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通り雨が歩く時間

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通り雨が歩く時間

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 リース達が去った後。
「二人共、エリザベートの手伝いをしてくれてるんだって? ありがとうね」
「調子はどうだ?」
「様子見に来たよ」
「今日は大人しく過ごしてるか?」
 ルカルカ、ダリル、美羽、シリウスが双子を発見するなり陽気に挨拶をした。
「……大勢だな」
 ヒスミはまさかの来客に思わず一言。
「差し入れを持って来たから一緒に食べよう。ついでにルカも手伝うよ。ダリルはこれから大図書館に行くんだよね?」
 ルカルカはにこにこと言った。
「……あぁ。そう言えば、大図書館の奥には謎の扉があったな」
 ダリルは謎の扉についてわざと口を滑らした。
「……謎の扉?」
「どんな部屋だよ?」
 ダリルの予想通り謎の扉に食いつく双子。
「さぁな。俺は発見しただけだから詳しくは知らない」
 とダリル。詳しく知るために今しがた餌を撒いたところだ。
「……」
 双子はしばし沈黙。行きたくて仕方が無いのは明白。
「俺は大図書館に行って来る」
 ダリルはさっさと大図書館に向かった。双子が来るのを期待しながら。
 この後、ダリルを除いたメンバーは実験室で過ごす事に。

 実験室。

 ルカルカが持参した甘い差し入れで楽しい一休みが始まった。
「ところで、何しに来たんだよ?」
「オレ達にちょっかい出すために来たのか?」
 双子は早速警戒たっぷりの質問をする。
「ルカはエリザベート達に会いに来たんだ」
「私は借りてた本を返しに」
「オレは勉強だな」
 ルカルカ、美羽、シリウスは順に答えた。
「勉強?」
 ヒスミが予想外のシリウスの答えに反応した。
「人に教える立場で魔法は専門外だから全然分かりませんってわけにはいかーねから。まぁ、デカいことやるにも必要だしな」
 シリウスは軽く笑いながら事情を話した。
「大変だなぁ」
「お疲れさん」
 双子は口々にシリウスを労った。
「そう言えば、何か面白い物は作ってないの? ほら、外見年齢を上げ下げする薬とか、食べ物を10倍にする薬とか、壊れた物を直す薬とか、幽体離脱して宇宙旅行に行ける薬とか」
 ルカルカはスイーツを口に放り込みながら気晴らしにと適当な話をする。
「宇宙って言うとニルヴァーナか。行きたいけどまだなんだよなぁ。行った事あるのか?」
「あるよ。軍で」
 羨ましそうなキスミにルカルカは即答した。
「そう言えば、未来体験薬で見たって言うお菓子は作ってるの?」
 美羽はふと気になった事を訊ねた。
「んー、なかなか」
「魔法だけじゃ足りないかなぁって。ただのチョコならいくらでも作れるんだけどさぁ」
 双子は肩をすくめながら残念そうに言った。
「まぁ、お前ら料理は上手だからな。問題は自制心だけで」
 双子の料理の腕を知るシリウスは軽くツッコミを入れた。
「……自制心って」
「少し面白くしようとしてるだけじゃん」
 双子はぶちぶち文句を垂れる。
 その時、
「……二人共、本当に似てるよね。一卵性双生児だっけ」
 ルカルカが話題を変えた。
「そうだぞ」
「もしかしてどっちがどっちを試してみたいと?」
 双子は一気に食いついた。
「あー、面白そうだね。ルカ当てる自信があるよ。これまで散々振り回されて来たからね」
 ルカルカは真剣な表情で挑戦を宣言。
「だったら、勝負な。目と耳を塞いでろよ」
「あと、外野は黙ってろよ」
 ルカルカに勝負開始を外野に口出し禁止を告げてから勝負が始まった。
「分かった。頑張って当ててね!」
「へいへい」
 美羽とシリウスはスイーツを食べながらのんびりと見守っている。
 そして、立ち位置と腕輪の交換が始まった。

 入れ替え完了後、
「もう目を開けていいぞ。さぁ、どっちがどっちだ!」
 双子はルカルカに勝負を挑む。
 目を開けたルカルカはじっと左右を見比べ、思案する。
 その結果、
「…………右がキスミで左がヒスミ」
 と導いた答えを言った。
「残念、ハズレ」
 ハズレで双子は大喜び。
「……合ってると思ったんだけどなぁ」
 残念そうなルカルカ。
「もう一回チャレンジするか?」
 双子は悪戯っ子な笑みを浮かべ、再戦に誘う。
「もちろん!」
 ルカルカは再戦に挑む。
 そして、幾度もハズレてしまう。
 しかし、五度目の勝負は違った。
「さぁ、どっちだ?」
 楽しそうな双子。
「……右がヒスミで左がキスミ」
 ルカルカは慎重に見比べた後、目を閉じ心の声と相談してからそれぞれの名前を呼び、スイーツを差し出した。
 その結果は
「正解だ。やるじゃん。ただし、次は負けないからな」
 キスミの口から伝えられた。
「五回目で正解だ。上々じゃん。五回チャレンジしても無理な奴いるし」
 ヒスミは負けたにも関わらず嬉しそうであった。
「……なんとなくだけどね。それに友達だし」
 とルカルカ。
 この後、
「ねぇ、これは何の薬なの?」
 美羽は双子が製作したと思われる薬に興味を持ち、訊ねた。
「それは……」
 キスミが薬について説明を始めた。

「ゴーレムも完成したんだな」
 シリウスは部屋の隅で待機しているほどよい身長のゴーレムに気付いた。
「イイ感じだろ?」
 ヒスミは胸を反らし自慢げに言った。
「あぁ。そう言えば、オレも最近、色々出来る事が増えたんだよ」
 シリウスはふと魔法携帯【SIRIUSγ】V2を取り出し、画面を見せた。
「色々って何だよ。面白い事か?」
 俄然興味を持つヒスミ。
「まぁ、そうかな。例えば……」
 シリウスはそう言うなり近くの紙切れで折り紙の動物を作って『アニメイト』で本物にして見せた。
「すげぇ」
 見て触れて歓声を上げる双子。
「可愛い!」
 すっかり楽しむ美羽。
 しかし、動物は一時間程度で元に戻った。
 シリウスが試す次の魔法は
「あと、これはまだ試したことないんだよな。炎の精霊を呼べるらしいんだけど、せっかくだからいっちょここで試してみっか?」
 『ファイアフェスティバル』だった。
「だな」
「どんなのか見てみてぇし」
 双子は乗り気になり、使用するよう促した。

 しかし、使用すると、炎の精霊達がお祭り騒ぎしながら周囲の物を破壊し始めた。
「すげぇ」
 双子は炎の精霊を目で追って楽しそう。部屋が滅茶苦茶になっている事は目に入っていない。
「二人共、危ない!」
 美羽は空き瓶が双子目がけて飛んでいくのを察知し、見事なキックで粉砕して安全を確保した。
「た、助かったぜ」
「ありがとな」
 浮かれていた双子は美羽の行動で身の危険が迫っていた事に気付き、改めて礼を言った。
 精霊達はすぐに姿を消し、残ったのは荒れた実験室。
「まずいな」
 シリウスは、部屋が荒れる事を完全に見落としていた事に気付いたがもう遅かった。
「まぁ、賑やかで楽しかったし、片付けならみんなでしたらすぐだよ」
「そうだよ」
 ルカルカと美羽は気を害した様子は無く、片付けを始めた。
「助かるぜ」
 シリウスも同じく片付けを開始。
 しかし、
「ちまちま片付けするのは面倒だから。これを使うぜ」
「やるぞ」
 魔法薬を持つ双子が余計な事を始めた。
「おいおい、余計な事はするなって」
 シリウスが止める間もなく、双子は魔法薬のふたを開けた。
 途端、部屋はさらなる惨事となってしまった。

「……もう、人に迷惑がかからない限り、悪戯も悪くないと思うけど。もう、本当に仕方ないなぁ」
「やっぱりこの展開か。今回はオレも悪いけど」
「予想はしてたけど。またヒスミが何かやり過ぎて過剰な事になったんでしょ」
 美羽、シリウス、ルカルカはお決まりの展開に苦笑。
「うぐっ」
 ヒスミはルカルカの指摘に二の句が継げず、
「……えと」
 キスミはどう言い訳しようかと考えている。
「これ以上、惨事が深刻になったらいけねぇからオレ達が片付ける」
 シリウスはキスミが弁解を口にする前にこの場を仕切った。
「片付けはするけど、バツとしてシャンバラ山羊のミルクアイスを買って来てね。みんなの分と校長達の分も。もちろん、二人のおごりで」
 美羽はにっこりと双子に罰を下す。
「えーーーー」
「今、雨降ってるんだぞ」
 双子は反論する。何せ外はなおも雨が降っているから。
「反論は無しだよ。ゴーレムに手伝いを頼んでからね」
 とルカルカ。
 双子は言う通りにゴーレムに手伝わせるために起動してから実験室を出た。
 ルカルカは念のためにダリルに連絡を入れた。