィール・スフリントが、でこっぱちの額を押さえて痛がります。
「くっくっくっ……」
 思わず、ソイル・アクラマティック(そいる・あくらまてぃっく)が忍び笑いを漏らしました。
「じゃ、行ってくるぜ」
「いってらっしゃ〜い」
 でっかい兎をかかえたハイコド・ジーバルス(はいこど・じーばるす)が、雑貨屋『いさり火』に残って、兎の前足を持ったまま一緒に手を振って藍華信たちを見送りました
「さて、効率よく買い出しを進め……こらあ、そこのアホ宇宙人、勝手に列を離れるんじゃない」
 ほとんど、幼稚園の引率の先生のように怒鳴る藍華信です。
 ソイル・アクラマティックは、ペットショップのショウウインドウにいる兎をじっと見つめています。
「ああ、どうした、寒いのか?」
 暖をとるように一箇所に固まった子ウサギたちを見て、ソイル・アクラマティックがつぶやきました。
「お前たちにも優しい飼い主が見つかるといいな……」
「はいはい、そのお前の飼い主のために買い出しを続けるぞ」
 藍華信が、ソイル・アクラマティックの襟首を掴んでそのまま引きずって行きました。
「プレゼントいかがですかあ。彼女に、可愛いアクセサリーいかがですかあ」
 ツァンダ商店街の露天でバイトをしている大谷文美が、大声で呼び込みをしていました。
「ああ、クリスマスっていいのう。皆、ああいう物を、買ってもらえるんじゃろうなあ」
 今度は、エクリィール・スフリントが、大谷文美が売っているアクセサリーに捕まりました。
「もう、そこのでこ娘、そういうのは後々。そう、やるべきことをやるぞ!」
 そう言うと、藍華信は、ソイル・アクラマティックを引きずって行きました。
「ええっと、最初に買う物は……」
 藍華信がメモを見ます。
 兎の餌……。いさり火でも売っています。巣作り用の新聞紙。いさり火にもあります。人参の玩具。いさり火でも売ってます。はたして、買い出しに来る必要はあったのでしょうか。
 クリスマスケーキ。おっ、これはちゃんとした買い物になりそうです。肉、野菜、香辛料……。普段の買い物とあまり変わりません。
 一通り買い集めて、まあ、なんとか作戦終了です。
 後は、プレゼント……。ああ、これは買わないといけませんね。
「バイトも休みになったし、こういうイベントというのもたまにはいいものだな」
 ソイル・アクラマティックが、やっとのんびりできるという感じで周囲を見回しました。
「そうだな。たまには……」
 そう言うと、先ほどの露天で、藍華信がエクリィール・スフリントにアクセサリーを買ってあげました。
「さて、後は……」
 プレゼントを渡す相手のリストからソイル・アクラマティックの名前を確認して、藍華信は次のプレゼントを買いにむかいました。