リアクション
夕方になると、セイニィは武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)との待ち合わせ場所に向かった。
牙竜は、多少彩りには欠けるが牙竜が腕によりをかけて作った和食中心のお弁当を用意し、シートを敷いてセイニィを待っていた。
「恋を司るウサギの精霊の夕日の逸話か……。
昼と夜が交じり合う夕方に告白とは、昼と夜を男女で表すなら告白にはふさわしい時間だな」
弁当を食べ終え、夕日が沈んで行くのを眺めている中で、牙竜はそう切り出した。
「俺とセイニィで例えるなら、獅子座の十二星華のセイニィが夜に輝く星で、俺が昼の太陽か? どっちも恒星だな……」
「恒星同士じゃまずいの?」
「いや、それぞれに光り輝ける、というのもロマンチックだな、と思ったんだ」
ふうん、とセイニィは相槌を打って、話の先を促した。
「夕方は丁度一番星と沈む太陽が同時に見られる時間帯でもあるし……案外、ウサギの逸話は昔の天文学なのかもしれないな……」
そう言って、牙竜は夕日を背にして、セイニィに向き合った。
「俺の育ててくれた施設のジジィがよく言ってた……。愛する想いはちゃんと言葉にしなければダメだと……。
行動で示すことも大事だが、言葉に出伝える大切さを忘れてはいけないと」
セイニィの耳に、牙竜の真剣な声が流れ込んで行く。
「告白したから想いが伝わってると思うのは思い上がりだと俺は思うから……改めて、告白する。
誰よりも何よりも、セイニィ、君を愛している。いつまでもどこまでも君だけを愛している」
牙竜の眼差しを受けて、セイニィはすっと視線を空に向けた。
「……なんか、パッフェルだけじゃなくティセラまで落ち着いちゃってるのよね。
べ、別に焦っている訳じゃないけど……、あたしも、そろそろ身を固めた方がいいかなー、とは、思ってる」
牙竜は、セイニィと同じように空へと視線を向けた。オレンジ色の夕日と濃紺の夜空の間で、昼と夜が溶け合うような紫色が広がっている。
昼はやがて夜になり、夜はやがて昼になる。――時間の流れが答えを出す時は、そう遠くないのかもしれない。