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【琥珀の眠り姫】密林深く、蔦は知る。聖杯の謎

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【琥珀の眠り姫】密林深く、蔦は知る。聖杯の謎

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 ペガサスに乗ったリネンが、首領の前に立つ。
「話はキロスから聞いたわ。目的、情報の出所、色々気になるけど……名前くらいは名乗ったら?」
「義賊に名乗る名前なんざ、忘れちまったぜ」
 首領は飄々と言ってのけ、剣を振り肩に担ぐようにした。
「お前みたいな義賊のせいで生きる術をなくした奴らを抱えんので手一杯でな」
「それで、弱い者から物品や命を奪って生活するようにもう一回導いてるってわけ?」
 リネンと首領の間に、ぴりと張りつめた空気が流れる。
「さあ、もう一つ手に入れた聖杯を渡してもらおうか」
 振り下ろされた首領の剣と、リネンの剣がぶつかり合う。
「……ただものじゃないわね」
「いけすかねえな……」
 二人が斬り合う傍で、ヘリワードは取り巻きの空賊たちに斬りかかっていた。
「他の空賊団はあたしたちやキロスの名前聞いて諦めたってのに、頑張るじゃない!」
「命より大切なモンがあるんでね」
 空賊の男は、ヘリワードの剣を受け流す。
「ただのお宝狙いじゃないってわけね。もっと何か大きなものが見える……どうしても薬が欲しいって執念がね」
「薬、か」
「あなたと琥珀の眠り姫、どんな関係があるのかしら?」
「俺は一度も、あの方が『不老不死の秘薬が欲しい』なんて言ったのを聞いた覚えはないぜ?」
 空賊がにやりと笑うと同時に、ヘリワードを包むような爆発が起こった。粉塵が舞う。
「ヘイリー!」
 リネンが叫んだ。途端、空賊たちの一斉攻撃がリネンを襲った。
 無数の刃が、リネン目掛けて突き出される――のを防いだのは、フェイミィのバルディッシュだった。
「っと、そこまでだ……ここからはオレが相手だぜ」
 フェイミィは空賊たちに相対すると、すかさずバルディッシュを振り抜いた。
 その一薙ぎに身を捉えられた空賊たちは、身を切られ、そして地に打ち付けられる。
「頃合いか」
 様子を見た首領が呟くと同時に、闘技場内に恭也が呼び寄せた毒虫の群れが流れ込んだ。
 それは鍛錬所内で繁殖し、膨大な数となっていた毒蜘蛛たちを中心とした群れだった。
 そればかりではない。鍛錬所の天井部に開いた穴からは、イルミンスールの森に住む魔獣の群れが押し寄せたのだ。
「ほらよ!」
 恭也は毒虫の群れに向かって聖杯を投げた。
 キロスは視線を恭也に向けたまま、毒虫の波に飛び込むようにして聖杯をキャッチする。
 刹那、闘技場内で爆音と共に粉塵が舞い上がった。小型費空挺が、首領と恭也を乗せて飛び去っていくのを、キロスは見た。
 キロスは高く飛ぶと、避難する調査隊の最後について闘技場から出て行ったのだった。

「キロス、聖杯は受け取れた?」
「ああ。……くそ、一旦でも奪われるなんてな」
 キロスから聖杯を受け取ったルカが、サイコメトリをする。
「っこの聖杯……偽物だわ!!」
「なんだと……!?」
「でも、この聖杯からあの女首領のことが読み取れるみたい」
 そう言って、ルカはサイコメトリをするためにそっと目を閉じた。