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第7章 空に花の咲く頃に6



ホテルの来賓用の特別室。 そのベランダもまた特別製だ。
そこから、鋭鋒と蓮華は花火を見ていた。
辺りは暗く、明かりといえば部屋から漏れるわずかな光と花火のそれだけである。


「団長は浴衣をお召しになられないのですか?」
「今はそんな気分ではない」
「では、お茶にいたしましょうか?」
「よい」
「かしこまりました」


途切れる会話。 蓮華はこの状況に心は躍っていた。
雰囲気バッチリ、2人きりという最高の状態であっても、鋭鋒はただ静かに
花火を見つめ続ける。 先日告白をしてからずっと変わりのない態度とまるで同じだ。
しかし、そんな不安な気持ちを見せまいと、蓮華は気丈に振る舞おうとする。


「今日はいかがでしたか? ここすごい施設ですよねー、なんでも揃ってて!
 仕事も少なかったですし、いい休暇に……」
「この施設、どう思う」
「はい? あ、えっと…すごい施設かな、と」
「こうして、多くの人々がこの施設で平和を満喫している」
「そうですね」
「ルドルフ達の仕事がこれならば、我々の使命は何だ?」
「……はっ。 このパラミタに秩序と安寧を」
「そうだ。 こうしている今にも、様々な危機にパラミタは揺れている。
 それが落ちつくまでは、私的感情を考え優先させるような事はあってはならないのだ。 分かるな?」
「…………はっ」
「それが分かっていれば良い」


そう言って部屋の中へと戻っていく鋭鋒。
分かってはいても、蓮華としてはこの返答は悲しいものであった。 中々顔をあげられない。


「先程の話に応えていなかったな。
 此度は確かに良い休暇とはなった。 君のおかげだ、感謝する」





1日中、鋭鋒の身の回りを世話し仕事を手伝った蓮華。 全ては愛しの人のために。


「≪そうよ、落ち込んじゃ駄目よ私! 今日は団長と1日一緒にいれたわけだし
  花火も見れた! おまけに褒めてもらったりして……そう。
  一日も早くパラミタを平和にしてみせるわ。 いつか訪れるその日まで……貴方の側に、いつまでも≫」


鋭鋒がお茶を用意するように命じる。
その呼びかけに答えた彼女は、彼と目が合う。
彼の目に映るのはふわっと微笑む彼女の姿であった。