薔薇の学舎へ

波羅蜜多実業高等学校

校長室

葦原明倫館へ

全てはあの子の為に。完結編。

リアクション公開中!

全てはあの子の為に。完結編。

リアクション




エピローグ「宴」


 〜屋敷内部・宴会会場〜


 瘴気が消え去り平和となった町に楽しそうな笑い声が響く。
 契約者達に救われ、新たな領主となったリールによって開かれた宴に契約者達は招待されていた。

「回復の手際のよさ、さすがですね。あなたの回復がなければリールさんは助からなかったでしょう」
「いえ、できることをしただけですから」

 富永の賛辞にくすぐったそうにする北都。平静を装ってはいるが、その声からは少々の喜びが感じ取れた。
 横ではモーベットが真面目な顔でワインを飲んでいる。アルコールの効果なのか、元々少ない口数がさらに減り
 ただもくもくとワインを口に運んでいた。

「ほら、口に食べかすがついておるぞ……んっ」
「あ……ありがとう」

 ファラに食べかすを取ってもらい、その動作に気恥ずかしくなったのか頬を染めるウィル。
 そして、その様子をにまにまと眺めているビキニむす……もといセレン。

「へぇー……仲いいねぇ」
「え、あ、見てたんですか!?」
「見てたも何も……そんな人目も気にせずにいちゃいちゃしてたらねえ?」

 視線をセレアナに投げ、セレンは同意を求めるがセレアナは溜め息をつき首を振る。

「あえて注目してたのはあなたでしょうに」
「まあねー」

 セレンにいじられる二人であったがどうやら悪い気はしていないようだった。

「わはははははは、結構いける口だのう、夜刀神」
「はははははは、いやいやおぬしこそなかなかの飲みっぷりだ」

 酒を飲みながら豪快に笑う夜刀神と夏候惇。どうやら二人で飲み比べをしているようである。
 その様子を眺めつつ料理を食べる草薙とホリイ。

「羽目を外しすぎなければよいがな」
「たぶん大丈夫ですよ、きっと。飲み方わかってるでしょうし」

 ブリジットはのんびりと座り、ジョンとドリルと飛空艇の話をしているようだ。
 時折ジョンの丁寧な毒舌でドリルがへこむが、すぐに立ち直り楽しそうに酒をあおっている。
 遠くからその様子を窓越しに眺める二つの人影。

「まさか倒せてしまうとはのぅ。かくも恐ろしいのはひとの願いという事か」
「そうですね……ですがいいでしょう。いいデータも取れましたし、今回の事も復讐の糧となると考えれば」

 二人はそう言葉を交わすとどこへともなく去って行く。

「どうしたんだ? そんな隅の窓辺で。準主役がこんな所にいてはいけないんじゃないか?」

 唯斗にそう声を掛けられた柊はゆっくり振り向いてさもめんどくさそうに答えた。

「いや、気にすんな。たぶん気のせいだろうよ。しかし……準主役ねぇ……」
「不満なのか?」

 唯斗から差し出されたグラスを柊は受け取って一気に飲み干す。
 彼は空になったグラスを眺めながら、目を閉じて呟いた。

「そうじゃねえよ……ただ、準主役……なんて似合わねぇって思っただけだ」

 そんな契約者達のやり取りを見ながらリールは笑っていた。横に座るシエルが優しく声をかける。

「楽しそうだね、リール」
「うん。戦いの時はあんなにすごい皆さんでも、普段は私達と変わらないんだなあって思ったら、不思議と嬉しくなっちゃって」
「命のやり取りをした後の酒は格別なものだからな……」

 リールとシエルの前にクリムがやってくる。彼は手に大きなグラスを持っており、少々その顔も赤い。
 どうやらかなり飲んでいるようだ。

「クリム、傷はもういいの?」
「契約者達が頑張ってくれたおかげで、傷跡すら残っていない」
「よかった……」

 リールはほっと胸をなでおろす。
 クリムはグラスをテーブルに置き、リールの前にひざまづいた。
 いきなりの行動にシエルは驚いたようであったが、リールは特に表情を変えることは無かった。

「死を運ぶ闇を倒す為とはいえ、当主様に対する数々の非礼……その処罰をお与えください。
 どのような処罰でも受ける覚悟でございます」

 しばらくリールは黙ったままクリムをじっと見ると、ゆっくりと口を開いて答える。

「確かに、貴方の罪は重いものでしょう……それを償いたいのであれば、その命ある限り
 当家に尽くしなさい。それが私があなたに与える処罰です」
「はっ! このクリム、命ある限り全力で尽くすことを誓います」

 静かにうなずくとリールは声の調子を明るく変えて話す。

「さーて、お堅い話しはこれで終わりっ! せっかくの宴なんだもの、楽しもうよ!」


 楽しい宴は……朝日が昇るまで続いていくのであった。

担当マスターより

▼担当マスター

ウケッキ

▼マスターコメント

どうも、ウケッキです。
ここまで読んで頂き、本当にありがとうございます!!

今回は前回からずいぶんと間が空いてしまってほんとすいませんでした。

これからも頑張って書いていきますので、読んで頂けたらとても嬉しいです。

では、次回のお話の宣伝を少々。

次回予定しているのは、町はずれの洋館で少年と少女が遭遇するとある事件のお話。
戦闘あり、怖いところあり、笑い?(あればいいんですが)ありで
練っていますので、楽しみにお待ちくださいね。

では、次回のお話でまた会えることを祈っております。

▼マスター個別コメント