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リアクション
第八章 シャンバラ宮殿前公園――冬の庭――
観光ガイド一行は街を一回りしてシャンバラ宮殿の公園にやってきた。一雫 悲哀(ひとしずく・ひあい)がガイドしている。
「あちらに見えます巨大な建物がシャンバラ宮殿です。
シャンバラ宮殿には起動エレベーター天沼矛(あめのぬぼこ)があり、海京に通じています。
天沼矛を備えたシャンバラ宮殿は、地上三百階の超高層建築物であり、その巨大な塔は大都会空京の象徴ともなっています」
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酒杜 陽一(さかもり・よういち)はシャンバラ宮殿の公園を掃除しにやってきた。
”ペンギンアヴァターラヘルム”のペンタが陽一につき従っている。
”特戦隊”の3組、計15人も陽一と一緒に公園掃除にやってきた。
『今年も大変な年だったが、来年も新しい気持ちで迎えられるよう宮殿を綺麗にしよう。
それに、アイシャ様がいつ外に出てきても大丈夫なように』
陽一はそう思っている。
陽一は”漆黒の翼”を使い、長く大きく伸ばした翼を、羽箒の様にして広範囲の落ち葉を掃き集めていく。
上空から”ホークアイ”で公園の掃除の行き届いていない所を確かめ、”特戦隊”に指示している。
ペンタが陽一の集めた落ち葉をきれいな山状にかき集めていく。
”特戦隊”も集めてきた落ち葉をペンタの作った山に積み上げていく。
騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は”空京知識”でシャンバラ宮殿公園の死角を把握し、散らかっていそうなところを特定して掃除している。
掃除力は”ハウスキーパー”と”一流奉仕人認定証”で底上げしてきた。
詩穂はてきぱきと公園内の掃除を仕上げていった。
「ええと、この服装の違いは何でしょう?」クナイ・アヤシ(くない・あやし)はジャージ姿の清泉 北都(いずみ・ほくと)に問いかける。
「別にジャージでも構わないのですが。北都とお揃いになりますし……」
「ダメなんだねぇ。美形にジャージは着させられないし。クナイは普通の服で、汚れないようにエプロン付けて作業してくれればいいからね」
「美形はジャージ、ダメって理屈が分かりません……それなら北都も」
「僕? 僕は平凡な容姿だから問題ないよー」
北都が頑なに拘るので、クナイは白シャツにデニムパンツの上にエプロン着用で作業する事になった。
北都とクナイはまず、公園内のゴミを拾って歩いている。
ビニール袋を片手に、軍手を嵌めて、広い敷地内をゴミを拾いながら歩く。
「市民が利用する場所だからこそ綺麗にしたいねぇ。大多数の人は綺麗に利用してくれるけど、一部の人が汚したりすると悲しくなるよねぇ」
植木の下に置き去りにされた飲み物と弁当の空容器を拾いながら北都が言う。
ゴミ拾いをして公園を歩きながら北都は出会った人に笑顔で挨拶をしている。
出会った人と会話になると、この公園内で困ったことや改善してほしい事がないかを尋ねている。
子供連れの家族と会話していると、壊れかけの柵があり、子供がもたれたりして怪我をしないか少し心配なのだと聞いた。
「北都、重い物を運ぶ際は私がやりますよ。こう見えて結構力はありますから」
そう言ったクナイが根元が朽ちかけている木製の柵を引き抜く。
”ホークアイ”で酒杜 陽一(さかもり・よういち)が二人の作業を見つけた。陽一が朽ちて使えない柵と二人が集めたゴミを分別して捨てに行く。
柵の修繕を終えた二人は花壇に向かった。クナイが芝生を刈り、北都が花壇の手入れをしている。
花壇の草をひいていた北都が突然動きを止める。それに気づいたクナイが北都のもとにやってきて何かを摘まんで北都の遠くに離す。
北都は虫が大の苦手なのだ。それを知っているクナイは北都の動きが止まるたびにすぐに虫を摘まんで他のところへ放していた。
清泉 北都(いずみ・ほくと)は花壇に冬の季節にも強く、雪にも映えるような植物の苗を植えている。
スノードロップやムスカリ、クリスマスローズなどを彩りを考えて植えている。ムスカリはその芳香も楽しめるだろうと選んだのだ。
北都は花壇に花の種を蒔いている騎沙良 詩穂(きさら・しほ)に出会った。
詩穂は”博識”を使いながら”世界の花事典”を片手に”至れり尽くせり”で用意してきた花の種を蒔いていた。
――四季折々、どの季節にも公園内に花が咲いているように――
話しかけた北都に詩穂が答えて言う。
「うん、アイシャ様が地下の祈りの間から出てきたときに見せてあげたいなって思って種を蒔いているの」
詩穂は最愛の人、アイシャを想いながら種を蒔いていたのだ。
『花は地下の眠りから目覚めて力強く色鮮やかに咲き誇る。
そう、アイシャちゃんはすぐ近くにいるけど自分の足で戻ってこなきゃダメ、。
今までそうだったようにこれからも詩穂もアイシャちゃんも共に成長して共に歩んでいきたい。
それを信じているから待つことができるの』
言葉にはしなかったが詩穂が花の種を蒔く意味は公共の場である公園に花を咲かせることで美しく保つことの他に、
もう一つの意味――このアイシャへの気持ちがあるのだ。
『もう祈りの間に入ってから一年近く経つんだね。
国家神としての感覚じゃなくて、人間として「四季」を五感で感じてほしい。
花が咲き誇る頃に、アイシャちゃんと一緒に暖かい日差し浴びたいな』
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