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夏の雅に薔薇を添えて

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第7章 空に花の咲く頃に9


大きく広い草っ原。
薔薇学にしては珍しい、ただ草の生えているだけの場所。
だが、そんな空間はゆったりと空を見る分には十分快適だった。

空に咲く火の大輪。


それを見つめる環菜と陽太をみて、エリシアは声をかける。


「ノーン、あちらの方がもっとよく見えそうですわ」
「でもおねーちゃん、ここも十分見えるよ?」
「歩きながら見るのもいいものですわよ」


そうしてノーンの手を引きそっと2人から距離をとる。


「花火きれいだね!」
「そうですわねー。 ≪全く……イチャイチャ夫婦には困ったものですわね≫」





               ◇ ◇ ◇





「今までプールで楽しんだり、海辺の小屋でトランプしたり。
 色々しましたけど、今日のはまたいつもと違う想い出になりますね」
「そうね。 陽太のいいところも見れたし」
「えっ? やだな環菜。 俺は結局クマさん取れなかったんですし……」
「今更そんな風に隠しても無駄よ」
「……ばれてました?」
「当然よ。 どれだけ一緒にいると思ってるの?」


環菜は射的でクマの人形の横にあったラムネ菓子の箱を握っていた。
陽太はグィネヴィアが同じ品を狙っていることに気づいてわざと狙いを外したのだ。


「すみません。 今度人形を買っときますよ」
「いらないわよ。 私には……陽太がとってくれたこれがあるもの」


そういうと視線を交える2人。


「昔と違って、今は隣にあなたがいる。 前にあなたが言ってくれたみたいに……
 私はあなたが好きだから。 あなたにずっとそばにいてほしい、あなたをずっと守っていたい」


そっと手を彼の首に回す。


「気づいたら私も、あなたがいないとダメみたいだわ。 ……ううん、あなたがいればそれでいいのかも知れない」
「環菜……」
「もちろん、ナラカエクスプレスの方の手を抜くつもりはないけれど」
「……あはは! そうですね!」


そして2人はゆっくりとキスをする。
長く、熱く、優しく、甘い。


「愛してます、環菜………」