校長室
今日はハロウィン2023
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「私、バンシーになったよ。いんぐりっとちゃんは?」 ハロウィンサブレでバンシーに変身した天苗 結奈(あまなえ・ゆいな)は今日のイベントに誘ったイングリット・ネルソン(いんぐりっと・ねるそん)の案配を訊ねた。 「……ハロウィンカラーですがロビンフッドですわね。結奈さん、素敵ですわ」 イングリットはまじまじと変わった自分の姿を確認した後、結奈の変身姿を褒めた。 「いんぐりっとちゃんもとても似合ってるよ。今日はありがとう!」 結奈は改めて自分の誘いを受けてくれたイングリットに礼を言った。 「いえ、こちらこそですわ。とても賑やかで楽しい気分になりますもの」 イングリットは賑やかな人通りに目を向けながら楽しそうに答えた。 「だよね。せっかくのハロウィンだから何かかぼちゃのお菓子を食べたいね」 「そうですわね。近くにカフェがあるはずですからそこで食べましょう」 結奈とイングリットはハロウィンを楽しむためにかぼちゃのお菓子を食べる事に決めてカフェを探そうと歩き出した。 その途中、 「お菓子ちょうだい」 二人の背後から少女の声が降りかかった。 「!!」 同時に振り返った結奈とイングリットの先にいたのは小さな雪ん子だった。 「わぁ、いんぐりっとちゃん、雪ん子ちゃんだよ!」 「そうですわね。ハロウィンに本物に会えるとは思いませんでしたわ」 可愛い出会いに感激する結奈と予想外の出会いに驚くイングリット。 「えと、お菓子……」 人間のお姉ちゃん達の視線に戸惑う雪ん子の声には緊張を含んでいた。 「困りましたわね。まだ配布用のお菓子も貰っていませんから何もありませんわ」 イングリットは雪ん子の要求に困った顔をした。 途端、 「……お菓子無いの?」 雪ん子の表情も曇ってしまう。 「ほら、悲しそうな顔をしないで。お姉ちゃん達と一緒にデートしよう」 結奈はにぱぁと笑顔を咲かせながら雪ん子に話しかける。折角の楽しいお祭りに悲しい顔は見たくないから。 「?」 雪ん子は、結奈の言葉の意味が理解出来ずに小首を傾げる。 「お友達とお出かけすることだよ。今からお姉ちゃん達たくさんお菓子食べるんだよ。だから一緒に食べよう?」 と結奈。 「……少し違う気がしますけど」 結奈の友人と二人でお出掛けする事もデートという認識に少し小首を傾げるイングリット。しかし、せっかくの楽しい空気を台無しにはしたくないためあえて口出しはしなかったり。 「……食べる」 結奈のお誘いに雪ん子は小さく答えた。 「うん。いっぱい食べよう。お姉ちゃんは結奈でこっちのお姉ちゃんがいんぐりっとちゃん」 結奈は少しだけ遅くなった自己紹介をした。 「……結奈お姉ちゃんにイングリットお姉ちゃん……あたし雪香(ゆきか)」 雪ん子は二人のお姉ちゃんの名前を繰り返した後、そろりと名乗った。 「じゃ、雪香ちゃん、行こう」 天真爛漫な結奈はにこっと笑って雪香の手を握って甘いお菓子を食べるべくカフェを目指した。 「うん」 雪香はちろりと結奈と手を繋いだ右手を嬉しそうに見ていた。 三人がお喋りをしながら辿り着いたのはホラーカフェだった。 ホラーなオープンカフェ。 「甘い物が沢山ですわね。何から食べましょうか」 イングリットはテーブルに並んだ沢山のお菓子に目を向けた。結奈の希望でかぼちゃケーキやパフェを中心に色んなお菓子を頼んだのが現在の状況。 「雪香ちゃんはどれ食べたい?」 結奈はすっかり懐かれ自分の膝にちょこんと座る雪香に訊ねた。 「あれ」 雪香が指さしたのは美味しそうなかぼちゃケーキ。 「どうぞ。私はかぼちゃのパフェを食べようかな」 ケーキを取ってあげると共に隣にあるパフェをチョイスする結奈。 「ありがとう、結奈お姉ちゃん」 雪香は嬉しそうにケーキを食べ始めた。 「わたくしは血のように真っ赤な苺ゼリーにしますわ」 イングリットは近くのゼリーをチョイス。 食べ始めてすぐ。 「……いんぐりっとちゃんのゼリーおいしそうだね」 結奈はイングリットのゼリーに興味津々。 「味見してみます?」 イングリットは手を止めて訊ねる。 「うん、一口だけちょうだい!」 そう言うなり結奈は口をあんぐり開けて待機。 「……どうぞ」 まさか口を開けて待機されると思っていなかったのか少し思案するもイングリットはスプーンでひとすくいして結奈の口に放り込んだ。 「うん、おいしい! ありがとう」 結奈は口の中に広がる苺の味に幸せ気分。 そこに 「ケーキもおいしいよ。結奈お姉ちゃん、どうぞ」 結奈達のやり取りを見ていた雪香は仲間に入れて貰おうとフォークに刺したケーキの欠片を結奈に差し出した。 「ありがとう!」 結奈は礼を言ってぱくり。 「おいしい?」 フォークを握り締めながら雪香は感想欲しそうに見上げてくる。 「うん、おいしい! お礼にパフェをどうぞ、あーん」 結奈はそう言うなりお礼とばかりにひとすくいしたパフェを差し出した。 「あーん」 大きく開けた雪香の口に甘いパフェが入って来る。 「……うん、おいしい! あたし、今度これ食べたい!」 雪香は嬉しそうにパフェを楽しむのだった。 「それじゃ、後で注文してあげるね。まだまだ食べてハロウィンを楽しもう♪」 結奈は再びパフェを食べ始めた。 賑やかなハロウィンはまだまだ始まったばかり。