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【第三話】始動! 迅竜

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【第三話】始動! 迅竜

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 同日 シャンバラ教導団附属病院
 
「スケジュール、了解したわ」
「ならばあたしはそれまで調査にでもあたっておこうかのう」
 沙 鈴(しゃ・りん)はパートナーである綺羅 瑠璃(きら・るー)秦 良玉(しん・りょうぎょく)に交代要員を頼み、イリーナの病室へと入っていく。
「お待たせしました。ちょっとパートナーと話があって」
 イリーナのベッドや調度品を直しながら、鈴は穏やかな口調で語りかけていく。
「最初のうちは看護婦&兼用係と思ってくれれば結構です。それと一応は護衛兼任です。女性の方が不都合が無いでしょうから。緊張したままでは傷の治りも遅くなりますよ」
 イリーナを護衛する意味も込めて、鈴は病院で彼女に付き添っていた。
「ありがとう」
 柔らかな笑顔をイリーナが浮かべたことで、自分と打ち解けてくれたことを感じた鈴は、思い切って提案する。
「イリーナさん。わたくしたちはお互いに、自分達がおかれている状況の勉強が必要だと思います」
 家族の事や自分の起こした事件がフラッシュバックする可能性もありえる為、急く事で体調に影響しないように注意しながら鈴は語りかけていく。
「我々は九校連の真実を知らないかもしれない。でも貴女も所属している鏖殺寺院の派閥――ブラッディ・ディバインなりエッシェンバッハ派のの事を知らないかもしれない」
 優しく語りかけながら、鈴は持ちかけた。
「一緒に考えて見ます?」
 そして、イリーナはしばし考えた後、ゆっくりと首を縦に振った。
 その時、タイミング良くノックの音が鳴る。
「どうぞ」
 イリーナが答えるとドアが開き、世 羅儀(せい・らぎ)が入って来る。
「女性はやはり女性同士がいいかな?」
 彼は毎日少しでも時間があればイリーナの病室に顔を出していた。
「お気遣いありがとう」
 イリーナの表情は総じて柔らかくなってきているが、それでも羅儀に向ける表情が一番柔らかい。
 羅儀もイリーナを疲れさせないように気を遣いつつも、意を決して問いかける。
「辛い事を聞くかもしれないけど、これだけ。ご主人と子供さんを亡くしたあなたに誰かが近づいて来たのですか?それともあなたが誰かに相談を?」
「近付いてきたわ」
 その返答から何かを察した羅儀は上着のポケットから来里人の写真を取り出し、それをベッドサイドのテーブルに置く。
「彼ですね?」
 その問いかけにイリーナは静かに頷いた。