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ぶーとれぐ 真実の館

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箱の中のノーマン・ゲイン

戯祭 紳士(ざれまつり・しんし)



ノーマンたち一味が、あらかじめ館を包囲していたスコットランドヤードに引き渡され、馬車でヤードへと護送されていった後、真実の館の大広間では、あらためて打ち上げの大宴会が行われていた。
酒やソフトドリンクの杯を片手に、会場にいるみんなが談笑したり、歌ったり、踊ったり、各々が喜びの時をすごしている。

広間の隅っこ、絨毯にじかに置かれていた旧型のブラウン管TVには、一人でに電源が入り、ヤードの留置場にいる彼の姿をうつしだした。

上半身は裸。
下半身は裸足で、長めの作業着のズボンらしきものをはいた彼は、早くも負傷は全快したらしく、床に両足をのばし、壁にもたれかけ、うつろな視線をさまよわせている。
彼は自分が撮影されているのに気づいたらしい。
いきなり拳を突きだし、画面が骨ばった青白い拳のアップになった。

「人外のものが、私をのぞきみしているのか。
好きものめ。
ほめてつかわすぞ。
着替えをみせてやりたいが、あいにくはいまは一枚しか脱ぐものがないのでな、むさくるしいものをお見せしたい気分でもないし、お楽しみはまた今度にしよう。
私はここでは死ねないというのであれば、脱走して、またこの部屋に戻るのを繰り返せば、マジェでの永遠の生命を手に入れたのと同様だと思わないか。
自由に死を選べぬ生命こそ牢獄だとでもいいたいのか、キレイゴトだな。
まだまだ、飽きがくるまで青春を謳歌させてもらう。
チャオ」

スピーカーからは彼の声が小さく、だが、クリアに流れている。
今度は、彼が足を大きく振って爪先からこちらへ蹴りこもうとしたところで、画面は暗転した。

真っ黒な画面に戻ったTVは、そのうちにまるで、いままで床に埋まっていたかのように、絨毯のしたから、腕や胴、足がでてきて、しまいには頭部がブラウン管TVの、タキシードを着た紳士となって、いつの間にか持っていたステッキを片手に立ち上がった。
画面は漆黒のまま、今度は深みのある中年男性の声が流れだす。

「なんという結末!
終焉・・・エピローグ!
わたくし、ドキドキ感動いたしました!
もう今夜は眠れません!
素晴しき結果に敬意を、それではわたくしはこれで・・・・」

どこからか取りだしたシルクハットをTVの上にのせ、うやうやしくお辞儀をして去ってゆく。