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リアクション
浜辺。
「ねぇ、羽純くん、勝負しよう」
遠野 歌菜(とおの・かな)は月崎 羽純(つきざき・はすみ)と仲良く素材採取をしていたが、ふと閃いた。
「勝負?」
「どっちが多く素材をげっとできるか」
聞き返す月崎に歌菜はにまっと笑いながら勝負の内容を説明。
「受けて立とう。折角の勝負だし、何か賭けるか?」
月崎は即答した。勝負を断る理由はどこにもない。
「……賭ける物かぁ。だったら負けた方は勝った方に何でも御馳走するっていうのはどう?」
少し小首を傾げた後、歌菜は【避暑の家 蒼水】が目につき、賭けるものを決めた。
「異議無しだ。早速始めよう」
これまた月崎は即答した。容赦をする気などさらさら無い様子。
「うん。それじゃ、よーい、どん!」
歌菜のこの合図で勝負は始まった。
歌菜と別れた後、
「さて俺は何を集めるかな。巨大魚竜でも釣り上げてみるか」
考えた挙げ句、月崎は魚竜釣りをする事に決め、道具を海の家に借りに行った。
「まずは魚竜の餌になりそうなデカい魚を釣ってからだな」
甚五郎はホリイを伴い餌となる魚を釣るための場所探しをしていた。
そこに歌菜と勝負中の月崎がやって来て
「餌か。それならこの辺りがいいだろうな。大きめの魚がいるはずだ」
『博識』で予測した餌用魚の生息地を甚五郎達に教えた。勝負中ではあるが、誰かを手伝ってはいけないという事はないので。
「そうか」
早速、甚五郎は月崎に教えられた場所に釣り糸を垂れた。月崎は甚五郎の隣で釣りを始めた。
「……長丁場になりそうですからワタシは飲み物や食べ物を買って来ますね」
ホリイはぼんやり待つのも時間の無駄なので【避暑の家 蒼水】へと買い出しに行った。
その間に甚五郎と月崎は無事に魚竜用の餌をゲットし、月崎の『トレジャーセンス』で魚竜の居場所を察知し『行動予測』で動きを予測し当たりをつけ魚竜釣りを始めていた。
海の家【避暑の家 蒼水】営業中。
カレーや焼きそばにかき氷にビンラムネなど夏定番の様々なメニューが揃い、多くの客がやって来てレティシア達もリアトリス達も大忙しであった。
厨房。
「ママ、具材の準備が出来たよ」
ユウキは野菜を切り終え、レティシアに声をかけた。
「ありがとうですよ。あちきはカレーと焼きそばを作るのでかき氷をお願いするですよ」
レティシアはユウキが処理した野菜を使って手早くカレーと焼きそばを同時に作り出していく。給仕のために水着なのだがほとんど厨房にいるばかり。
「任せて」
具材の準備を終えたユウキは手早くふわふわのかき氷を作り出し、シロップをかけて手早く完成させる。主に具材の下処理やソース作り担当だが、時々デザートも作る。
「よし、完成。5番テーブルのかき氷出来たよ!」
ユウキは急いで給仕のリアトリスを呼んだ。
「分かった。すぐに運ぶね」
リアトリスは急いでかき氷を運んだ。『超感覚』で白い大きな犬耳と1mある白い犬の尻尾が生えていた。
「いらっしゃいませ!」
リアトリスはかき氷を運び終えるとやって来た客を迎え、席へと案内していく。
そして、注文が決まった客の元に急ぎ、フィールド・ノートを開いて飛び出す筆で手早く注文の品を書き付け、メモを破りレティシアやユウキにメモを渡しす。
それが終われば、
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
出て行く客に挨拶をしながら空になった食器を片付けたりと大忙し。
レジ。
「ありがとうございました」
ミスティが丁寧に会計をしていた。
「……これは大繁盛かも」
忙しさにミスティはぽつりとつぶやいた。
その時、
「ここはお持ち帰りも大丈夫ですか?」
ホリイは甚五郎と月崎のために買い出しにやって来た。
「はい。少々、お待ち頂く事になりますが大丈夫ですよ」
ミスティが丁寧に対応した。
「分かりました」
ホリイはうなずき店内に入り、リアトリスに案内されて座席へ。
「どれもこれもおいしそうな物ばかりですね。とりあえず、飲み物と食べ物はいくつか選んで……持てる量にしないと一人ですから大変ですね」
ホリイはメニューを開き、あちこち浮気をしながら何とか買う物を決め、リアトリスを呼び、注文した。
「ビンラムネが三つ、焼きそば一つ、いちごのアイスクリーム一つ、とうもろこし一つをお願いします。全部お持ち帰りで」
ホリイは自分の分も含み料理を注文する。
「注文の品を繰り返させて頂きますね。ビンラムネが三つ、焼きそば一つ、いちごのアイスクリーム一つ、とうもろこし一つをお持ち帰りでよろしかったでしょうか」
リアトリスはもう一度記したメニューを確認。
「はい。お願いします」
「では、少々お待ち下さい」
ホリイの返事を聞くなりリアトリスはすぐに厨房へ。
待っている間。
「……魚竜釣れるといいんですが」
ホリイはまだ釣れない魚竜の事を考えていた。
その時、
「お待ちしました」
リアトリスがお持ち帰り用の料理を運んで来た。
「ありがとうございます」
ホリイは礼を言って料理を持って勘定を済ませるためにレジへ。
レジ。
「……大変ですが、頑張って下さい」
勘定が終わるなりホリイはミスティに話しかけた。
「えぇ。そちらも採取か何かだよね」
話しかけられたミスティは答えた。
「はい。魚竜釣りをしている最中です。これおいしく頂きますね」
ホリイは自分達の仕事を答えた後、買ったばかりの料理を掲げ見せながら嬉しそうに言った。
「是非、食べてね。外は暑いから気を付けて」
客の嬉しそうな顔にミスティは悪い気はしなかった。
「ありがごとうございました」
礼を言ってからホリイは店を出て甚五郎と月崎の元に急いだ。
この後も何かと忙しく時間は過ぎ、時刻はあっという間に閉店の夜になった。
店は美味しい料理を出すと大繁盛であった。
「冷たいラムネと焼きそばといちごのアイスクリームにとうもろこしを買って来ましたよ。好きな物をどうぞ」
たくさんの飲食物を抱えたホリイが釣り人達の所に戻った。
「あぁ、助かる」
甚五郎はビンラムネと焼きそばを。
「貰おうか」
月崎はビンラムネといちごのアイスクリームを。何せ大の甘党なので。
余ったとうもろこしはホリイがビンラムネと一緒に食べる事に。
甚五郎と月崎は、喉の渇きとお腹を満たしてのんびりと釣り糸を垂れる。
待ちに待ったチャンスは突然、訪れた。
「引いてますよ!!!」
ホリイが激しくしなる甚五郎と月崎の釣竿を指さした。甚五郎と月崎はすぐに釣竿を握り締め、引き上げようとする。海面の騒がしさから相手は一匹と分かるが、どうにも出来ない。
その時、
「素材採取をするべく来ました」
投網を持ったヒルデガルドが現れた。
釣竿は釣り人達が何とかする前に静かになるのだった。餌だけ食べられたのだ。
「投網をそこに投げろ」
『行動予測』で魚竜の動きを予測した月崎がヒルデガルドに指示をした。
「投網を投じます」
ヒルデガルドは瞬時に投網を投げ込んだ。
「……ターゲット捉えました」
ヒルデガルドは手にした投網の感触から魚竜を捕獲した事を確認。
水面から激しい飛沫。網の中で魚竜が激しく暴れているようだ。
「引き上げるぞ」
「ワタシも手伝います」
甚五郎とホリイはヒルデガルドを手伝い投網引き上げにかかった。
「俺は引き上げ易くする」
月崎は『グラビティコントロール』で重力を操り、引き上げ易くする。
ほんの少し頭部が見えた瞬間
「仕留めます」
ヒルデガルドは六連ミサイルポッドで魚竜の頭部を狙い撃ちする。
ミサイルを受け、ほんの少し大人しくなった瞬間、一気に投網を引き上げた。
そして、
「肝を摘出します」
ヒルデガルドは返り血や魚介特有の悪臭なんぞ何のその淡々と魚竜の腹部を切り開き、肝を取り出す。壮絶な様子に皆声をかけ難く静かに見守っていた。
「では渡しに行って来ます」
「あ、はい」
ヒルデガルドは血にまみれた新鮮な肝を手に幸祐に届けに行った。ホリイは戸惑いながら見送った。
しばらくしてヒルデガルドは帰還し、魚竜狩りは続けられた。ホリイは時々貝殻の採取のため席を外したりした。
一方、月崎と勝負中の歌菜は
「結構、集まったかな。でもせっかく海に来てるんだから浜だけじゃなくて潜って採取もしようかな。絶対に勝つためにも」
散々浜辺で採取をしていたが、場所を移す事にした。そのために調薬友愛会から配布された水中でも呼吸可能となるタブレットを口に放り込み、新たな採取場所へと向かった。
海中。
「うわぁ、綺麗」
歌菜は自分の周りをぐるりと泳ぐカラフルな魚の大群に目を輝かせ、目の前に広がる風景になかなか作業を始められずにいた。
しばらくして
「あ、早く採取しないと!」
歌菜は勝負の事を思い出し、『トレジャーセンス』を使って素材捜索を開始した。
そして、
「……確かこの周辺」
素材の場所を絞り、念入りな捜索を始める。
「そなたもかの?」
歌菜と同じく海中を捜索していた草薙が現れた。こちらも『トレジャーセンス』を使用して捜索したため同じ場所に辿り着いたようだ。
「そうだよ。だけどそれらしい物が見当たらなくて探してるところ」
歌菜は肩をすくめながら答えた。
「同じ場所にいるという事は目的の物も同じということじゃな。それならば、岩の陰にあるかもしれぬ」
草薙は周囲を見回し、少し考えてから近くの岩場を示した。
「そうかも。早速探してみよう!」
草薙の言葉を受け、歌菜は岩場の陰を捜索始めた。
捜索してすぐ。
「無いの。そなたはどうじゃ?」
草薙は見つからず、歌菜の案配を訊ねたところ、
「あった! こっちだよ。たくさんあるよ」
元気な声で返って来て、手招きして草薙を呼びつけた。
「ほら」
歌菜が指さした先には岩にへばりつく大量の小さな茸の様な物。
「うむ。早速採取じゃ」
確認した後、草薙は手早く採取した。
この後、二人は別れてそれぞれ仕事に勤しんだ。
しばらくして歌菜は勝敗を競うために浜辺に戻った。
浜辺。
「羽純くん、どう? 私は勝つ自信あるよ」
「当然、こちらも負ける気はしない」
勝負を終えた歌菜と月崎は顔を合わせ、獲物の披露。
「うわぁ、羽純くん魚竜を釣り上げたんだ。すごい!」
「歌菜も結構集めたな」
歌菜と月崎は互いの獲物を見せ合いっこして驚いたり褒めたりしてからどちらが多いか計算した。
その結果。
「……負けたか」
月崎は負けたが、悔しさは少しだけ。なぜなら歌菜が嬉しそうな顔をしていたから。
「羽純くん、約束通り御馳走お願い。海の定番のかき氷と焼きそばが食べたいなぁ」
歌菜はにこっと上目遣いにおねだりを始めた。
「分かった。負けたからには喜んで御馳走させて貰う。とりあえずこれを持って行くか」
そう言うなり月崎は自分と歌菜のバケツを持ち、一緒にヨシノの所へ。
その際、歌菜はヨシノに何を作るのかを訊ね、鎮痛剤の事を知った。
それから【避暑の家 蒼水】に行き、ゆっくりと寛いだ。
海の家【避暑の家 蒼水】。
「ん〜、美味しいね。ここの人が料理上手っていうのもあるだろうけど、海で食べると何か美味しく感じるよね」
歌菜はほくほく顔で焼きそばといちごミルク味のかき氷を交合に頬張っていた。
「……」
ふと歌菜は向かいに座る月崎が頬張る宇治金時味のかき氷をちらり。
「……一口食べるか? これも美味い」
歌菜の視線の意味を知った月崎は自分のかき氷を歌菜の手前に置いた。
「ありがとう、羽純くん。食べてるの見てて美味しそうだなって思ったんだ。私のいちごミルクをどうぞ」
歌菜は自分のかき氷を月崎の前に置いた。この夫婦は以心伝心の仲なので視線だけで言葉は伝わるのだ。
互いのかき氷を美味しく楽しんだ後、
「この後、浜辺で休憩してから海に入って泳ごうよ」
歌菜の提案で食後はゆっくりと過ごした。
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