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リアクション
浜辺。
「やあ、忙しそうだね」
ルーデルはウララが魚竜牙を求める参加者達に許可が出た事を話し終え別れたのを見計らい自然に声をかけた。
ウララは振り向き、
「うん。魚竜の牙を譲って欲しいっていう人がいてその許可が下りた事を伝えた所。ついでに採取が一段落したらバーベキューをする許可も貰ったよ。それで準備をしようかなって」
楽しそうに話した。
「それはいいね。蛤やアサリを採取したところなんだ」
ルーデルは話しかける機会を窺っている間に採取した物を見せた。
「おわぁ、美味しそうだね。これはますますやらないとね!」
ウララは目を爛々とさせ、食べる気満々。
「私で良ければ準備を手伝うよ」
「本当? ありがとう!」
ルーデルは情報収集のために接触を続ける事に。何も知らぬウララは嬉しそうに礼を言った。
ルーデルとウララは海の家からバーベキューセットを借りて準備に取り掛かった。
「ところで君達の団体は昔から人助けのために活動していたのかな?」
ルーデルは準備を手伝いながら何気なしに訊ねた。
「友愛会が出来た時からずっとそうだよ。ただ出来る前、別れていない時は違ったけど」
ウララは手を動かしながらあっさりと答えた。
「違うというと?」
「その、危ない事もしていたんだよ。あたしは怖くてしなかったけど、会長とか他の人はしてたよ。自分が満足するまで調薬を追求していて、それで人を巻き込むような事もしたりとか。怪我をしたりさせたり」
聞き返すルーデルにウララは手を止め、少し切なそうに語り始めた。
「……それはあの会長もかい? そんな事をするような人には見えなかったが」
ルーデルは手を止め探りを入れていると知られないように慎重に訊ねる。
「会長は違うよ。会長は、自分で作り上げた物を人体にどのような影響を及ぼすのか見る実験に使うのはいつも自分の身体だった。失敗薬で人が変わったように暴れたり妄想に苦しんだり自分を痛めつけたりとか、色々。心臓が一瞬止まった時は怖かったよ。それから追求をやめたんだよ。一瞬だけ死んで見方が変わったって言って」
過去を思い出しているのか辛そうに肩を震わせながらウララは話した。
「それを君は間近で見ていたんだね。辛かっただろうに会長を今日まで支えて。思い出させるような事を聞いて悪かったね」
ルーデルは謝り、優しい言葉をかけた。
「……ありがとう。もう大丈夫だよ。会長は笑いながら今までの行いで自分は早死にするかもって冗談を言ってる。本当に冗談ならいいけど」
ウララはにっこりとルーデルに笑いかけ、現在の事を話した。
「心配無いさ。君のように気に掛ける子がいるのだから」
「だったらいいけど。あぁ、準備をしなきゃ」
ルーデルの言葉に励まされ、ウララは手がお留守になっている事に気付き、作業を再開した。
「上手く焼けるかどうか試しに少し焼いてみようか」
「だね」
準備を終えるとアサリや蛤をバターで焼いたりここに来る途中でルーデルが購入したヴルストも焼いて食べ、ルーデルはヴルストと一緒に購入したビールを飲んで楽しだ。
ひとしきり楽しんでからウララと別れ、ルーデルは幸祐達の元に戻った。
そして、
「残念ながら黄金の砂と砂漠の薔薇がほとんどで貝類の収穫はさっぱりだ」
帰還するなりルーデルは貝類がすっかり消えたバケツを幸祐に提出した。
「さっぱりというか違うバケツに入れたんだろ。酒とバターの匂いがするぞ」
幸祐はズイとルーデルに顔を近付け、吐く息から嘘を見抜いた。
「鋭いな、幸祐。しかし、私欲ではなくウララから情報を得るためにした事だ。これに嘘偽りは無い」
ルーデルは嘘がばれても慌てず、言葉を継ぐ。
「……分かった」
幸祐は楽しそうにしているウララの様子を確認し、ルーデルの主張を受け入れた。忘れずにルーデルはきちんと報告をした。その情報は幸祐の情報と一緒に他の皆にも伝えられた。
海についてすぐにヨシノとウララにプチブーケを渡して挨拶をした後、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)はエオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)と共に浜辺に立っていた。
「楽しみだね。陸には友人が多いけど海の中のハーブと語り合う機会はほとんどないからね」
エースは海を見つめ、新たな出会いに期待しまくり。
「……エース、陸と違って海中でお喋りに夢中にならないで下さいよ。危ないですから」
エオリアは作業をする前からすでに溜息。どんな展開が待っているのか予想済みだから。
「呼吸確保はタブレットがあるから心配無いさ」
エースは挨拶をした時に貰った海中でも呼吸可能となるタブレットを見せながら言った。
「お願いして多めに貰いましたけど気を付けて下さいよ」
エオリアは先を見越し、余分にタブレットを貰っていたのだ。何とも気が回る。
「心配無いさ。それより後で何を作るか聞いてみないとね。わざわざ海中に育成する子を採取するんだから特別な物のはずさ」
「そうですね。魚竜の肝の使い道も気になりますからね」
エースとエオリアは今回採取する素材の使い道を知らされていない事に気付くもまずは採取をする事に。
「せっかくだから海のハーブの地図も作ろうか。効用の分からない子も多くいるし」
「分かりました。記録は僕が取るのでエースは情報収集をお願いします」
エースは名案とばかりに閃き、エオリアが記録官となるのだった。
打ち合わせを終え、早速ホエールアヴァターラ・クラフトに乗り、海へ。
海中。
「なかなか素敵な子達ばかりじゃないか」
エースは青い世界に生息する海藻ハーブを発見するなり触りたくてホエールから離れ、『人の心、草の心』でお喋りを始めた。まずは挨拶をして住み心地や他の仲間についてや海の生物達に齧られていないか、怖い魚の存在の有無に魚竜の情報や事細かに聞きまくっていた。
「……全く」
エオリアは薬の効果が切れたら大変なためエースを気に掛け、海中に潜り様子を見守っていた。エオリアの予想通り薬が切れてもエースは話し続け、無理矢理引き離さなければならなかった。
無断で採る事は駄目だと考えるエースがちょっとだけ採らせてねとお願いしてから採取をした。仕事は順調に進み、海のハーブの地図はエオリアによって位置や周囲の水中生物の分布など事細かに記された。
作業を終えて陸に上がり採取した物をヨシノに渡した時、エース達が知りたがっていた事を知る事が出来た。
採取した物を渡した後。
「鎮痛剤作製のためか。治療系とは少し違うけど、使えない事はないね。レシピの詳細も快く教えてくれた事だし他に応用出来るか考えてみようかな。慎重に取り扱う必要はあるけど」
動物病院を開いているエースとしては動物の治療に利用出来る物だと価値を見出していた。
「バーベキューをするそうですが、それだけだとつまらないですからお茶とかお菓子も用意して例の遺跡の事やレシピの事をゆっくり聞きましょう。その頃には騒ぎが収まっていればいいのですが」
「そうだね。多分、大丈夫さ」
エオリアとエースは双子の様子を眺めるも馴染みある事なのでそれほど気に掛ける様子はなかった。
エース達は海で得た魚竜の情報を皆に伝えてからバーベキューの開催場所へ行き、準備を整えた。
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