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涙の娘よ、竜哭に眠れ

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涙の娘よ、竜哭に眠れ
涙の娘よ、竜哭に眠れ 涙の娘よ、竜哭に眠れ

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「きゃあっ。た、助けて……」
 桜月 舞香(さくらづき・まいか)が、鏖殺寺院のメンバーに連れていかれていた。
「そんな格好しやがって! へへっ。攫ってくれと言ってるようなもんだぜ」
 構成員のひとりが、下卑た顔で舌なめずりをした。
 舞香がまとっているのは、『危険な水着』である。彼女はそんな際どい格好で、誘拐が多発している地域を、一人で歩きまわっていたのだ。
 伊達や酔狂でそんなことをしたわけではない。自ら囮になり、人身売買のルートを暴くためだ。
 舞香はあくまでも目をうるませ、怯えたふりをした。
「こ、こわいよぉ……」
(ふんっ。大胆に露出して魅惑の肢体を見せ付けられたら、男の考えることなんて一つよね)
「だ、誰かぁ……助けてよぉ……」
(子供達を人身売買なんて許せない! 締め上げて叩き潰してあげるわ!)
 彼女の本心に気づかず、寺院のメンバーたちは鼻の下をだらしなく伸ばしていた。


 拠点についたとたん、彼女の態度は一転する。
「これは上玉を見つけてきたものだねぇ」
 と言って近づく、趣味の悪い宝石をじゃらじゃらとつけた幹部級の男に、黒蟻地獄のハイキック。一閃で臨死させる。
「おいおい! なんだよこの女!?」
「さっきまで怯えてたのはなんだったんだ!?」
 突然の逆襲にざわついた隙を突いて、一騎当千で残りの雑魚どもを蹴散らしていく。
「この危険な水着で、本当に危険な目に遭うのは貴方達のほうよ?」
 股間を蹴り上げられ、うずくまる男たちを、舞香はしたり顔で見下ろしていた。

「そこのお嬢さん! 私が助太刀します!」
 忍さんの情報をもとに、アジトに駆けつけたフレンが参戦する。加えて、ベルクも加勢した。
 すっかり不意をつかれた寺院のアジトは、ろくな抵抗もできないまま、あっという間に壊滅していった。



「……おや。ここは、すっかり制圧されてるみたいだね」
 独自に人身売買ルートを追っていたエースと、彼のパートナー、エオリアが、アジトを見渡して言う。。
 どんな軍隊が押し寄せたのかと思いきや、戦場の中心に立っているのは、とてもセクシーな水着を着た女の子である。
「君。そんな格好をしてたら、風邪をひきますよ」
「さあ、これを着てください」
 ジェントルな彼らは、舞香に上着を貸してあげた。こういう紳士な男性も、たまにはいるものである。


 状況を確認したエオリアは、すぐさま当局に連絡。
 構成員たちの捕獲は公的機関に任せ、彼らは囚われた子供たちの保護に向かった。
「もう大丈夫だよ」
 不安で震えていた子供たちを、エースがひとりひとり抱きしめていく。
 花の香りがするエースの胸に抱かれて、子供たちは安心したように、おとなしくなった。