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死の予言者

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死の予言者

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 3 

「何よもー、あの占い師!」
 人々でごった返す市の中をラブ・リトル(らぶ・りとる)がぷんぷん怒りながら飛んでいた。
「『お前は混乱の中で苦しみぬいて死ぬ』とか言って……失礼な占いするなっつーの!」
 どうやら、ラブも占い師に寿命の宣告をされたようだ。
「気にしなくてもいいだろう。占いなどただの遊びだ」
 コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)が言う。
 コア達は久しぶりに葦原の町に竜胆達を訪ねて来たのだが、街角でラブが占い師に不吉な占いをされてしまったのだ。ラブはあまり気にしていないようだが……。
「ちゃんと分かってるって。だいたい、これまでだって死ぬような事件には何度も巻き込まれてんのに、今更……」
 その時、往来の向こうに竜胆の姿が見えた。
「あ、竜胆やっほー♪ 元気してたー♪」
 ラブが手を振りながら竜胆の元に飛んで行く。
 竜胆は驚いたようにふりかえる。
「はろはろーん♪ 蒼空学園のNo1アイドル(自称)ラブちゃんよー♪」
 ラブは竜胆の周りを飛び回ると、コアの肩にちょこんと腰をおろした。
「ラブさん……それにコアさんも!」
「む、リンドウか、久しぶりだ。今、君を尋ねようと……」
「ええ。本当にお久しぶりです。ゆっくり話したいのですが……」
「どうした? 事件か?」
「ええ。実は……」
 竜胆はコア達に死の予言者の一件と、それについてコントラクター達とともに調査をしている事を話した。
「……なんと。では、先ほどラブを占ったのがその件の占い師であったのだろうか……」
「え? お二人も占い師に出会われたのですか?」
「ああ。いきなり近づいてきて、ラブに寿命の宣告だけして去っていった」
「どんな風貌でしたか?」
 竜胆とともにいた丸山しほりがたずねた。彼女もこの調査に加わっていたのだ。
「ボロ布を纏った、猫背の気味の悪い老人だった」
「間違いありません。死の予言者です」
「……そ、そんな。じゃあ、あたしが聞いた占いって……!」
 ラブが叫ぶ。
「自作自演じゃん」
「そ……そういう事になりますね(苦笑」
 と、竜胆。
「なによそれー! そんな勝手な理由で殺されてたまるかってーのよ! あったまきた!」
「微力ながら私もリンドウに力添えをさせていただこう」
「本当ですか?」
「うん。こうなってしまっては他人ごとでは無い」
「ありがとうございます。1人でも多くの方に助けていただきたかったのです」
「なにしろ、占われたと言う事は、賊達がラブを襲いに来る可能性もあるという事になるからな。ならば、リンドウ達と協力して賊を探しつつ、こちらに賊が現れたのなら捕らえて敵の正体を暴く……という策で行こうと思う」
「はい」
 竜胆がうなずく。すると、ラブが二人の周りを飛び回りながら言った。
「ちょっとハーティオン、竜胆! しっかりあたしを守りなさいよね! 犯人とっ捕まえて、あたしの【咆哮】耳元で炸裂させてやるんだからー!」
「それで、予言の日はいつなんですか?」
「それが、なんと今日だっていうのよ。ふざけないでって感じでしょ?」
「今日?」
 その言葉に竜胆は驚いた。
「そんな、急な……」
「大丈夫よ! 名付けて『忍の囁く声! 死の占いを打ち破れ! の巻』ラブが占われて見ようと思います。ビバ、おとりw!」
 ラブはそういうとガッツポーズをとる。
「でも、囮になるなら、単独行動した方が敵さんも近寄りやすいはずね。そんなわけで、あたし、一人で先に行くから。目的地は、葦原神社よ!」
 そういうと、ラブはフワフワと先に飛んで行った。
「それでは、私達は後ろから見守りましょうか」
 竜胆とコアは顔を見合わせ、ラブから距離をとって歩き始める。

 こうして一行はあてどもなく葦原の町を歩き続けた。しかし、一向に敵が現れる気配がない。
「あたし、もう、疲れちゃった」
 とうとうラブが音をあげてふりかえった。
 しかし、後ろには誰の姿もない。
「? ちょっと、ハーティオン! 竜胆! どこにいるの?」
 ラブは叫んだ。しかし返事はない。
「まったく、しっかりあたしを守れって言ったのに」
 ぷんぷん怒りながらラブが腕組みしたその時……、突然、ラブの視界が暗くなった。そして、どこからか異様な音が聞こえて来る。
「な……なんなの? これ?」
 ラブはだんだん頭が混乱してきた。
「やめて……やめてよ」
 ラブは耳を抑えながら叫ぶ。しかし耳を塞いでも、その異様な音は聞こえてきた。
「やめて、やめてったらーーー!」

「ラブさん!」
 竜胆が叫んだ。
 竜胆とコアは途中で不思議な霧に阻まれてラブの姿を見失ってしまっていたのだが、幸い行く先が分かっていたのでそのまま追いかけてきたのだ。
 そして、今、彼らの目に映ったのは、ボロ布を纏った老人と、いましもラブに襲いかかろうとしている忍び達の姿だった。
「いかん!」
 コアが勇心剣を構えて忍者達に突進して行く。
 そして、忍者達の中に割って入ると、握砕術『白虎』で敵の足や腕を砕いて戦闘力を奪っていく。しかし命は奪おうとしなかった。捕らえる事を目的としていたからだ。そして、忍び達を全て倒してしまうと、占い師をみた。占い師が三日月のような口を開けて笑う。
「我が名は蒼空戦士ハーティオン! 正々堂々、勝負!」
 コアは叫ぶと、占い師に斬り掛かって行った。
 ザシュ!
 見事に、袈裟がけに切り落とした……はずだった。
 しかし、確かに手応えはあったはずなのに。占い師はコアの目の前で陽炎のように消えてしまっていた。
「消えた?」
 コアは驚いて、辺りを見回した。
 しかし、占い師の姿はどこにも見えない。
「……」
 いぶかしく思いながらも、コアはラブの元に戻る。
 ラブは既に正気を取り戻して「なんなのよ? 今の?」と騒いでいた。
 コアは足元に倒れている忍びの胸ぐらをつかんで事情を聞こうとした。
 しかし、忍び達は既にこと切れていた。唯一息をしている者をコアは問いつめる。
「今のはなんだ? どうして占い師は消えたのだ?」
 しかし、
「オズノ様……どうぞ目的を……」
 そこまで言って、忍びはこと切れてしまった。
「オズノ……」
 竜胆がつぶやいた。
「聞いた事があります。読心術と幻術を得意とする、甲賀でも5本の指に入るほどの術者だと……」