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第一章 花を集める者
四季の森、西方。
「……酷い有様だねぇ」
「闇雲に探すより匂いを辿った方がいいかもな」
清泉 北都(いずみ・ほくと)と白銀 アキラ(しろがね・あきら)は花冠用の花を摘むために異常な量の枯れ葉に包まれた大地に立っていた。
「大丈夫かい? 花妖精もいるから混ざり合って難しいかもしれない」
「だな。ヤな話だが、血の匂いを辿ってみるか。怪我をした花妖精が居るみたいだしな。そいつらを助けて保管庫の場所を聞いてみるか」
北都の懸念に白銀が少し嫌な顔をしながら答え、狼に獣化した。
「……そうだねぇ。花を探しながら行こうか。コスモスなら背も高くて見つけやすいし劣悪な環境にも強い」
植物愛に溢れる花回収人から貰った情報と自分が持つ『博識』を元に北都は主に捜索する花を選び出した。
早速、北都が対花妖精装備をしてから二人は『超感覚』で花探しを始めた。
花集め開始後しばらく。
「……花は見つけたけど」
北都は無事にコスモスを入手出来たのだが、凶暴化した花妖精達に襲われた。傷付ける訳にはいかないのでランタンの光で追い払うも逃げる前に妙な粉をばらまいて行った。花妖精の対応している北都はきっちり耳栓をしているので心停止については問題は無かった。
「……睡眠効果があるものだ」
『薬学』を持つ北都は宙に飛ぶ紫色の粉末の正体を暴き『旦那様、朝でございます』で睡眠効果に対処した。
「……危ねぇな」
白銀は『肉体の完成』にて無事だった。
北都達はこのまま花集めを続けた。
さらに時間経過。
「コスモスにダイアンサスに……今見つけたマリーゴールドで三種類、量はそれほど多くないのが心配だねぇ」
北都は手元に集まった花を確認し、ちょっとした問題を口にする。
「……さっきから思ってたんだけどよ」
「……言わなくても分かるよ。ここ掘れワンワンというあれだねぇ」
北都は白銀が言いたい事を先回り。先頭を歩き、匂いを辿り花が見つかれば声を上げる。その姿は『花咲じいさん』に登場する犬にそっくり。
「って犬じゃねぞ、オレは! それより花の量、少ねぇよな。保管庫を探してみるか?」
白銀は思わず語気を強めて主張した後、本題に引き戻した。花保管庫の場所についてグィネヴィア・フェリシカ(ぐぃねう゛ぃあ・ふぇりしか)から聞いているのはそれぞれの方角に一つずつあるという事ぐらいだ。
「その方がいいかもしれないね……近くに誰かいるみたいだ。行ってみようか」
北都は白銀にうなずいた時、人の話し声が耳に入ってきた。
「あぁ」
白銀もうなずき、話し声に向かった。
北都達が向かった先には傷付いた花妖精を手当てする救助者達がいた。
四季の森に入ってすぐ。
「……静かだね。でもどこかに花妖精さんが隠れているかもしれないだよね」
「そうですね。早く助けましょう」
風馬 弾(ふうま・だん)とノエル・ニムラヴス(のえる・にむらゔす)は傷付いた花妖精を助けるために森に入っていた。ちなみに花妖精捜索のためにノエルは白鳩の群れで周囲の様子を探らせている。
「……襲って来る事があると聞いたけど、出来るだけ傷付けたくないよ。止む得ない場合は殺傷能力を抑えたこれで気絶させるしかないのかな」
弾は手にある『光条兵器』を見つつ言った。救うためとはいえ武器を振るような事はしたくない。
「……弾さん、とにかく見つからない様に気を付けましょう」
とノエルはそれだけしか言わなかった。弾の気持ちが分かっているから。
「そう言えばここの花妖精さんに会った事なかったんだ。どんな感じなんだろう。友達になれるような人達かな?」
ふと弾は肝心な事に気付き、ノエルに訊ねた。
「色鮮やかな花が頭にあって陽気な歌を口ずさんだり植物のお世話に飛び回る可愛い存在だそうですよ。きっと友達になれますよ。でも……」
ノエルは笑顔で花妖精について話した後、青い瞳は枯れた風景に注がれた。四季の森の説明の後、こっそり気になってグィネヴィアに聞いておいたのだ。
「まずはこの森を助けてからだね」
弾はランタンを持ち直しながら力強く言った。花妖精と親しく話すのは何もかも終わってからだ。さて本格的に救助に動こうとした時、道の向こうからノエルが探索に放った白鳩が戻って来た。白鳩は弾達に向かって一声鳴いた後、くるりと反転させ飛び始めた。
「弾さん、行ってみましょう。花妖精さんがいるはずです」
ノエルは弾と共に静かに白鳩を追いかけた。襲撃者を見つけた時は隠れたりしてやり過ごしてから進んだ。
細い木の裏の枯れ葉の山がある場所。
「……あそこにいるみたいだね。恐がらせないように」
弾は白鳩がくるりと旋回する枯れ葉の山に静かに近付いた。
「恐がらないで僕達はキミとキミのお友達を助けたに来たんだ」
「怪我はしていませんか?」
弾とノエルは花妖精が隠れているだろう枯れ葉の山に優しく声をかけるが、がさりと枯れ葉が動くだけで不安を抱く花妖精は姿を見せない。
弾達は辛抱強く声をかけ、待つ。無理矢理連れ出す事も出来るが、それはしたくない。
何度目かの呼びかけを終えた時、
「弾さん!!」
ノエルが警告の声を上げた。
凶暴化した花妖精が襲って来たのだ。
「花妖精!?」
弾が急いでランタンを向けようとした時、
「ヴィオ!!」
突然枯れ葉の山から少年花妖精が姿を現し、襲撃者に向かって声を上げた。
「ノエル!!」
弾は追い払い作戦や『光条兵器』での峰打ち作戦を中止し、ノエルの『子守歌』を頼りにした。
「はい」
弾の思惑を察したノエルは瞬時に『子守歌』で襲撃者を大人しくさせ、地面に墜落する前に弾が受け止めた。
「ヴィオ、ヴィオ」
少年花妖精は傷付いて飛べない体を引きずりながら弾の腕の中で眠る襲撃者の元に駆けつけ、寝顔を覗き込んだ。
「……心配はありませんよ。少し眠っているだけです」
ノエルは笑みを浮かべながら襲撃者に寄り添う少年花妖精に言葉をかけた。
「この子はキミのお友達?」
「……うん。ボクの親友だよ。ボクはクオ」
弾の言葉に花妖精の少年はこくりとうなずいた。その様子は親友の事で頭が一杯で自分の怪我さえ忘れているようだった。
「あなたの怪我の手当をさせて貰えませんか」
「……えと、ありがとう」
クオはノエルの言葉でようやく自分が怪我している事を思い出した。ノエルは『リカバリ』でクオの怪我を治療した。
「ノエル、一度森を出ようか」
弾はヴィオの事もあるため一度森を出た方が良いと判断した。
「はい」
ノエルは即賛成。そこで弾がこのまま眠るヴィオを抱える事に。
出発前に弾は
「すぐにヴィオ君も森も元に戻るから少しの間だけ辛抱してね」
ヴィオに視線を向けているクオを励ました。
「……うん。信じるよ」
クオはこくりとうなずき、自分と友達を助けてくれた弾とノエルを信じていた。
弾は小型飛空艇、ノエルは空飛ぶ箒でクオを伴って森の入り口へ急いだ。
二人を送り届けた後、弾達は再び森に戻った。
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